白魔道師と龍の獣道 ~二匹の魔物が形見をお届けします~

世見人 白図 (ヨミヒト シラズ)

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1章 死神の白魔法

25 当事者 ⑭

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32

短いような期間ではあったがこの土地の変化というのはなんとなく分かる程度には居た。
特にこの土地特有の砂の自然現象の頻度はあの旗の影響が強く見受けられる位には酷く荒れている。

その日は凄まじい迄に砂は動き出し、1つの町すら飲み込む程大きな物まで現れたりもした。
以前と違うところは襲われないという所にある。俺はとりあえず町へと戻る間にもいくつものそれを見たが住み着いている魔獣を砂が飲み込み、その魔獣そっくりの砂の塊が動き回る光景を目にした。
それまでにもいくつかの砂の塊を何度も見た、町へと辿り着いた時には町には小さいながらも正午に賑わっていたあの活気が嘘の様に静かになっていた。

町へと入る頃に遠くからいくつかの悲鳴が聞こえるがそれ以降は人の気配も声も消え失せた。
要因は明白、あの旗が動き出した事により砂の魔力補充に人や魔獣などの魔力を持つ生き物が砂によって飲み込まれている。
町のどこを見ても人は見当たらない、町は時が止まったかの様に物だけがそのまま残り人が消え、生活感のある物だけがそこにあった、不気味なほどに。
とりあえずサニアの住む家へと向かい、家の中へ入り二階へと上がると部屋にはサニアの父親が明らかに誰かの手によって殺されたと思わしき、血塗れの遺体がそこにあった。亡骸の具合はまだ新しい。

「やはり誰かいる。いや、いたか・・・」

死体の状態はまだ新しい、しかしこれ以上俺が何かする気力も無ければどうしてやる理由もない。
正直どうでも良くなった。取り返しがつかない段階なのだから。
もうあの旗を止める術もない、ここはもうお終いだ。いや、もしかすると世界が終わるか。
彼女”サニア”が望んでいたこととは真反対の結末、最悪にして最低の結末。何一つ彼女の願いは届かなかった。とんだお笑い草だ。

私は町を去り、フラフラと何も考えず歩いていると自然と足はオアシスのある方へと運ぶ。
ふとオアシスの底に沈む箱の事を思い出し、水底に沈むその箱を取りにオアシスへと潜り箱を再び自らの手に回収した。
水辺から上がりそのまま足を組みその上に箱を乗せ静かに魔力を集中させ封印を試みる。
見様見真似にやればもしかしたら俺にもサニアの封印が使えるのでは?そんなふうに思ったからだ、思えば俺は一度として彼女の封印の魔術を見た事がなければ魔法陣すら見ていない。使える物は大した拘束力もないいつもの封印魔法。
そういえば一度、あいつに封印される時「戻れ」と唱えた。バカみたいな掛け声のそれは演唱でもなければ魔法を発動する掛け声や詠唱のそれでもない無茶苦茶な物。

「まさかあいつあの旗を封印する時もあんなことしたのか?自殺行為だな」

苦笑いと共に思い出すあの掛け声、だが実際に彼女は封印を成功させている、俺といいあの旗といい。
しかし旗は今行方知れずのまま封印する手立てがない。近くに蠢く小さな魔獣の形をした砂の塊。
試す様にその砂に向かい『戻れ』と一言唱えると、小さなその砂の塊はサラサラと形を崩し不意に開く箱に瞬く間に魔力吸い込まれ、箱は固く閉じられたのだ。

「嘘だろ・・・」

そんな魔法あってたまるかと驚いた。何より魔力を使わず、演唱も要らなかった。
普通に考えられないうえに自身が使えた事に驚く。食べた人間に化ける事が出来る魔獣特有の能力はあくまで身体を模倣し形を変える事が出来る術でありその人間固有の能力や魔法は使えなければ真似る事は出来ない。
つまり最初から俺にもこの技が使えたと言う事になる、もしくはいつの間にか覚えた・・・考えにくい。

『戻れ』というこの能力を発動するキーワード。すごく日常的に不便ではないかというのがまず最初に思った感想だ。それからその技について色々試行錯誤をしてみた。
分かった事はいくつもあり、一応には条件はある様で対象を意識し強く念じる事とあまりにも大きい物体には通用しないと言う事が分かった、更には箱からその封印した物を出す際は『出ろ』の一言で済む。しかしそれらもこの土地でましてや砂相手にし得た情報のみの事であり現状この技の使い所がいまいち完全に理解は出来い。

しかし一つだけ確かな事、それは俺にもあの起動した旗を今封印する力がある。
まあそれも今や無意味に近い、したからどうと言う事も無ければ全ては済んでしまった今更遅い話。この能力を使いとりあえずはこの土地から離れる術は容易であるということだけだ・・・・と最初は思っていた。

「こんな形じゃ報われない・・・、仇討ちがあいつの願いな訳がない。面倒だが約束は約束だ」

町の人間も守れず、世界を見る夢も潰え、新たな夢も見られない。何一つ叶う事の無かった彼女の行い、
だがあいつが成せなかったあの奇妙な旗を元に戻すという果たせなかった仕事、やってやる他無い。それが彼女と交わした契約なのだから。

それから、俺はいくつかこの封印術を試しながらほぼ飲まず食わずで出会す砂の塊を見つけは戦い封印を繰り返していた。時折空へと飛び身体を休めては地上へと戻り戦い弱らせ封印を繰り返す。
無駄とも思えるそれを繰り返しているとある事に気がついた、それはあの砂の現象が徐々に見なくなった事。
そして封印出来ない程の大きな砂の塊は分散、又は弱らせる・・・というと語弊があるが多少戦いで魔力を消費させれば封印が可能になると言う事。

徐々に現実的に可能となってきた旗の封印。遂に自ら襲うことの無くなった砂供はこの土地の生物を根こそぎ食い荒らし残る捕食対象は俺しかいない。つまり弱っている今、後は本体を封印するだけだった。

そんな中現れたのがお前とあの小僧だった。
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