8 / 12
第8話 ゴッゴッゴッゴッ ピーーーーーーー(ある転生者の末路)
しおりを挟む
「はあっ、はあっ、くそっ…!」
浩介は消耗していた。いくら膨大な魔力を誇る転生者とはいえ、限りはある。
とはいえ、少し休めばすぐに回復するが。そこのところも転生者はチートである。
「あの女、絶対に復讐してやる…!見下しやがって…!」
浩介は声に出して宣言していた。
脳裏には過去自分のことをバカにしてきた女の影がちらついた。
その影がなぜか集約されて、流理へと憎悪が向かう。
女だからといって優遇されてるんじゃないか?あの天使だって女みたいだったし。
これまでは女には優しくしてきたが、もうやめだ。ヒヒ、ひひ、異世界モノは異世界モノでも女にひどいことするやつに変更だ…!
浩介は心に決めたが、その決心が結実することは永久になかった。
ギギギギ
背後から音がした。
ふり返ると、槍を持ったゴブリンが一匹いた。槍は長く、鋭利な輝きを放っていた。
よく周りをみると、浩介は今いる場所に見覚えがあった。
ああ!ここはこの前襲ったゴブリンの里だ!アベルのやつを送って、転移魔法の設定をそのままにしていたんだ…。
ゴンッ!
ゴブリンが槍の柄を地面にぶつけた。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
その間ゴブリンは浩介から少しも目を離していない。
浩介はゴブリンのこの行為を何かに似ているな、と他人事のように思った。
ああ、そうだ。スズメバチだ。スズメバチが威嚇する時にカチカチ音を鳴らすのに似ているのだ。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
気づくと音は何重にもなっていた。
あれよあれよという間にゴブリンが増えていき、浩介を取り囲んでいたのだ。
…薄気味悪い連中だぜ。この前はいきなり襲ってやったからこんなことしなかったが、今はやる気満々ってわけか。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
完全に浩介は包囲されたが、それでも余裕だった。
まったく、ゴブリンなんて烏合の衆がいくら集まったところで一緒なんだよ。どれ、転生者様の魔法で蹴散らしてやるか。
浩介はこの期に及んでまだゲーム感覚が抜けていなかった。
ちょっとした全体魔法をセレクト、無詠唱で手をかざし、グルリと体を一周させる。
はい!これでゴブリンの炭火焼の完成だぜ!
とは、いかなかった。
ぷすぅ
すかしっぺのような煙が手の平から出るばかりで、何ほどの魔法も浩介から発されることはなかった。
な、なんだっ!?何が起こってる!?
浩介は慌てた。
ゴブリンたちは鋭い槍をこちらに向けて、ジリジリと迫ってくる。
浩介は自分の体を感知した…。魔力がないっ!すっからかんだ!
おかしい!あり得ない!いくら消耗しても、すぐに魔力は回復してくはずだ。
そういうシステムだったはずだ!
「ひぃっ!」
槍が前後運動を始め、浩介は本格的に脅かされ始めた。
真剣に命の危機だ。
そうだっ!こういう時こそカスタマーサポートだっ!
浩介はミュートを解除し、天使を呼び出した。
「おいっ!どうなってるんだっ!魔力が回復しないぞっ!」
〈え~、なんですか~?今読書中で忙しいんですけど~〉
読書中で忙しいなんてあるかっ!浩介は怒鳴りたい気持ちを抑えた。
「いいからっ!なんとかしろっ!うわっ!やめろっ!」
〈え?なんとかするんですか~?やめるんですか~?〉
「ちがう!こっちの話だ!てゆーか、見えてんだろっ!ピンチなんだよっ!助けてくれよっ!なんかの不具合が起きてるんだってばっ!」
〈ふふ〉
天使は薄く笑った。
「な!?わ、笑っ!?」
〈ざーんねんでしたー!浩介さんはお祈りをサボってましたよね?そうなると転生者の資格を失うんですよね~。つまり力を失うってことなんですけど~〉
「そ、そんな話は聞いてないぞっ!」
〈聞かれませんでしたから~。それに毎日連絡差し上げてたんですよ~?でも、浩介さんミュートにしてたじゃないですかぁ?あーあ、ミュートにさえしてなきゃ助かってたのになぁ。ざんねん!〉
楽しそうな天使の声とは裏腹に、浩介は涙声になって訴えた。実際もう泣いていた。ゴブリンたちに壁際に追い詰められ、腰が抜け、小便を漏らしていた。
「た、たのむよぅ~、あやまるからぁっ!」
〈謝ってなんか欲しくありませ~ん。価値ないですから。じゃ、このホットラインも消滅しますので、お元気で~〉
ピ――――――――――
耳鳴りのような音が浩介の脳内に響いた。
絶望の音だった。
「わ、我が覇道邪魔する者に死の鉄槌を!トールズハンマー!」
しかし、何も起こらない。
「…っ!我が覇道邪魔する者に死の鉄槌を!トールズハンマー!!」
しかし、何も起こらない。
「わぎゃはろぉうにゃまするも…ヒッグ…に…ヒッグ…しのてっちゅいを~うぇえええん!」
しかし、何も起こらない。
浩介の叫びがゴブリンの里に木霊した。
浩介は消耗していた。いくら膨大な魔力を誇る転生者とはいえ、限りはある。
とはいえ、少し休めばすぐに回復するが。そこのところも転生者はチートである。
「あの女、絶対に復讐してやる…!見下しやがって…!」
浩介は声に出して宣言していた。
脳裏には過去自分のことをバカにしてきた女の影がちらついた。
その影がなぜか集約されて、流理へと憎悪が向かう。
女だからといって優遇されてるんじゃないか?あの天使だって女みたいだったし。
これまでは女には優しくしてきたが、もうやめだ。ヒヒ、ひひ、異世界モノは異世界モノでも女にひどいことするやつに変更だ…!
浩介は心に決めたが、その決心が結実することは永久になかった。
ギギギギ
背後から音がした。
ふり返ると、槍を持ったゴブリンが一匹いた。槍は長く、鋭利な輝きを放っていた。
よく周りをみると、浩介は今いる場所に見覚えがあった。
ああ!ここはこの前襲ったゴブリンの里だ!アベルのやつを送って、転移魔法の設定をそのままにしていたんだ…。
ゴンッ!
ゴブリンが槍の柄を地面にぶつけた。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
その間ゴブリンは浩介から少しも目を離していない。
浩介はゴブリンのこの行為を何かに似ているな、と他人事のように思った。
ああ、そうだ。スズメバチだ。スズメバチが威嚇する時にカチカチ音を鳴らすのに似ているのだ。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
気づくと音は何重にもなっていた。
あれよあれよという間にゴブリンが増えていき、浩介を取り囲んでいたのだ。
…薄気味悪い連中だぜ。この前はいきなり襲ってやったからこんなことしなかったが、今はやる気満々ってわけか。
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
ゴッ、ゴッ、ゴッ、ゴッ
完全に浩介は包囲されたが、それでも余裕だった。
まったく、ゴブリンなんて烏合の衆がいくら集まったところで一緒なんだよ。どれ、転生者様の魔法で蹴散らしてやるか。
浩介はこの期に及んでまだゲーム感覚が抜けていなかった。
ちょっとした全体魔法をセレクト、無詠唱で手をかざし、グルリと体を一周させる。
はい!これでゴブリンの炭火焼の完成だぜ!
とは、いかなかった。
ぷすぅ
すかしっぺのような煙が手の平から出るばかりで、何ほどの魔法も浩介から発されることはなかった。
な、なんだっ!?何が起こってる!?
浩介は慌てた。
ゴブリンたちは鋭い槍をこちらに向けて、ジリジリと迫ってくる。
浩介は自分の体を感知した…。魔力がないっ!すっからかんだ!
おかしい!あり得ない!いくら消耗しても、すぐに魔力は回復してくはずだ。
そういうシステムだったはずだ!
「ひぃっ!」
槍が前後運動を始め、浩介は本格的に脅かされ始めた。
真剣に命の危機だ。
そうだっ!こういう時こそカスタマーサポートだっ!
浩介はミュートを解除し、天使を呼び出した。
「おいっ!どうなってるんだっ!魔力が回復しないぞっ!」
〈え~、なんですか~?今読書中で忙しいんですけど~〉
読書中で忙しいなんてあるかっ!浩介は怒鳴りたい気持ちを抑えた。
「いいからっ!なんとかしろっ!うわっ!やめろっ!」
〈え?なんとかするんですか~?やめるんですか~?〉
「ちがう!こっちの話だ!てゆーか、見えてんだろっ!ピンチなんだよっ!助けてくれよっ!なんかの不具合が起きてるんだってばっ!」
〈ふふ〉
天使は薄く笑った。
「な!?わ、笑っ!?」
〈ざーんねんでしたー!浩介さんはお祈りをサボってましたよね?そうなると転生者の資格を失うんですよね~。つまり力を失うってことなんですけど~〉
「そ、そんな話は聞いてないぞっ!」
〈聞かれませんでしたから~。それに毎日連絡差し上げてたんですよ~?でも、浩介さんミュートにしてたじゃないですかぁ?あーあ、ミュートにさえしてなきゃ助かってたのになぁ。ざんねん!〉
楽しそうな天使の声とは裏腹に、浩介は涙声になって訴えた。実際もう泣いていた。ゴブリンたちに壁際に追い詰められ、腰が抜け、小便を漏らしていた。
「た、たのむよぅ~、あやまるからぁっ!」
〈謝ってなんか欲しくありませ~ん。価値ないですから。じゃ、このホットラインも消滅しますので、お元気で~〉
ピ――――――――――
耳鳴りのような音が浩介の脳内に響いた。
絶望の音だった。
「わ、我が覇道邪魔する者に死の鉄槌を!トールズハンマー!」
しかし、何も起こらない。
「…っ!我が覇道邪魔する者に死の鉄槌を!トールズハンマー!!」
しかし、何も起こらない。
「わぎゃはろぉうにゃまするも…ヒッグ…に…ヒッグ…しのてっちゅいを~うぇえええん!」
しかし、何も起こらない。
浩介の叫びがゴブリンの里に木霊した。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる