26 / 40
1章 死神の白魔法
25 当事者 ⑭
しおりを挟む
32
短いような期間ではあったがこの土地の変化というのはなんとなく分かる程度には居た。
特にこの土地特有の砂の自然現象の頻度はあの旗の影響が強く見受けられる位には酷く荒れている。
その日は凄まじい迄に砂は動き出し、1つの町すら飲み込む程大きな物まで現れたりもした。
以前と違うところは襲われないという所にある。俺はとりあえず町へと戻る間にもいくつものそれを見たが住み着いている魔獣を砂が飲み込み、その魔獣そっくりの砂の塊が動き回る光景を目にした。
それまでにもいくつかの砂の塊を何度も見た、町へと辿り着いた時には町には小さいながらも正午に賑わっていたあの活気が嘘の様に静かになっていた。
町へと入る頃に遠くからいくつかの悲鳴が聞こえるがそれ以降は人の気配も声も消え失せた。
要因は明白、あの旗が動き出した事により砂の魔力補充に人や魔獣などの魔力を持つ生き物が砂によって飲み込まれている。
町のどこを見ても人は見当たらない、町は時が止まったかの様に物だけがそのまま残り人が消え、生活感のある物だけがそこにあった、不気味なほどに。
とりあえずサニアの住む家へと向かい、家の中へ入り二階へと上がると部屋にはサニアの父親が明らかに誰かの手によって殺されたと思わしき、血塗れの遺体がそこにあった。亡骸の具合はまだ新しい。
「やはり誰かいる。いや、いたか・・・」
死体の状態はまだ新しい、しかしこれ以上俺が何かする気力も無ければどうしてやる理由もない。
正直どうでも良くなった。取り返しがつかない段階なのだから。
もうあの旗を止める術もない、ここはもうお終いだ。いや、もしかすると世界が終わるか。
彼女”サニア”が望んでいたこととは真反対の結末、最悪にして最低の結末。何一つ彼女の願いは届かなかった。とんだお笑い草だ。
私は町を去り、フラフラと何も考えず歩いていると自然と足はオアシスのある方へと運ぶ。
ふとオアシスの底に沈む箱の事を思い出し、水底に沈むその箱を取りにオアシスへと潜り箱を再び自らの手に回収した。
水辺から上がりそのまま足を組みその上に箱を乗せ静かに魔力を集中させ封印を試みる。
見様見真似にやればもしかしたら俺にもサニアの封印が使えるのでは?そんなふうに思ったからだ、思えば俺は一度として彼女の封印の魔術を見た事がなければ魔法陣すら見ていない。使える物は大した拘束力もないいつもの封印魔法。
そういえば一度、あいつに封印される時「戻れ」と唱えた。バカみたいな掛け声のそれは演唱でもなければ魔法を発動する掛け声や詠唱のそれでもない無茶苦茶な物。
「まさかあいつあの旗を封印する時もあんなことしたのか?自殺行為だな」
苦笑いと共に思い出すあの掛け声、だが実際に彼女は封印を成功させている、俺といいあの旗といい。
しかし旗は今行方知れずのまま封印する手立てがない。近くに蠢く小さな魔獣の形をした砂の塊。
試す様にその砂に向かい『戻れ』と一言唱えると、小さなその砂の塊はサラサラと形を崩し不意に開く箱に瞬く間に魔力吸い込まれ、箱は固く閉じられたのだ。
「嘘だろ・・・」
そんな魔法あってたまるかと驚いた。何より魔力を使わず、演唱も要らなかった。
普通に考えられないうえに自身が使えた事に驚く。食べた人間に化ける事が出来る魔獣特有の能力はあくまで身体を模倣し形を変える事が出来る術でありその人間固有の能力や魔法は使えなければ真似る事は出来ない。
つまり最初から俺にもこの技が使えたと言う事になる、もしくはいつの間にか覚えた・・・考えにくい。
『戻れ』というこの能力を発動するキーワード。すごく日常的に不便ではないかというのがまず最初に思った感想だ。それからその技について色々試行錯誤をしてみた。
分かった事はいくつもあり、一応には条件はある様で対象を意識し強く念じる事とあまりにも大きい物体には通用しないと言う事が分かった、更には箱からその封印した物を出す際は『出ろ』の一言で済む。しかしそれらもこの土地でましてや砂相手にし得た情報のみの事であり現状この技の使い所がいまいち完全に理解は出来い。
しかし一つだけ確かな事、それは俺にもあの起動した旗を今封印する力がある。
まあそれも今や無意味に近い、したからどうと言う事も無ければ全ては済んでしまった今更遅い話。この能力を使いとりあえずはこの土地から離れる術は容易であるということだけだ・・・・と最初は思っていた。
「こんな形じゃ報われない・・・、仇討ちがあいつの願いな訳がない。面倒だが約束は約束だ」
町の人間も守れず、世界を見る夢も潰え、新たな夢も見られない。何一つ叶う事の無かった彼女の行い、
だがあいつが成せなかったあの奇妙な旗を元に戻すという果たせなかった仕事、やってやる他無い。それが彼女と交わした契約なのだから。
それから、俺はいくつかこの封印術を試しながらほぼ飲まず食わずで出会す砂の塊を見つけは戦い封印を繰り返していた。時折空へと飛び身体を休めては地上へと戻り戦い弱らせ封印を繰り返す。
無駄とも思えるそれを繰り返しているとある事に気がついた、それはあの砂の現象が徐々に見なくなった事。
そして封印出来ない程の大きな砂の塊は分散、又は弱らせる・・・というと語弊があるが多少戦いで魔力を消費させれば封印が可能になると言う事。
徐々に現実的に可能となってきた旗の封印。遂に自ら襲うことの無くなった砂供はこの土地の生物を根こそぎ食い荒らし残る捕食対象は俺しかいない。つまり弱っている今、後は本体を封印するだけだった。
そんな中現れたのがお前とあの小僧だった。
短いような期間ではあったがこの土地の変化というのはなんとなく分かる程度には居た。
特にこの土地特有の砂の自然現象の頻度はあの旗の影響が強く見受けられる位には酷く荒れている。
その日は凄まじい迄に砂は動き出し、1つの町すら飲み込む程大きな物まで現れたりもした。
以前と違うところは襲われないという所にある。俺はとりあえず町へと戻る間にもいくつものそれを見たが住み着いている魔獣を砂が飲み込み、その魔獣そっくりの砂の塊が動き回る光景を目にした。
それまでにもいくつかの砂の塊を何度も見た、町へと辿り着いた時には町には小さいながらも正午に賑わっていたあの活気が嘘の様に静かになっていた。
町へと入る頃に遠くからいくつかの悲鳴が聞こえるがそれ以降は人の気配も声も消え失せた。
要因は明白、あの旗が動き出した事により砂の魔力補充に人や魔獣などの魔力を持つ生き物が砂によって飲み込まれている。
町のどこを見ても人は見当たらない、町は時が止まったかの様に物だけがそのまま残り人が消え、生活感のある物だけがそこにあった、不気味なほどに。
とりあえずサニアの住む家へと向かい、家の中へ入り二階へと上がると部屋にはサニアの父親が明らかに誰かの手によって殺されたと思わしき、血塗れの遺体がそこにあった。亡骸の具合はまだ新しい。
「やはり誰かいる。いや、いたか・・・」
死体の状態はまだ新しい、しかしこれ以上俺が何かする気力も無ければどうしてやる理由もない。
正直どうでも良くなった。取り返しがつかない段階なのだから。
もうあの旗を止める術もない、ここはもうお終いだ。いや、もしかすると世界が終わるか。
彼女”サニア”が望んでいたこととは真反対の結末、最悪にして最低の結末。何一つ彼女の願いは届かなかった。とんだお笑い草だ。
私は町を去り、フラフラと何も考えず歩いていると自然と足はオアシスのある方へと運ぶ。
ふとオアシスの底に沈む箱の事を思い出し、水底に沈むその箱を取りにオアシスへと潜り箱を再び自らの手に回収した。
水辺から上がりそのまま足を組みその上に箱を乗せ静かに魔力を集中させ封印を試みる。
見様見真似にやればもしかしたら俺にもサニアの封印が使えるのでは?そんなふうに思ったからだ、思えば俺は一度として彼女の封印の魔術を見た事がなければ魔法陣すら見ていない。使える物は大した拘束力もないいつもの封印魔法。
そういえば一度、あいつに封印される時「戻れ」と唱えた。バカみたいな掛け声のそれは演唱でもなければ魔法を発動する掛け声や詠唱のそれでもない無茶苦茶な物。
「まさかあいつあの旗を封印する時もあんなことしたのか?自殺行為だな」
苦笑いと共に思い出すあの掛け声、だが実際に彼女は封印を成功させている、俺といいあの旗といい。
しかし旗は今行方知れずのまま封印する手立てがない。近くに蠢く小さな魔獣の形をした砂の塊。
試す様にその砂に向かい『戻れ』と一言唱えると、小さなその砂の塊はサラサラと形を崩し不意に開く箱に瞬く間に魔力吸い込まれ、箱は固く閉じられたのだ。
「嘘だろ・・・」
そんな魔法あってたまるかと驚いた。何より魔力を使わず、演唱も要らなかった。
普通に考えられないうえに自身が使えた事に驚く。食べた人間に化ける事が出来る魔獣特有の能力はあくまで身体を模倣し形を変える事が出来る術でありその人間固有の能力や魔法は使えなければ真似る事は出来ない。
つまり最初から俺にもこの技が使えたと言う事になる、もしくはいつの間にか覚えた・・・考えにくい。
『戻れ』というこの能力を発動するキーワード。すごく日常的に不便ではないかというのがまず最初に思った感想だ。それからその技について色々試行錯誤をしてみた。
分かった事はいくつもあり、一応には条件はある様で対象を意識し強く念じる事とあまりにも大きい物体には通用しないと言う事が分かった、更には箱からその封印した物を出す際は『出ろ』の一言で済む。しかしそれらもこの土地でましてや砂相手にし得た情報のみの事であり現状この技の使い所がいまいち完全に理解は出来い。
しかし一つだけ確かな事、それは俺にもあの起動した旗を今封印する力がある。
まあそれも今や無意味に近い、したからどうと言う事も無ければ全ては済んでしまった今更遅い話。この能力を使いとりあえずはこの土地から離れる術は容易であるということだけだ・・・・と最初は思っていた。
「こんな形じゃ報われない・・・、仇討ちがあいつの願いな訳がない。面倒だが約束は約束だ」
町の人間も守れず、世界を見る夢も潰え、新たな夢も見られない。何一つ叶う事の無かった彼女の行い、
だがあいつが成せなかったあの奇妙な旗を元に戻すという果たせなかった仕事、やってやる他無い。それが彼女と交わした契約なのだから。
それから、俺はいくつかこの封印術を試しながらほぼ飲まず食わずで出会す砂の塊を見つけは戦い封印を繰り返していた。時折空へと飛び身体を休めては地上へと戻り戦い弱らせ封印を繰り返す。
無駄とも思えるそれを繰り返しているとある事に気がついた、それはあの砂の現象が徐々に見なくなった事。
そして封印出来ない程の大きな砂の塊は分散、又は弱らせる・・・というと語弊があるが多少戦いで魔力を消費させれば封印が可能になると言う事。
徐々に現実的に可能となってきた旗の封印。遂に自ら襲うことの無くなった砂供はこの土地の生物を根こそぎ食い荒らし残る捕食対象は俺しかいない。つまり弱っている今、後は本体を封印するだけだった。
そんな中現れたのがお前とあの小僧だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜
夜夢
ファンタジー
主人公【相田理人(そうた りひと)】は帰宅後、自宅の扉を開いた瞬間視界が白く染まるほど眩い光に包まれた。
次に目を開いた時には全く見知らぬ場所で、目の前にはまるで映画のセットのような王の間が。
これは異世界召喚かと期待したのも束の間、理人にはジョブの表示がなく、他にも何人かいた召喚者達に笑われながら用無しと城から追放された。
しかし理人にだけは職業が見えていた。理人は自分の職業を秘匿したまま追放を受け入れ野に下った。
これより理人ののんびり異世界冒険活劇が始まる。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる