あなたたちの許しは必要ありません

Yapa

文字の大きさ
5 / 19

第4話 マリ、リュカにお世話になって、アルデンヌ男爵と出会う

しおりを挟む
リュカの家は、とても大きな木をくり抜いて作られた、いかにも森の番人らしい家だった。

家の中は物は多いが、すべて森の管理に必要なものらしく、きちんと整理されていた。ちらかっている印象はなく、職人ぽい家だ。

棚には10冊程度本がならべられていて、マリはこの世界の本はどんなものなのか興味を引かれたが、今回は我慢しておいた。

背表紙に書かれた字は知らない言語のはずだが、なんとなく読めた。

ふしぎなことに、知らない言語を読めるし、話せてもいた。異世界チートというやつかもしれない。だとしたら、さらにふしぎな力が使えてもよさそうなものだけど、今のところそういう気配はない。

リュカの家には、ほかに家族はいなかった。この時間帯にいないのだから、リュカはベルとふたり暮らしなのだろう。リュカも特になにも言わなかったので、マリもなにも聞かなかった。

リュカはお茶をいれてくれた。はじめて飲む味だったが、心まで温かくなるような味で、マリはおかわりまでした。

それからいっしょに寝た。ベッドがひとつしかなかったからだ(ちなみにベッドは巨大な木の幹を加工してつくられていた)。

リュカは床でベルにくるまって寝るから寒くないと主張していたが、そんなのズルい。それならわたしも床でいっしょに寝るとマリが主張して、あーだこーだ言っているうちに、ベッドでみんなで寝ることになった。

マリはうれしかったし、ベルもふたりの枕元でしっぽをぶんぶんふり回していた。

リュカだけが表情を固くして、寝付けないようだったが、五分もすると静かな寝息が聞こえてくる。

マリもいつの間にかねむっていて、気づくと朝が来ていた。

目覚めはこれまでに味わったことがないほど、爽快だった。もう、超がつくほど爽快だった。

起き抜けから今日はなんでもできちゃうっていう万能感がある……。マリーさんって、よっぽど健康だったのね。ちょっとこわいくらいかも……。

朝食は、リュカの手料理をごちそうになった。

何のタマゴかわからない水玉模様のタマゴと、サーモンピンクの野菜をはさんだサンドイッチだ。

「おいしい……!」

おせじぬきで、これまで食べたどの料理よりもおいしかった。

「あはは!うれしいです!」

リュカはニッコリと笑う。

それからベルの朝の散歩(という名の追いかけっこ)を楽しみ、マリはリュカとベルと別れた。

アルデンヌ家にもどることにしたのだ。

立場上、リュカくんにあまえすぎると、リュカくんに迷惑がかかるかも……。

「リュカくん、今日のことはわたしたちだけのヒミツにしときましょ」

「え、あ、はい……」

リュカはうつむいて、なんだか残念そうな顔になった。

「また遊びに来ますね」

「……はい!」

コロコロと表情が変わり、今度は元気いっぱいのうれしそうな顔になった。

「ベルさんもまた」

マリがベルの眉間をなでると、ベルは「ぐふっ」と笑って返事をする。

リュカはいつまでも手をふって見送ってくれた。

マリもふりかえっては手をふり返した。



家にもどると、大さわぎだった。家中の人々がマリーのことを探していたようだ。

ちょっと遠回りしてきてよかった。これでリュカくんの家に泊まったことはバレなさそう。

青ざめた執事長に連れて行かれる間、マリは自分の慎重さをほめてやった。

連れて行かれた先には、アルデンヌ男爵が待ちかまえていた。寝ていないのか心労なのか、目は血走り、髪の毛は油っぽく乱れ、神経質そうに爪をガジガジかじって、貧乏ゆすりをしている。

「旦那様、旦那様!」

執事長が声をかけると、ようやく我に帰った様子になった。

そして、まるで呪いの呪文でも唱えるかのような地をはう声で「よくも……!よくもやってくれたな……!とんでもないことを……!これで300年続いた我がアルデンヌ男爵家は終わりだ……!お前のせいでなあっ!」と言った。

最後は大声でさけぶかのようだった。

壁にならんで立っていた執事たちがおびえて、ビクッ!と体をふるわせる。

しかし、マリは表情一つ変えなかった。

ただ真顔で、平静な調子で「はあ、そうですか」とだけ返事をした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

憧れと結婚〜田舎令嬢エマの幸福な事情〜

帆々
恋愛
エマは牧歌的な地域で育った令嬢だ。 父を亡くし、館は経済的に恵まれない。姉のダイアナは家庭教師の仕事のため家を出ていた。 そんな事情を裕福な幼なじみにからかわれる日々。 「いつも同じドレスね」。「また自分で縫ったのね、偉いわ」。「わたしだったらとても我慢できないわ」————。 決まった嫌味を流すことにも慣れている。 彼女の楽しみは仲良しの姉から届く手紙だ。 穏やかで静かな暮らしを送る彼女は、ある時レオと知り合う。近くの邸に滞在する名門の紳士だった。ハンサムで素敵な彼にエマは思わず恋心を抱く。 レオも彼女のことを気に入ったようだった。二人は親しく時間を過ごすようになる。 「邸に招待するよ。ぜひ家族に紹介したい」 熱い言葉をもらう。レオは他の女性には冷たい。優しいのは彼女だけだ。周囲も認め、彼女は彼に深く恋するように。 しかし、思いがけない出来事が知らされる。 「どうして?」 エマには出来事が信じられなかった。信じたくない。 レオの心だけを信じようとするが、事態は変化していって————。 魔法も魔術も出て来ない異世界恋愛物語です。古風な恋愛ものをお好きな方にお読みいただけたら嬉しいです。 ハッピーエンドをお約束しております。 どうぞよろしくお願い申し上げます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
第12回ネット小説大賞最終選考選出 「クリスティーナ・ミハイル。貴様との婚約をここに破棄する」 王立学園のサマーパーティ会場において、突然、クリスは皇太子に宣告された。 そうこの話は悪役悪徳令嬢がはかなげな娘をいじめにいじめて挙句の果てに皆の前でその悪事の数々を暴かれ弾劾される話のはずが… クリスは天真爛漫お転婆令嬢だったのに、皇太子の婚約者になったばかりに王妃教育の礼儀作法が苦手。1ミリ違うからってダメ出しされても… おまけに王立学園の物理は世界的な権威がいるからかレベルは世界的に高くて寝る間も惜しんで勉強する羽目に…・ それだけ必死に努力してるのに婚約者は礼儀作法のなっていない娘と人目もはばからずイチャイチャ もう一人の王女は別名暴風王女。礼儀作法って何、食べられるのって感じで、仲の良いお姉さまだけど敵国皇太子と仲良くしていて……… 苦労するのは私だけ? 我慢の限界を超えて… しかし、このクリス、実は建国の戦神、史上最強最悪のシャラザールが憑依していて、そんな彼女に逆らうと… 読んだ人がスカッとするお話書いていくつもりです。 新章始めました 小説家になろう カクヨムでも公開中 この1000年前の物語シャラザール帝国建国秘話はこちら 「娘の命を救うために生贄として殺されました・・・でも、娘が蔑ろにされたら地獄からでも参上します」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/474495563

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

【完結】皇女は当て馬令息に恋をする

かのん
恋愛
 オフィリア帝国の皇女オーレリアは和平条約の人質として敵国レイズ王国の学園へと入学する。  そこで見たのは妖精に群がられる公爵令息レスターであった。  レスターは叶わぬ恋と知りながらも男爵令嬢マリアを見つめており、その姿をオーレリアは目で追ってしまう。  暗殺されそうになる皇女が、帝国の為に働きながらもレスターへの恋をつのらせていく(予定)のお話です。  

ベルガー子爵領結婚騒動記

文月黒
恋愛
その日、王都より遠く離れたベルガー子爵領は、俄かに浮き足立っていた。 何せ、ついに領民一同が待ち望んでいたベルガー子爵の結婚相手がやって来るのだ。 ちょっとだけ(当領比)特殊な領地の強面領主に嫁いで来たのは、王都の男爵家の末娘・マリア。 だが、花嫁は領主であるベルンハルトの顔を見るなり泣き出してしまった。 最悪な顔合わせをしてしまったベルンハルトとマリア。 慌てるベルンハルトの腹心の部下ヴォルフとマリアの侍女ローザ。 果たしてベルガー子爵領で彼らは幸せを掴めるのか。 ハピエン確定のサクッと読めるギャグ寄り恋愛ものです。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

異世界召喚されました。親友は第一王子に惚れられて、ぽっちゃりな私は聖女として精霊王とイケメン達に愛される!?〜聖女の座は親友に譲ります〜

あいみ
恋愛
ーーーグランロッド国に召喚されてしまった|心音《ことね》と|友愛《ゆあ》。 イケメン王子カイザーに見初められた友愛は王宮で贅沢三昧。 一方心音は、一人寂しく部屋に閉じ込められる!? 天と地ほどの差の扱い。無下にされ笑われ蔑まれた心音はなんと精霊王シェイドの加護を受けていると判明。 だがしかし。カイザーは美しく可憐な友愛こそが本物の聖女だと言い張る。 心音は聖女の座に興味はなくシェイドの力をフル活用して、異世界で始まるのはぐうたら生活。 ぽっちゃり女子×イケメン多数 悪女×クズ男 物語が今……始まる

処理中です...