異世界転職してフワフワモコモコの保育士になりました!

Yapa

文字の大きさ
8 / 13

第8話 シンプルにホワイトな国を目指すリーダーが欲しいっス

しおりを挟む
三日もすると、子どもたちとかなり親しくなれた。



「ミカンちゃーん!」と突進してくるのを受け止める毎日だ。吹っ飛ぶけど。



初日にサティ先輩を、風のようにひいていったものの正体もわかった。



それは小動物連合だった。



ウォンバットっぽい子どものニッキーちゃんを筆頭に、フクロネズミっぽいナオミちゃん、リスっぽいフィルくん、チワワっぽいガブくんなどなどが日替わりで順番を入れ替え、列を作って、走り回る遊びをしているのだった。



わたしの居た世界にこの子たちがいたら、暴走族になっていたかもしれない。



親御さんともちょくちょくしゃべるようになってきた。



「いやー、ミカンお姉さん、ミカンお姉さんって、家でもすごいんですよー」



カモノハシ風のお母さんが言ってくれる。トッピーくんのお母さんだ。トッピーくんは普段あんまりしゃべらない。今も壁のむこうから顔をのぞかせてこっちを見ている。



「えー、ホントですかー?うれしいなー」



トッピーくんに手をふる。すると、サッと顔を隠してしまった。



「照れちゃって、まぁ。それじゃ、先生、さようならー」



「はい。さようならー」



後ろ姿を見送っていると、トッピーくんがササッと出てきて、お母さんの陰に隠れてこちらに手をふった。



うおっし!わたしは心の中でガッツポーズをとった。



ファサァッとふわふわに包み込まれて、唐突に目の前が真っ暗になった。



「わぷっ」



なんとか脱出して顔を出す。すると、ドラゴンの子どものコアちゃんがふわふわの両翼でわたしを包み込んでいた。



「もう、ダメだよ~」



なんて言いながらも、全然イヤじゃないからついついニヤけてしまう。ドラゴンの子どもには羽毛がついているんだな、とこの世界にきて初めて知った。ペンギンの赤ちゃんに近かった。大きさは二メートル以上あるけど。



「ぐあっ」とコアちゃんは大きく鳴いた。ドラゴンはしゃべれないわけじゃない。コアちゃんが幼いだけだ。多分、この部屋で一番幼い。



「コア~、迎えに来たよー」



コアちゃんのお父さんが窓の外から覗き込む。巨大だ。目の大きさだけで、窓が埋まっている。



「あっ、どうも。コアちゃんのお父さん。お疲れさまです」



サティ先輩がちょこちょこ高速で歩いて行って、窓を開ける。



「あっはっは、今日もありがとうございます。先生方。まぁ、わたしは別に働いてないから疲れてないんですけどね」



陽気に自虐ネタをぶっこんでくるコアちゃんのお父さん。



「あら~、そうなんですね~。でも、聞きましたよ。お父さん、最恐竜決定戦、略してSARIKEの常連なんですって?」



サティ先輩が目を鋭く光らせる。



「ど、どこでそれを!」



コアちゃんのお父さんが狼狽する。お城が揺れる。



「うふふ、奥さん方の情報網とだけ言っておきましょう。そりよりもすごいじゃないですか!わたし大ファンなんですよ!」



「いや~、僕は、行ってもセカンドステージ止まりですので……」



「鏡面ガケ上りですか?いやー、あれはオニですよねー」



「そうなんですよー。竜は基本的にチキンレッグですので、あそこをクリア出来るかどうかがカギなんですよねー」



「翼も魔法も使ってはいけないんですものねー、まさに竜殺し!」



きゃっきゃっ、きゃっきゃっとサティ先輩とコアちゃんのお父さんが盛り上がる。



SARIKE???という疑問は当然浮かんだが、あまりの熱量に怯んでわたしは何も言えなかった。



「それじゃあ、期待しといてください!」



コアちゃんのお父さんは、コアちゃんを肩車して、陽気にドシンドシン歩いて帰っていった。トレーニングを兼ねているそうだ。



「ハーイ、期待してまーす!」



サティ先輩が窓辺から手を振っている。小さなしっぽもピコピコ動いている。



なんだろう?サティ先輩からは、たまに元ヤンの香りがするのは気のせいなのだろうか?



「仕事はどうだ?」



「うひゃっ!」



突然背後から声をかけられて、わたしは体全体が飛び上がった。



背後には王様がいた。



「お、驚かさないでください!」



「お前が勝手に驚いたんだろうが……」



うろんな目を向けてくる。コイツには、やはりアリシアはもったいなさすぎる!そう思った瞬間だった。



「で、どうだ?仕事やこっちの世界は慣れたか?」



「え?まぁ、身の回りのことはとりあえず」



そうか、そうかと頷く。



「え~と、もしかして、心配して見に来てくれたんですか?」



わたしが聞くと、王様は不思議そうな顔をした。



「当たり前だろう。いきなりまったくちがう世界に連れてこられて、仕事を押し付けられているんだ。何か不満がないか?辞めたくなったり、帰りたくなったりしてないか心配になるのは当然だろう?」



サラッと言った。



わたしはその場にくずおれた。



「ど、どうした?」



「いえ、温かいなぁって」



「いや、普通だろ」



「まぁ、確かに言われてみれば、騙されたように連れてこられ、いきなり働かされてるんでヤバい状況だなぁって思うんですけど」



あまりに元いた世界と世界観変わりすぎて、本当に言われてみれば、だった。そういうもんなのかと思っていた。



「?そのことなんだが、お前、聖女からどんな説明受けてるんだ?」



王様がヤンキー座りでしゃがみ、顔を覗き込んできた。



わたしはこの世界に入り込む前にあったことを話した。老婆=聖女との出会いや会話を。



「あんのクソババア!これじゃあ、ウチが悪徳業者みてえじゃねえか!」



「うひー」



王様はわたしの説明を聞いて、激昂した。



「ウチはクリーンな王国目指してるのに、人身売買の片棒担がせるようなマネしやがって!」



「あ、あのー」



子どもたちの視線が集まっている。ビックリして泣いてしまうかもしれない。止めなきゃ、と思ったらいきなり王様はこちらに振り向いた。



反射的にビクッとなる。



「お前もお前だ!どこの世界に契約書も結ばずにホイホイ働くバカがいるんだ!」



すいません。わたしです。てゆーか、元の世界には結構います。そういう人。



「そんな風にして生きてたら、他人に食い物にされて、捨てられて、幸せになれないまま終わっちまうぞ!権利を学べ!お前には幸せになる権利があるんだ!わかってんのか!」



すごい剣幕で、胸ぐらつかまれて言われた。



「う、うぅ~」



わたしは、ショックだった。とてもとてもショックだった。



「え?」



「うわぁ~ん!そんなこと言われても、わかんないよー!」



わたしは、自分でもよくわからないが、なぜか大声で泣き出してしまった。



「お、おい」



「だ、だって、だれも教えてくれる人なんていなかったし、権利なんて主張してみても怒られるだけだし、自分なんてなんの価値も権利もないって思って生きてきたんだもん!生きるのに必死だったんだもん!」



ヒザの中に顔を隠して泣いた。こんなの子どもっぽいってわかってる。それでも、涙が止まらなかった。



頭に、小さな手が触れる感触があった。サティ先輩だ。



背中や体の横を囲むようにして、ふわふわもこもこが集まってきてくれているのがわかった。



「だいじょうぶ?」「泣かないで」「ミカンちゃん、いい子いい子」そう言って、子どもたちがわたしを包んでくれた。



「王様」



サティ先輩が言う。



「何か言うことはないですか?」



有無を言わせぬ、芯の通った声音だった。



「ぐっ」



王様が近づいてくるのが腕の隙間から見えた。涙で視界がぼやけてるけど、しっぽが元気なさそうにゆらゆら揺れている。



「あー、ミカン、言い過ぎた。すまなかった」



そう言って、王様はぷにぷにの肉球をわたしの頭に置いた。



「でも、アレだぞ。自分になんの価値も権利もないなんて言うな。それは、お前がこいつらの役に立ってるからとか、この国のためになってるからとかじゃないぞ。そんなこと言われた日には、だれもがなんの価値も権利もなくなっちまうんだからな」



肉球で頭をポムポムされた。



「もう!王様はまたそんないちいちめんどくさいこと言って!」



サティ先輩がぷりぷり言う。



けど、わたしの胸には、その言葉は肉球と共に、とても深く染み入ったのだった。



「な、なんだよ!本当のことだろ!」



王様が言い返し、サティ先輩が「ホント、だから残念なイケ王なんて言われるんですよ!」なんて言い返す。



耳に心地いい喧騒と、子どもたちの温かな体温が直接伝わってくる。



ただここにいるだけでいいんだなぁって、ここにいてもいいんだなぁっていうことが、自然と全身で感じられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ひきこもり娘は前世の記憶を使って転生した世界で気ままな錬金術士として生きてきます!

966
ファンタジー
「錬金術士様だ!この村にも錬金術士様が来たぞ!」  最低ランク錬金術士エリセフィーナは錬金術士の学校、|王立錬金術学園《アカデミー》を卒業した次の日に最果ての村にある|工房《アトリエ》で一人生活することになる、Fランクという最低ランクで錬金術もまだまだ使えない、モンスター相手に戦闘もできないエリナは消えかけている前世の記憶を頼りに知り合いが一人もいない最果ての村で自分の夢『みんなを幸せにしたい』をかなえるために生活をはじめる。  この物語は、最果ての村『グリムホルン』に来てくれた若き錬金術士であるエリセフィーナを村人は一生懸命支えてサポートしていき、Fランクという最低ランクではあるものの、前世の記憶と|王立錬金術学園《アカデミー》で得た知識、離れて暮らす錬金術の師匠や村でできた新たな仲間たちと一緒に便利なアイテムを作ったり、モンスター盗伐の冒険などをしていく。 錬金術士エリセフィーナは日本からの転生者ではあるものの、記憶が消えかかっていることもあり錬金術や現代知識を使ってチート、無双するような物語ではなく、転生した世界で錬金術を使って1から成長し、仲間と冒険して成功したり、失敗したりしながらも楽しくスローライフをする話です。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

処理中です...