死んだと思ったら異世界に

トワイライト

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「う~ん、来ないなぁ…」

虚無魔法を上空に放ってから15分位経ったがフェルがここに来る気配は無かった。

「虚無魔法じゃ気づかなかった?それとも魔力量が足りなくてフェルが俺の存在に気づけなかったのか?」

頭の中で何故フェルが来ないのかを考える…そしてもう一度魔法を放とうかと考え始めた所で遠くから遠吠えの様な声が聞こえてきた。

「遠吠えが聞こえた…という事はフェルがここに向かっているのか?」

フェルはフェンリルだ、この遠吠えは俺の所に向かっているという合図なのかもしれない点々そう考えたオレはもう一度魔法を放つのを中止した。

そして少し待つとオレの方に近づいてくる足音が聞こえてきた。

「やっとフェルが来たか…ん?おかしいなぁ」

俺は聞こえてくる足音がなにか可笑しい事に気がついた。

「足音が一つじゃない?」

そう、フェルがこっちに向かっているのなら普通足音はフェル一人分の筈だ。

なのに現在聞こえてくる足音は複数…これはどういう事だろうか?

「配下を連れてここに向かっているとかか?それとも…」

そこで俺が考えたのは3つだ。

1つはフェルが俺の存在に気づいて配下を連れて俺に会いに来たパターン。

コレはフェルが俺の魔法に気づいて、会いに向かっていて、俺に配下を紹介しようと思って配下を引き連れてこっちに向かっていると言うものだ。

そして2つ目はフェルが俺の存在に気づいたがなんらかの事情が有って自分から俺に会う事が出来ない状況にあるパターン。

この場合現在ではこっちに向かっている多数の足音はフェルが俺を自分の所に案内する為に遣わした使者という事になる。

フェルが現在手が離せない状況にあって、俺を自分の所に案内しようとフェルが考えたのならあり得るだろう。

そしめ最後の3つ目は…現在こちらに向かってきているこの足音がフェルに関係の無いモンスター、又は獣の物と言うものだ。

俺はフェルに俺の居場所を教える為に魔法を放ったが、極寒地帯に居る生物なら殆どが俺の存在に気づいた筈だ。

だから現在聞こえているこの足音が、フェルに関係の無いモンスター達という可能性が有るという訳だ。

まぁただのモンスターならあの魔法を見て俺を襲おうと考えるとは思えないが…可能性としては無いわけでは無い。

実力差が分からない程、知能が発達していないとか、飢餓状態で実力差が分かって居ながらも襲うしか無いという状況のモンスターが居るとかな。

「まぁ実際にこっちに向かってくるのに会ってみない事にはなにも分からないか…」

実際に俺の所に向かってきている存在がフェルなのか、それともフェルの配下なのか、それともそれ以外の存在なのか…実際に会ってみないと分からないと考えた俺は素直にこちらに向かっている存在が着くまで待つ事にした。

「う~ん、これは3番だったか…」

こっちに向かって来ている存在を待つ事に決めた俺だが、現在俺は数百体の狼に囲まれている。

あの後、数分程待っていたらこっちに向かってきている奴らの姿が見えてきたんだ。

最初は喜んだよ、こっちに来たのが狼の群れだったからな。

フェルはフェンリルだから当然部下もそれに関係する狼型のモンスターだと考えたから2番だと思ったんだが、それは直ぐに違うと分かったのだ。

「こんなに殺気立ってたらフェルが俺に向けた使者だって線は完全に無くなるよな」

こっちに向かってきている狼は殺気立っていてなんとしても俺と言う存在を消さなければいけない、みたいな雰囲気でこっちに向かってきているのだ。

ここに向かっているのがフェルが俺に向けて放った使者ならこんなに殺気立つ理由がないもんな。

だから必然的に1、2番は無くなり、消去法的に3番という事になるんだが…

狼達は唸りながら俺を囲む様に包囲網を作り上げている…確実に俺を仕留めようとしているのだろう。

だがこっちはあの狼達を殺す事は出来ない。

この狼達がフェルの配下じゃないという確証が持てないからだ。

「こりゃあ面倒な事になったな…」

この狼達がフェルの配下という可能性を考えたら俺はコイツらを攻撃する事は出来ないがあいつらはおかまい無しに俺の事を殺しに来るだろう。
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