1 / 9
プロローグ
しおりを挟む
十日前。そう、十日前までの俺、『速野梓』は午後十時ごろには家でテレビを見るか、適当にパソコンで動画を見ていた。
だが、今日は違う。廃ビルの屋上で満身創痍状態でなんとか立っている状態だ。
胸には獣がつけたような爪痕、脇腹はひどい鈍痛が感じられる。
これも全て目の前で俺と同じように苦しんでいる怪人のせいだ。
怪人は体こそ人間と同じ姿をしているが、頭はライオンそっくりの獣人といえるような見た目をしている。
奴は頭を押さえ、唸り声を発しながら苦しんでいる。俺との戦闘でかなりの痛手を負っているようだ。
しかし、俺には奴にとどめを刺すことはできない。俺がただの人間だからだ。
ふいに怪人の背後の手すりに、これもまた人間の物には見えない真紅の手が捕まったのが見えた。だが、アレは俺の敵ではないのがわかる。俺は安堵して苦痛で歪んだ口元が少し緩み、笑みに変わる。同時に力が抜けてその場に座り込んだ。
間もなくしてその手の主は勢いよく飛び上がり、姿を現した。
朱色のコートが翼のように広がり、その姿はまるで悪魔のように見える。
その正体は悪魔などではなく美しい女性だ。
彼女の両腕はファンタジー作品に出てくるような西洋の龍のようにごつい形をしており、その腕で怪人を押し倒した。そしてそのまま右腕を上げ、思い切り振り降ろし、怪人の頭を叩き潰した。
潰れた頭部は一瞬にして虹色に煌めく塵と化し、次いで体も同じく塵となり、風に流されてしまった。
「立てますか?」
俺の方へ歩み寄ってきた彼女は、とても落ち着いた声でそう訊ねてきた。
「もうヘトヘト。立つのちょっとしんどいかも」
彼女は少し不安そうに顔を歪め、俺の腕を引っ張り、立たせてくれた。
「ありがとう」
「いえ、それより死んでなくて良かったですよ。血を飲まずに一対一で生き残った新人なんてほとんどいませんからね」
そう言うと足を引きずりながら歩き始めようとした俺に肩を貸してくれた。正直男として情けない姿だが、仕方がない。彼女、『吉備里桃華』は俺より遥かに頼りになる人間なのだから。
――いや、厳密には純粋な人間ではないのか。
だが、今日は違う。廃ビルの屋上で満身創痍状態でなんとか立っている状態だ。
胸には獣がつけたような爪痕、脇腹はひどい鈍痛が感じられる。
これも全て目の前で俺と同じように苦しんでいる怪人のせいだ。
怪人は体こそ人間と同じ姿をしているが、頭はライオンそっくりの獣人といえるような見た目をしている。
奴は頭を押さえ、唸り声を発しながら苦しんでいる。俺との戦闘でかなりの痛手を負っているようだ。
しかし、俺には奴にとどめを刺すことはできない。俺がただの人間だからだ。
ふいに怪人の背後の手すりに、これもまた人間の物には見えない真紅の手が捕まったのが見えた。だが、アレは俺の敵ではないのがわかる。俺は安堵して苦痛で歪んだ口元が少し緩み、笑みに変わる。同時に力が抜けてその場に座り込んだ。
間もなくしてその手の主は勢いよく飛び上がり、姿を現した。
朱色のコートが翼のように広がり、その姿はまるで悪魔のように見える。
その正体は悪魔などではなく美しい女性だ。
彼女の両腕はファンタジー作品に出てくるような西洋の龍のようにごつい形をしており、その腕で怪人を押し倒した。そしてそのまま右腕を上げ、思い切り振り降ろし、怪人の頭を叩き潰した。
潰れた頭部は一瞬にして虹色に煌めく塵と化し、次いで体も同じく塵となり、風に流されてしまった。
「立てますか?」
俺の方へ歩み寄ってきた彼女は、とても落ち着いた声でそう訊ねてきた。
「もうヘトヘト。立つのちょっとしんどいかも」
彼女は少し不安そうに顔を歪め、俺の腕を引っ張り、立たせてくれた。
「ありがとう」
「いえ、それより死んでなくて良かったですよ。血を飲まずに一対一で生き残った新人なんてほとんどいませんからね」
そう言うと足を引きずりながら歩き始めようとした俺に肩を貸してくれた。正直男として情けない姿だが、仕方がない。彼女、『吉備里桃華』は俺より遥かに頼りになる人間なのだから。
――いや、厳密には純粋な人間ではないのか。
0
あなたにおすすめの小説
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる