X.E.N.O.

スプライトふみを

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プロローグ

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 十日前。そう、十日前までの俺、『速野梓はやのあずさ』は午後十時ごろには家でテレビを見るか、適当にパソコンで動画を見ていた。
 
 だが、今日は違う。廃ビルの屋上で満身創痍状態でなんとか立っている状態だ。
 胸には獣がつけたような爪痕、脇腹はひどい鈍痛が感じられる。
 これも全て目の前で俺と同じように苦しんでいる怪人のせいだ。
 
 怪人は体こそ人間と同じ姿をしているが、頭はライオンそっくりの獣人といえるような見た目をしている。
 奴は頭を押さえ、唸り声を発しながら苦しんでいる。俺との戦闘でかなりの痛手を負っているようだ。
 しかし、俺には奴にとどめを刺すことはできない。俺がただの人間だからだ。
 
 ふいに怪人の背後の手すりに、これもまた人間の物には見えない真紅の手が捕まったのが見えた。だが、アレは俺の敵ではないのがわかる。俺は安堵して苦痛で歪んだ口元が少し緩み、笑みに変わる。同時に力が抜けてその場に座り込んだ。
 間もなくしてその手の主は勢いよく飛び上がり、姿を現した。
 朱色のコートが翼のように広がり、その姿はまるで悪魔のように見える。
 
 その正体は悪魔などではなく美しい女性だ。
 彼女の両腕はファンタジー作品に出てくるような西洋の龍のようにごつい形をしており、その腕で怪人を押し倒した。そしてそのまま右腕を上げ、思い切り振り降ろし、怪人の頭を叩き潰した。
 潰れた頭部は一瞬にして虹色に煌めく塵と化し、次いで体も同じく塵となり、風に流されてしまった。


 「立てますか?」

 俺の方へ歩み寄ってきた彼女は、とても落ち着いた声でそう訊ねてきた。

 「もうヘトヘト。立つのちょっとしんどいかも」

 彼女は少し不安そうに顔を歪め、俺の腕を引っ張り、立たせてくれた。

 「ありがとう」
 「いえ、それより死んでなくて良かったですよ。血を飲まずに一対一で生き残った新人なんてほとんどいませんからね」

 そう言うと足を引きずりながら歩き始めようとした俺に肩を貸してくれた。正直男として情けない姿だが、仕方がない。彼女、『吉備里桃華きびさとももか』は俺より遥かに頼りになる人間なのだから。

 
 ――いや、厳密には純粋な人間ではないのか。

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