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1章 死神の白魔法
14 当事者 ②
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彼女が語るのは、彼女"リフレシア"と”トリル・サンダラ”に来た地質学者の娘”サニア”の出会いから始まる出来事だった。それにはまず”リフレシア”が何故、今に至るまで姿を現さなかったのか。
それを含め彼女は少しめんどくさそうに話した。
____________________________________________________
封印されていた。小さく暗い箱の中、孤独な時間が流れない様に優しく楽しかった彼女が両親と共にした記憶を何度も繰り返し流れていたのを見ていた。それは父である”ピリオド”が最後の時、もっとも脅威としていた勇者達から守る為だと、小さな箱に封印したのだ。
長い長い暗闇の日々はいつしか時の流れを忘れてしまう程に長く感じた。
ある時、目を覚ました。目を覚ましたのは箱から光が入った時、その時箱から追い出される様に出るリフレシアが最初に目にしたのは小さな箱を持つ少女だった。
「凄い・・・」
突如として現れた少女。その2,3倍ものある得体の知れない化け物が現れたのにも関わらず、目をキラキラとさせ龍である俺を見上げていた。その少女こそ”サニア”だ。
「お前誰だ?」
「私は"サニア"!あなたは?」
周りを見渡すと広大な砂漠。どこをどう見ても砂しかなかった。
「貴様にいくつか質問がある」
「うんいいよ」
「”厄災の龍”は・・・今どうなっている」
「”厄災の龍”?・・・悪くて大きな魔獣だよね!聞いたことあるよ!えっと・・・、私が小さい頃には全部やっつけたって話だったと思う」
おおよそ分かっていた。そうか、父は負けたのか。
そしてこの少女の言う小さい頃という言葉と背丈からもうあれから随分と時が流れているとみた。
「私を見て恐怖しないのか?」
「なんで?」
龍を見たことがないのだろう、魔獣の一匹にでも見られているのは癪に触る。一つ脅かすか、殺して何処かの見せしめにでもしようかと考えた。
「まあいい、お前。その手に持つ箱どうした」
「これね、私が住んでいた街で売ってたのを買ったの!何か暖かい大きな力が秘めてる感じがして、誰もいない所で開けたらあなたが現れたの」
売られていたと言う事はもう俺が住んでいた城も荒らされ人の手に及んでいると言うことか・・・。さてこれからどうしようか。帰る場所も無い。
空を見上げ考えているとサニアは「ねえ!」と大声で呼びかけてくる。
「なんだうるさいな・・・」
「あのね・・・お願いがあるの」
「お願い?この俺に命令するのか?」
「うん、あなたは私の願いを叶えてくれる魔獣でしょ?」
どういう謳い文句で売られたんだ俺は。しかしこの箱はただ普通に開けても普通の箱、特殊な力を有さぬ者には開けられない、見た目はただの箱だと父が言っていたが、この少女にそんな力が?考えにくい、箱が年月により老朽したに違いない。
そう、最初は思っていた。
「ならまず俺の願いを聞け」
「いいけど・・・なに?」
「腹が減った。何かよこせ」
「お腹空いてるんだ・・・わかった、ちょっと待っててね」
それからサニアはその場から離れどこかへと走っていった。近くに人がいる場所があるのだろうか、仮に告げ口されたとしても今の力さえあれば多少の村くらい容易く破壊出来る。
しばらくし、そろそろ暇になりだした頃だった。
大荷物を抱え走り寄ってくるサニアの姿が遠くから見えた。少女以外の人影もなく一人で来たのだ。
「一人か」
サニアは息を切らし俺の元まで走り切った。たくさん抱えた包みからは食料がこれでもかと詰められており、そのまま倒れる様に横になり息を整える所を見ながら、献上された食料を平らげた。
「お前、誰にも俺のこと言わなかったか?」
横になる少女は座り直し俺を見上げ「なんで?」と答えた。
「箱からこんな大きな生物が現れたんだぞ?」
「不思議だよね、面白いよね~。本当は誰かに教えたいんだけど、私実はこの砂漠にはお父さんの仕事で来たんだけど、町に馴染めなくて友達いないんだ。だから私お話しする人いなくて・・・」
「父は?」
「いつも忙しそうにしてるからお話し出来ないんだ。だから久しぶりに誰かとお話し出来て私嬉しいの!」
「そうか」
箱の封印を解いた事も気になるが、この娘利用出来そうだ。一つ悪魔にでもなったつもりで脅してみる。
「お前、俺に願いがあると言ったな?」
「うん」
「願いを叶える代わりにお前と契約を結ぶ。その契約にはお前の残り8割の寿命と、そして俺の事を他用無言にしなければ死ぬ呪いをかける。それでもいいのか?」
嘘だ。ただの拘束性の薄い契約魔法をかける。しかし思いも寄らぬ程に少女は悩む隙も無く二つ返事で答えた。
「いいよ!」
「・・・ほう、よし契約成立だ」
俺は少女の細い腕を掴み契約魔法を唱える。幾多の魔法陣を重ねた魔法は娘の腕に写し出され、契約の紋章を輝かせていた。
しかし、儚くもその魔法陣は破壊され。魔力は散乱し契約を執行する事は出来なかった。
その事に驚きを隠せなかったが直接娘の腕に触れ感じた身体中から出る魔力に異変を感じた。
「お前・・・!」
「契約できた?」
気付いていない、本人に自覚がない。
「・・・ああ、これでお前は俺の手下だ。光栄に思うがいい」
「やった!じゃあこれでお願い聞いて貰えるんだよね?」
恐らく何度試しても無駄だ。そう感じた。
「それで願いというのはなんだ?」
「あのね、この近くの地中に凄い力を感じるの」
「力?魔力か?」
この砂漠地帯一帯薄いながらも魔力を感じるが大したものではない、更にいえば今現在その場に立つ場所からは一切何も感じない。からかっているのかと思った。
「地中?地面の中か?何を感じているんだ?」
「分からないけど、何か凄いものを感じるんだけど・・・それが凄い深い所で私一人だと掘るのが大変で。だからあなたにも手伝って欲しいの」
「ちょっと待て、魔力なら俺にだって分かる。しかし何も感じない所を馬鹿みたいに掘るのは言葉通り馬鹿馬鹿しい、そんなことに俺を使うな」
「えー・・・あ、もしかして」
そういうとさっきの箱を取り出し俺に見せた。
「その箱がどうした?」
彼女は箱を砂の中へと形が見えない程までに埋めた途端、微量ながら流れていた箱の魔力の残留が忽ち消え、更にそれを掘り起こすと再びその箱から魔力を感じ取ることが出来たのだ。
「これはどういう事だ?」
「これね、ここの地元の人がここへやってくる時、最初に教えてくれたんだ。私もよくは分かんないんだけど、この土地の砂に物を隠すと魔獣や泥棒に見つかりにくいんだって!確かに少し見つけづらいけど私ある所分かっちゃうんだよね。あなたも皆みたいに見つけ難いの?」
「・・・成程、仕組みは分からんが確かに分からないな」
それでも大きな魔力ならば気付くはず。いや、それでも尚気付けぬ程にこの土地そのものの特異性があり、更にこの娘にはその特異性が効かない特別な力を持っているということなのだろうか。
「それでね、面白いのが町の人達も隠したりするんだけど、どこに隠したか分からなくなることが多いんだって!もちろん目印なんかするらしいんだけど、それをしちゃうと泥棒に見つかっちゃうから、土地勘で覚えるって言ってさ」
「じゃあこの土地全体にあらゆる物が眠っているということか?」
「うんそうだよ。そこら辺に色んな物埋まってるけど人の物だと取っちゃうとマズイから取らない様にしてるんだ」
「ならばその大きな力を感じるものも人の物だろ?」
「そうかもしれないけど、どうしても気になっちゃうんだよね。どんなものか見てみたいんだ!勿論どんなものか見終えたら元の場所に戻すよ!」
「そんな物をわざわざ見る為だけに契約したのか?」
そういうは小さく頷き遠くの方へと視線を変えた。
日の光が強いその日、彼女のその大きく青い目はどこか吸い込まれる様に綺麗に輝いて見えた。
何か野望を持ったイキイキとした生きた目。そんな風に思えた。
「でね、私それが今いる町の人をいつか救える力がある気がするんだ。何か分からないけど、何かきっと大きな力」
「何から何を救うんだ?」
「分からない、なんだかそんな気がしたってだけだよ」
”そんな気がしただけ”そんな理由で、町の人間に何か施す為だけに自分の命を賭して契約を結ぼうとした。
呆れた。しかしその確証も無い根拠に全てを賭け他人につくそうとするこの娘に俄然興味が湧いた。この力に能力、手中に収めたい。そう強く思った。
「じゃあついてきて・・・えっと、そういえば名前聞いてなかったね」
「”リフレシア”」
「凄い可愛い名前だね」
サニアは笑顔で言いそのまま走っていった。
「生意気な」
地上から低く飛び立ちゆっくりと羽ばたき、一生懸命に走るサニアを見下ろしながら並走する様に彼女の指差す方へと向かうのだった。
彼女が語るのは、彼女"リフレシア"と”トリル・サンダラ”に来た地質学者の娘”サニア”の出会いから始まる出来事だった。それにはまず”リフレシア”が何故、今に至るまで姿を現さなかったのか。
それを含め彼女は少しめんどくさそうに話した。
____________________________________________________
封印されていた。小さく暗い箱の中、孤独な時間が流れない様に優しく楽しかった彼女が両親と共にした記憶を何度も繰り返し流れていたのを見ていた。それは父である”ピリオド”が最後の時、もっとも脅威としていた勇者達から守る為だと、小さな箱に封印したのだ。
長い長い暗闇の日々はいつしか時の流れを忘れてしまう程に長く感じた。
ある時、目を覚ました。目を覚ましたのは箱から光が入った時、その時箱から追い出される様に出るリフレシアが最初に目にしたのは小さな箱を持つ少女だった。
「凄い・・・」
突如として現れた少女。その2,3倍ものある得体の知れない化け物が現れたのにも関わらず、目をキラキラとさせ龍である俺を見上げていた。その少女こそ”サニア”だ。
「お前誰だ?」
「私は"サニア"!あなたは?」
周りを見渡すと広大な砂漠。どこをどう見ても砂しかなかった。
「貴様にいくつか質問がある」
「うんいいよ」
「”厄災の龍”は・・・今どうなっている」
「”厄災の龍”?・・・悪くて大きな魔獣だよね!聞いたことあるよ!えっと・・・、私が小さい頃には全部やっつけたって話だったと思う」
おおよそ分かっていた。そうか、父は負けたのか。
そしてこの少女の言う小さい頃という言葉と背丈からもうあれから随分と時が流れているとみた。
「私を見て恐怖しないのか?」
「なんで?」
龍を見たことがないのだろう、魔獣の一匹にでも見られているのは癪に触る。一つ脅かすか、殺して何処かの見せしめにでもしようかと考えた。
「まあいい、お前。その手に持つ箱どうした」
「これね、私が住んでいた街で売ってたのを買ったの!何か暖かい大きな力が秘めてる感じがして、誰もいない所で開けたらあなたが現れたの」
売られていたと言う事はもう俺が住んでいた城も荒らされ人の手に及んでいると言うことか・・・。さてこれからどうしようか。帰る場所も無い。
空を見上げ考えているとサニアは「ねえ!」と大声で呼びかけてくる。
「なんだうるさいな・・・」
「あのね・・・お願いがあるの」
「お願い?この俺に命令するのか?」
「うん、あなたは私の願いを叶えてくれる魔獣でしょ?」
どういう謳い文句で売られたんだ俺は。しかしこの箱はただ普通に開けても普通の箱、特殊な力を有さぬ者には開けられない、見た目はただの箱だと父が言っていたが、この少女にそんな力が?考えにくい、箱が年月により老朽したに違いない。
そう、最初は思っていた。
「ならまず俺の願いを聞け」
「いいけど・・・なに?」
「腹が減った。何かよこせ」
「お腹空いてるんだ・・・わかった、ちょっと待っててね」
それからサニアはその場から離れどこかへと走っていった。近くに人がいる場所があるのだろうか、仮に告げ口されたとしても今の力さえあれば多少の村くらい容易く破壊出来る。
しばらくし、そろそろ暇になりだした頃だった。
大荷物を抱え走り寄ってくるサニアの姿が遠くから見えた。少女以外の人影もなく一人で来たのだ。
「一人か」
サニアは息を切らし俺の元まで走り切った。たくさん抱えた包みからは食料がこれでもかと詰められており、そのまま倒れる様に横になり息を整える所を見ながら、献上された食料を平らげた。
「お前、誰にも俺のこと言わなかったか?」
横になる少女は座り直し俺を見上げ「なんで?」と答えた。
「箱からこんな大きな生物が現れたんだぞ?」
「不思議だよね、面白いよね~。本当は誰かに教えたいんだけど、私実はこの砂漠にはお父さんの仕事で来たんだけど、町に馴染めなくて友達いないんだ。だから私お話しする人いなくて・・・」
「父は?」
「いつも忙しそうにしてるからお話し出来ないんだ。だから久しぶりに誰かとお話し出来て私嬉しいの!」
「そうか」
箱の封印を解いた事も気になるが、この娘利用出来そうだ。一つ悪魔にでもなったつもりで脅してみる。
「お前、俺に願いがあると言ったな?」
「うん」
「願いを叶える代わりにお前と契約を結ぶ。その契約にはお前の残り8割の寿命と、そして俺の事を他用無言にしなければ死ぬ呪いをかける。それでもいいのか?」
嘘だ。ただの拘束性の薄い契約魔法をかける。しかし思いも寄らぬ程に少女は悩む隙も無く二つ返事で答えた。
「いいよ!」
「・・・ほう、よし契約成立だ」
俺は少女の細い腕を掴み契約魔法を唱える。幾多の魔法陣を重ねた魔法は娘の腕に写し出され、契約の紋章を輝かせていた。
しかし、儚くもその魔法陣は破壊され。魔力は散乱し契約を執行する事は出来なかった。
その事に驚きを隠せなかったが直接娘の腕に触れ感じた身体中から出る魔力に異変を感じた。
「お前・・・!」
「契約できた?」
気付いていない、本人に自覚がない。
「・・・ああ、これでお前は俺の手下だ。光栄に思うがいい」
「やった!じゃあこれでお願い聞いて貰えるんだよね?」
恐らく何度試しても無駄だ。そう感じた。
「それで願いというのはなんだ?」
「あのね、この近くの地中に凄い力を感じるの」
「力?魔力か?」
この砂漠地帯一帯薄いながらも魔力を感じるが大したものではない、更にいえば今現在その場に立つ場所からは一切何も感じない。からかっているのかと思った。
「地中?地面の中か?何を感じているんだ?」
「分からないけど、何か凄いものを感じるんだけど・・・それが凄い深い所で私一人だと掘るのが大変で。だからあなたにも手伝って欲しいの」
「ちょっと待て、魔力なら俺にだって分かる。しかし何も感じない所を馬鹿みたいに掘るのは言葉通り馬鹿馬鹿しい、そんなことに俺を使うな」
「えー・・・あ、もしかして」
そういうとさっきの箱を取り出し俺に見せた。
「その箱がどうした?」
彼女は箱を砂の中へと形が見えない程までに埋めた途端、微量ながら流れていた箱の魔力の残留が忽ち消え、更にそれを掘り起こすと再びその箱から魔力を感じ取ることが出来たのだ。
「これはどういう事だ?」
「これね、ここの地元の人がここへやってくる時、最初に教えてくれたんだ。私もよくは分かんないんだけど、この土地の砂に物を隠すと魔獣や泥棒に見つかりにくいんだって!確かに少し見つけづらいけど私ある所分かっちゃうんだよね。あなたも皆みたいに見つけ難いの?」
「・・・成程、仕組みは分からんが確かに分からないな」
それでも大きな魔力ならば気付くはず。いや、それでも尚気付けぬ程にこの土地そのものの特異性があり、更にこの娘にはその特異性が効かない特別な力を持っているということなのだろうか。
「それでね、面白いのが町の人達も隠したりするんだけど、どこに隠したか分からなくなることが多いんだって!もちろん目印なんかするらしいんだけど、それをしちゃうと泥棒に見つかっちゃうから、土地勘で覚えるって言ってさ」
「じゃあこの土地全体にあらゆる物が眠っているということか?」
「うんそうだよ。そこら辺に色んな物埋まってるけど人の物だと取っちゃうとマズイから取らない様にしてるんだ」
「ならばその大きな力を感じるものも人の物だろ?」
「そうかもしれないけど、どうしても気になっちゃうんだよね。どんなものか見てみたいんだ!勿論どんなものか見終えたら元の場所に戻すよ!」
「そんな物をわざわざ見る為だけに契約したのか?」
そういうは小さく頷き遠くの方へと視線を変えた。
日の光が強いその日、彼女のその大きく青い目はどこか吸い込まれる様に綺麗に輝いて見えた。
何か野望を持ったイキイキとした生きた目。そんな風に思えた。
「でね、私それが今いる町の人をいつか救える力がある気がするんだ。何か分からないけど、何かきっと大きな力」
「何から何を救うんだ?」
「分からない、なんだかそんな気がしたってだけだよ」
”そんな気がしただけ”そんな理由で、町の人間に何か施す為だけに自分の命を賭して契約を結ぼうとした。
呆れた。しかしその確証も無い根拠に全てを賭け他人につくそうとするこの娘に俄然興味が湧いた。この力に能力、手中に収めたい。そう強く思った。
「じゃあついてきて・・・えっと、そういえば名前聞いてなかったね」
「”リフレシア”」
「凄い可愛い名前だね」
サニアは笑顔で言いそのまま走っていった。
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