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1章 死神の白魔法
13 当事者
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「"ピリオド"の娘?」
「いかにも」
「嘘でしょ?」
「嘘ではない、今すぐ龍の姿に戻ってもいいがあのガキの盛った薬・・・中々に抜けなくてな。今は無理だ」
「からかってる?」
にしては、"ピリオド"の名前を知っていた。
この名前はほんの一部しか知らない、今となっては"支配の龍"なんて呼ばれ方をしておりその名前を知るのは呪いを受けた町や直接対峙した勇者パーティのみ。
「さて、俺がお前を手下にしたのはだな」
「待って、今ここで話しているとまたあの龍が現れるかもしれないから。早くオアシスで荷物を取ってからでも・・・」
「何を言っているんだお前は?」
彼女は不思議そうな顔で頬をかいていたが、私は至って冷静に判断をしているつもりだった。
察しが悪い、というより頭が回らない程に混乱していた。
「俺がお前達を襲った龍その者だぞ?襲いに来る龍等いるか」
「え?え?」
「察しが悪いのか頭が悪いのか、お前大丈夫か?」
「じゃあ嘘?」
「海の向こうにはいない、ここにいるからな。まあ順を追って説明するにはまずオアシス行って説明をするか」
「はい・・・」
彼女に従うままに再び目の前に見えるオアシスへと歩み始めた。考える暇さえ与えられない、完全に彼女のペースだった。本人が全ての疑問に対する答えを持ち、その答えを示してくれるのであればこれ以上に考える必要も悩む事もない。
オアシスへと着くのに時間は然程かからず、彼女は早速服を着たままオアシスの水源へと入っていった。
「あの子が”厄災の龍”の娘・・・?からかってるのかな?でも」
服を捲り、左上腕を確認するとやはり契約の紋章が刻まれている。この魔法は正直難しいわけではない、ただ現在この魔法は禁句とされている国が多数あり古い魔法という事もあって使用する術者も限りなく少ない。
この魔法の契約破棄、解放は簡単ではあるが魔法陣に独自の魔力と情報を組み込まれている為、簡単には解く事が出来ない。
しばらく三角座りで水源の前に待っていると、水辺からサニアが黒いリュックと共に水辺から上がりそのリュックを掲げ私の前へと置いた。それは正に[スターキャリアー]の支給品であるリュックだった。
「これだろ?」
「うん、ありがとう」
彼女は再び水源へと走り出し飛び込んだ。
まだ何かあるのだろうか?待つ間にビショビショになったリュックの中身を確認すると、[スターキャリアー]が支給される特別な魔法が組み込まれ製作された認識票、それには"リオラ"の文字、間違いない本人のものだった。
一冊の本に二つの小さな箱。そして水でグズグズとなってしまった紙切れ一枚。そして後は旅に必要な道具がいくつかあるがめぼしい物は特に無い。
「間違いない・・・本は大丈夫だけど、この紙はもう復元不可能かな。けどこれだけあればリオラさんの御家族に届ける物としては十分かな。それよりも・・・」
このリオラが受けた内密の依頼。
それに関する情報が無い、恐らくこの紙切れなのだろうか?
依頼の確認を逐一行う為に依頼内容の書かれた依頼書の複製やその物を持ち依頼をこなす事は良くある話で、その依頼書を持っている事に期待をしていたのだが、こうも紙が読めない程のなっていては意味が無い。ギルドの方でも得られない内密の依頼、当の本人の持つ依頼書ですらこの有り様では依頼はこなせない。
しかし本来の目的は完遂出来た。これだけで良い。
今更こんなことを考えるのもどうかと思うがこれ以上この1件に深く関わるのは危険な気がする。
それは当初想定していたより最悪な自体になりうる可能性すらある。
まあ今も差程変わりない程には危険な目にはあっているに違いは無い。
それからまた少し時間が経った頃にサニアは再びもう1つ同じ形の同じリュックを手に水辺から上がり私の前に置き言う。
「ほら、お前のだ」
「わざわざ拾ってくれたの?」
「まあな食べ物は食い尽くしたが」
「でもなんでわざわざ敵である相手の荷物なんかこんな所に沈めといてくれたの?」
「最初から言っただろう。お前を気に入った、最初に戦い交えた時からな。それだけだ」
「ほんとにそれだけなんだ・・・、というか服のまま水に浸かって大丈夫なの?」
「ん?すぐ乾くだろう、それより聞きたいことがある」
「いいけど、何?」
「お前、俺との戦闘の時に放ったあの一撃はなんだったんだ」
「あれ?あれは・・・」
いかにも興味津々とした彼女の顔。
私はその時ハッとした。きっと彼女はあの一撃に見込んで私を捕まえたに違いない、もしこれがラックによる一撃の必殺と知れば彼に興味を持ち彼の正体を事を探るに違いない。
彼女の父を倒した。英雄"ラック"、そしてそのパーティの一人である私。それがバレたら非常にマズイ。
「あれは私の力じゃなくて、一度だけ魔力の力を収縮し放つ魔導具で、昔の凄い戦士の一撃が込められていた箱なの。だからあの技もあの箱も、もう使えない」
ぼかした嘘、咄嗟にしては凄く出来の悪い嘘だがこうでも言わないと私が放った物として見られてしまう。
それにもしそれが借り物の力だと分かれば開放されるかも知れない。
そんな望みの薄い希望を胸に口にした言葉を聞いた彼女はガッカリをした表情でため息をつく。
「なんだ、お前の力では無いのか・・・まあいい」
「え?納得した?あの・・・私はあなたが思ってるより強い魔獣じゃないよ?白魔法しか使えないし」
「強くないなら仕方ない」
開放されるか?契約の紋章を消して貰えたとしてもきっとこの秘密を知ってしまった以上は生きて返しはしないだろう。しかしそれも覚悟の上。
「お前が弱いのであれば、俺が全てを蹂躙し破壊すれば良い話だ。お前は私を引き立てろ」
思ってた展開ではなかった。
「サニア・・・えとリフレシアさん?」
「どちらでも良い、ただ"様"を付けろ」
「じゃあサニア、私のどこがそんなに気に入ったの」
「"さん"すら消えたじゃないか。飼い主に従順な所だな」
恐らく彼女との戦いの際に、ローライを逃がした時の一部始終のやり取りを見てそう思ったに違いない。
彼女は突然に私の口を指差し言う。
「あとお前の声が良いからな、戦えなくても俺を称える歌を後ろで歌っていたら雰囲気出るだろう?」
「あなた本当にあの"支配の龍"の娘なの?」
到底そうとは思えない程に彼女の考え方はあまりあの龍、"支配の龍"とは違いどこか楽観的に感じ不思議に思う。本当にあの龍の娘なのか未だ疑いが晴れない。
「"支配の龍"?」
「そっか、こっちの呼ばれ方の方がまだ新しいもんね。今はあの"ピリオド"は"最厄の龍"ともその名も呼ばれること無く"支配の龍"と呼ばれてるんだよ」
「なんだそれ?ダサいな」
「過去にあなたのお父さんが幾多の国や村や町にかけた呪いのせいだよ。それらの名称や真名を呼ぶと
『体が植物になり頭は大きな花になって首が落ちる』っていう言い伝えが未だに根強く残ってて、あなたのお父さんを倒しても尚、名前はこれで統一されてる。今や昔の呼び名や真名を知る方が少ないよ」
「ほう、父も中々に洒落た呪いをかけるものだな」
「あなたね・・・」
事実その呪いで滅びた村や死んだ人間がいたという。
そんな事を知っている自身としてはその発言に対し少し釈然としなかった。
だが彼女がやったことではないにしても、同じ様な事をしないとも限らない、やはり危険視すべき対象には違いないのだから。
「さて、カペラよ。本題に入ろうか」
そう彼女は唐突に切り替えたと言わんばかりに言う。
「本題?」
私としては荷物も無事見つかった。そして龍の正体も、それ以上に深入りし探る要素は無い。
強いて言えば彼女から逃れる術だけだった。正直関わるべきでは無いと言うのが本心。
「あの名も無き砂漠の町、そして"サニア"。お前の探していたその荷物の男についてだ」
「あなたが関わってるの?」
「まあ半分だがな、それにお前は俺の手下だ。言う事を聞かなければならない」
「急にそんな事言われても・・・。聞いた上で私は何をすればいいの?」
「簡単に言えば、俺の存在を消して欲しい。そして手下であった"サニア"の願いを叶えてやりたい」
結果から伝えられたその2つのお願いは、今の私の情報量では到底理解する事は出来なかった。
その後に話された彼女の話、そしてアレを見るまでは。
「"ピリオド"の娘?」
「いかにも」
「嘘でしょ?」
「嘘ではない、今すぐ龍の姿に戻ってもいいがあのガキの盛った薬・・・中々に抜けなくてな。今は無理だ」
「からかってる?」
にしては、"ピリオド"の名前を知っていた。
この名前はほんの一部しか知らない、今となっては"支配の龍"なんて呼ばれ方をしておりその名前を知るのは呪いを受けた町や直接対峙した勇者パーティのみ。
「さて、俺がお前を手下にしたのはだな」
「待って、今ここで話しているとまたあの龍が現れるかもしれないから。早くオアシスで荷物を取ってからでも・・・」
「何を言っているんだお前は?」
彼女は不思議そうな顔で頬をかいていたが、私は至って冷静に判断をしているつもりだった。
察しが悪い、というより頭が回らない程に混乱していた。
「俺がお前達を襲った龍その者だぞ?襲いに来る龍等いるか」
「え?え?」
「察しが悪いのか頭が悪いのか、お前大丈夫か?」
「じゃあ嘘?」
「海の向こうにはいない、ここにいるからな。まあ順を追って説明するにはまずオアシス行って説明をするか」
「はい・・・」
彼女に従うままに再び目の前に見えるオアシスへと歩み始めた。考える暇さえ与えられない、完全に彼女のペースだった。本人が全ての疑問に対する答えを持ち、その答えを示してくれるのであればこれ以上に考える必要も悩む事もない。
オアシスへと着くのに時間は然程かからず、彼女は早速服を着たままオアシスの水源へと入っていった。
「あの子が”厄災の龍”の娘・・・?からかってるのかな?でも」
服を捲り、左上腕を確認するとやはり契約の紋章が刻まれている。この魔法は正直難しいわけではない、ただ現在この魔法は禁句とされている国が多数あり古い魔法という事もあって使用する術者も限りなく少ない。
この魔法の契約破棄、解放は簡単ではあるが魔法陣に独自の魔力と情報を組み込まれている為、簡単には解く事が出来ない。
しばらく三角座りで水源の前に待っていると、水辺からサニアが黒いリュックと共に水辺から上がりそのリュックを掲げ私の前へと置いた。それは正に[スターキャリアー]の支給品であるリュックだった。
「これだろ?」
「うん、ありがとう」
彼女は再び水源へと走り出し飛び込んだ。
まだ何かあるのだろうか?待つ間にビショビショになったリュックの中身を確認すると、[スターキャリアー]が支給される特別な魔法が組み込まれ製作された認識票、それには"リオラ"の文字、間違いない本人のものだった。
一冊の本に二つの小さな箱。そして水でグズグズとなってしまった紙切れ一枚。そして後は旅に必要な道具がいくつかあるがめぼしい物は特に無い。
「間違いない・・・本は大丈夫だけど、この紙はもう復元不可能かな。けどこれだけあればリオラさんの御家族に届ける物としては十分かな。それよりも・・・」
このリオラが受けた内密の依頼。
それに関する情報が無い、恐らくこの紙切れなのだろうか?
依頼の確認を逐一行う為に依頼内容の書かれた依頼書の複製やその物を持ち依頼をこなす事は良くある話で、その依頼書を持っている事に期待をしていたのだが、こうも紙が読めない程のなっていては意味が無い。ギルドの方でも得られない内密の依頼、当の本人の持つ依頼書ですらこの有り様では依頼はこなせない。
しかし本来の目的は完遂出来た。これだけで良い。
今更こんなことを考えるのもどうかと思うがこれ以上この1件に深く関わるのは危険な気がする。
それは当初想定していたより最悪な自体になりうる可能性すらある。
まあ今も差程変わりない程には危険な目にはあっているに違いは無い。
それからまた少し時間が経った頃にサニアは再びもう1つ同じ形の同じリュックを手に水辺から上がり私の前に置き言う。
「ほら、お前のだ」
「わざわざ拾ってくれたの?」
「まあな食べ物は食い尽くしたが」
「でもなんでわざわざ敵である相手の荷物なんかこんな所に沈めといてくれたの?」
「最初から言っただろう。お前を気に入った、最初に戦い交えた時からな。それだけだ」
「ほんとにそれだけなんだ・・・、というか服のまま水に浸かって大丈夫なの?」
「ん?すぐ乾くだろう、それより聞きたいことがある」
「いいけど、何?」
「お前、俺との戦闘の時に放ったあの一撃はなんだったんだ」
「あれ?あれは・・・」
いかにも興味津々とした彼女の顔。
私はその時ハッとした。きっと彼女はあの一撃に見込んで私を捕まえたに違いない、もしこれがラックによる一撃の必殺と知れば彼に興味を持ち彼の正体を事を探るに違いない。
彼女の父を倒した。英雄"ラック"、そしてそのパーティの一人である私。それがバレたら非常にマズイ。
「あれは私の力じゃなくて、一度だけ魔力の力を収縮し放つ魔導具で、昔の凄い戦士の一撃が込められていた箱なの。だからあの技もあの箱も、もう使えない」
ぼかした嘘、咄嗟にしては凄く出来の悪い嘘だがこうでも言わないと私が放った物として見られてしまう。
それにもしそれが借り物の力だと分かれば開放されるかも知れない。
そんな望みの薄い希望を胸に口にした言葉を聞いた彼女はガッカリをした表情でため息をつく。
「なんだ、お前の力では無いのか・・・まあいい」
「え?納得した?あの・・・私はあなたが思ってるより強い魔獣じゃないよ?白魔法しか使えないし」
「強くないなら仕方ない」
開放されるか?契約の紋章を消して貰えたとしてもきっとこの秘密を知ってしまった以上は生きて返しはしないだろう。しかしそれも覚悟の上。
「お前が弱いのであれば、俺が全てを蹂躙し破壊すれば良い話だ。お前は私を引き立てろ」
思ってた展開ではなかった。
「サニア・・・えとリフレシアさん?」
「どちらでも良い、ただ"様"を付けろ」
「じゃあサニア、私のどこがそんなに気に入ったの」
「"さん"すら消えたじゃないか。飼い主に従順な所だな」
恐らく彼女との戦いの際に、ローライを逃がした時の一部始終のやり取りを見てそう思ったに違いない。
彼女は突然に私の口を指差し言う。
「あとお前の声が良いからな、戦えなくても俺を称える歌を後ろで歌っていたら雰囲気出るだろう?」
「あなた本当にあの"支配の龍"の娘なの?」
到底そうとは思えない程に彼女の考え方はあまりあの龍、"支配の龍"とは違いどこか楽観的に感じ不思議に思う。本当にあの龍の娘なのか未だ疑いが晴れない。
「"支配の龍"?」
「そっか、こっちの呼ばれ方の方がまだ新しいもんね。今はあの"ピリオド"は"最厄の龍"ともその名も呼ばれること無く"支配の龍"と呼ばれてるんだよ」
「なんだそれ?ダサいな」
「過去にあなたのお父さんが幾多の国や村や町にかけた呪いのせいだよ。それらの名称や真名を呼ぶと
『体が植物になり頭は大きな花になって首が落ちる』っていう言い伝えが未だに根強く残ってて、あなたのお父さんを倒しても尚、名前はこれで統一されてる。今や昔の呼び名や真名を知る方が少ないよ」
「ほう、父も中々に洒落た呪いをかけるものだな」
「あなたね・・・」
事実その呪いで滅びた村や死んだ人間がいたという。
そんな事を知っている自身としてはその発言に対し少し釈然としなかった。
だが彼女がやったことではないにしても、同じ様な事をしないとも限らない、やはり危険視すべき対象には違いないのだから。
「さて、カペラよ。本題に入ろうか」
そう彼女は唐突に切り替えたと言わんばかりに言う。
「本題?」
私としては荷物も無事見つかった。そして龍の正体も、それ以上に深入りし探る要素は無い。
強いて言えば彼女から逃れる術だけだった。正直関わるべきでは無いと言うのが本心。
「あの名も無き砂漠の町、そして"サニア"。お前の探していたその荷物の男についてだ」
「あなたが関わってるの?」
「まあ半分だがな、それにお前は俺の手下だ。言う事を聞かなければならない」
「急にそんな事言われても・・・。聞いた上で私は何をすればいいの?」
「簡単に言えば、俺の存在を消して欲しい。そして手下であった"サニア"の願いを叶えてやりたい」
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