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第12話 幸せな予感
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「うう……」
自分のうめき声でルーネは目覚めた。
目の前にはムソンの美しい顔があった。そして深い藍色の瞳でじっとルーネを見つめていた。
「わっ!」
ルーネは驚き、跳ね起きた。
「ううっ!」
しかし、瞬時に襲ってきた頭痛に顔をしかめた。二日酔いだ。
(二日酔い……。昨晩はお酒を飲んで、え~と、そうね、一杯飲んでそのまま寝ちゃったのね……。ああ、なんてこと……)
ルーネはチラリとムソンを見た。ムソンは何も言わず、寝転がったままこちらを見上げていた。まるで珍しい生き物を無心に観察する少年のようだった。
(恥ずかしい……)
ルーネは顔を真っ赤に染めた。
(自分のうめき声で起きるなんて……!)
なぜだかそれをムソンに見られたことが、無性に恥ずかしかった。
「……水をどうぞ」
機敏だ。ルーネが固く目をつむり悔恨状態になっていた一瞬で、ムソンは水差しから水を汲み、ルーネに手渡そうとしていた。
「……ども」
まるで世慣れない思春期少女のようなぶっきらぼうな口調で頭をペコリと下げて、ルーネはグラスを受け取った。昨晩、パルムの果実酒を飲んだグラスだ。
一息で水を飲み干すと、ルーネの脳裏に一気に昨晩の記憶がよみがえった。
「……ぅわぁ」
「うわあ?」
ルーネは叫び出したい衝動を、ムソンがいる手前最小限におさえた。その結果の「ぅわぁ」であった。ムソンは興味深げに反復したのだった。
「あの、ムソンさん……」
「はい?」
「わたし、外出禁止しましょうか?」
「えっ?なぜですか?あんなに嫌がってたじゃないですか?」
「いえ!外出禁止にしましょう!してください!というか、このベッドから出るの禁止でっ!」
ルーネは寝具を頭からかぶってしまった。
「ええっ……?どういうことですか?理由を教えてください」
「わたしのような愚か者はその方がよろしいかと……」
寝具の隙間からか細い声が漏れ出てきた。
ルーネは恥ずかしかった。
(何が愛だ。何が自由だ。対等だ。無支配だ。わたしのしたことは一方的な押しつけじゃないか。そんなこと、わたしだって本当は知りもしないのにっ……!あまつさえ、女性に性的な怯えのあるムソンに抱いてくださいだなんて、無神経にもほどがある……!)
いくら酒に酔っていたからって、なんてことを……!これでは友達になろうと提案したことも嘘になってしまうではないか。
(……でも、わたしはムソンにまったく下心がないと言えるのかしら)
大きく軋んだベッドに動揺した。あまりに美しい裸体に鼓動が跳ねた。
寝具のなかで丸まったルーネは、このまま小さくなって消えてしまいたいと思った。
「……昨晩言われたことを考えていたのです」
ムソンの低い声が響き、ルーネの入った丸まった寝具がビクッと跳ねた。
「……やはり私には難しい。たとえ頭で理解できたとしても、実感がないのでは意味のないことのように思われます」
「……はい。……ですよね」
ルーネはかろうじて、消え入りそうな声で返事をした。
寝具越しのルーネの頭に、やわらかな重みが感じられた。
ムソンはためらいがちに、だが、勇気を振り絞った様子でルーネの頭の辺りと思われるところに大きな手を置いた。
伝わって欲しいと思った。まっすぐに。
「だから、その実感をあなたと共に得られたらと思うのです。……協力してくれませんか?」
寝具がムイムイと揺れると、一気にルーネは跳ね起きた。目が真っ赤だった。
「はいっ!」だが、ルーネは快活に、まっすぐにムソンを見つめて返事をした。「一緒に、いろいろ感じましょう!」
ムソンは、見つめられ、いやそれだけでなくいろいろな理由で照れて顔を真っ赤にした。
「……なにやら誤解を生みそうな表現ですね」
「はっ!?ご、ごめんなさい!わたしったら、なんでこう……!」
ムソンはベッドから立つと、すこしだけ振り返って言った。
「……うれしいです。了承を得られて。それでは、先に朝食に行っています」
ムソンはそそくさと機敏に部屋をあとにした。
「……ぐふふふ」
ルーネは不気味な笑みを漏らした。漏らさざるを得なかった。
なぜなら、体のなかから溢れて来るものがあって、我慢すれば破裂してしまいそうだったから。
ルーネはニマニマした。満たされていた。
「ごめんなさい。ムソンさん」
ルーネはつい独りごちた。
「一足先に感じてしまいましたわ。こんなにも、幸福な気分になるものなのですね」
ルーネは初めてちゃんと誘われた朝食に、ベッドから跳ね降りて、速足で向かうのだった。
足取りは羽よりも軽かった。
きっとムソンとなら多くの喜びを感じられる、そんな幸せな予感が今のルーネにはあった。
(幸せな予感が心を満たしている状態を、自由と呼ぶんだ!そして……!)
その先はとっておくことにした。
ふたりで感じたかったから。
ルーネはやはりニマニマするのだった。
自分のうめき声でルーネは目覚めた。
目の前にはムソンの美しい顔があった。そして深い藍色の瞳でじっとルーネを見つめていた。
「わっ!」
ルーネは驚き、跳ね起きた。
「ううっ!」
しかし、瞬時に襲ってきた頭痛に顔をしかめた。二日酔いだ。
(二日酔い……。昨晩はお酒を飲んで、え~と、そうね、一杯飲んでそのまま寝ちゃったのね……。ああ、なんてこと……)
ルーネはチラリとムソンを見た。ムソンは何も言わず、寝転がったままこちらを見上げていた。まるで珍しい生き物を無心に観察する少年のようだった。
(恥ずかしい……)
ルーネは顔を真っ赤に染めた。
(自分のうめき声で起きるなんて……!)
なぜだかそれをムソンに見られたことが、無性に恥ずかしかった。
「……水をどうぞ」
機敏だ。ルーネが固く目をつむり悔恨状態になっていた一瞬で、ムソンは水差しから水を汲み、ルーネに手渡そうとしていた。
「……ども」
まるで世慣れない思春期少女のようなぶっきらぼうな口調で頭をペコリと下げて、ルーネはグラスを受け取った。昨晩、パルムの果実酒を飲んだグラスだ。
一息で水を飲み干すと、ルーネの脳裏に一気に昨晩の記憶がよみがえった。
「……ぅわぁ」
「うわあ?」
ルーネは叫び出したい衝動を、ムソンがいる手前最小限におさえた。その結果の「ぅわぁ」であった。ムソンは興味深げに反復したのだった。
「あの、ムソンさん……」
「はい?」
「わたし、外出禁止しましょうか?」
「えっ?なぜですか?あんなに嫌がってたじゃないですか?」
「いえ!外出禁止にしましょう!してください!というか、このベッドから出るの禁止でっ!」
ルーネは寝具を頭からかぶってしまった。
「ええっ……?どういうことですか?理由を教えてください」
「わたしのような愚か者はその方がよろしいかと……」
寝具の隙間からか細い声が漏れ出てきた。
ルーネは恥ずかしかった。
(何が愛だ。何が自由だ。対等だ。無支配だ。わたしのしたことは一方的な押しつけじゃないか。そんなこと、わたしだって本当は知りもしないのにっ……!あまつさえ、女性に性的な怯えのあるムソンに抱いてくださいだなんて、無神経にもほどがある……!)
いくら酒に酔っていたからって、なんてことを……!これでは友達になろうと提案したことも嘘になってしまうではないか。
(……でも、わたしはムソンにまったく下心がないと言えるのかしら)
大きく軋んだベッドに動揺した。あまりに美しい裸体に鼓動が跳ねた。
寝具のなかで丸まったルーネは、このまま小さくなって消えてしまいたいと思った。
「……昨晩言われたことを考えていたのです」
ムソンの低い声が響き、ルーネの入った丸まった寝具がビクッと跳ねた。
「……やはり私には難しい。たとえ頭で理解できたとしても、実感がないのでは意味のないことのように思われます」
「……はい。……ですよね」
ルーネはかろうじて、消え入りそうな声で返事をした。
寝具越しのルーネの頭に、やわらかな重みが感じられた。
ムソンはためらいがちに、だが、勇気を振り絞った様子でルーネの頭の辺りと思われるところに大きな手を置いた。
伝わって欲しいと思った。まっすぐに。
「だから、その実感をあなたと共に得られたらと思うのです。……協力してくれませんか?」
寝具がムイムイと揺れると、一気にルーネは跳ね起きた。目が真っ赤だった。
「はいっ!」だが、ルーネは快活に、まっすぐにムソンを見つめて返事をした。「一緒に、いろいろ感じましょう!」
ムソンは、見つめられ、いやそれだけでなくいろいろな理由で照れて顔を真っ赤にした。
「……なにやら誤解を生みそうな表現ですね」
「はっ!?ご、ごめんなさい!わたしったら、なんでこう……!」
ムソンはベッドから立つと、すこしだけ振り返って言った。
「……うれしいです。了承を得られて。それでは、先に朝食に行っています」
ムソンはそそくさと機敏に部屋をあとにした。
「……ぐふふふ」
ルーネは不気味な笑みを漏らした。漏らさざるを得なかった。
なぜなら、体のなかから溢れて来るものがあって、我慢すれば破裂してしまいそうだったから。
ルーネはニマニマした。満たされていた。
「ごめんなさい。ムソンさん」
ルーネはつい独りごちた。
「一足先に感じてしまいましたわ。こんなにも、幸福な気分になるものなのですね」
ルーネは初めてちゃんと誘われた朝食に、ベッドから跳ね降りて、速足で向かうのだった。
足取りは羽よりも軽かった。
きっとムソンとなら多くの喜びを感じられる、そんな幸せな予感が今のルーネにはあった。
(幸せな予感が心を満たしている状態を、自由と呼ぶんだ!そして……!)
その先はとっておくことにした。
ふたりで感じたかったから。
ルーネはやはりニマニマするのだった。
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