愛玩性具より愛を込めて~オ○ホに転生した私~

キョクトウシラニチ

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26、悪事の代償

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「ああ、良かったー。紆余曲折あったけど、ちゃんと天秤に傾きが無くなったわぁ。よしよし、スパダリ?とかいうのに溺愛されて、長生きして幸せに暮らしてね、うふふ」

 誰かが私の真っ暗な意識の中で、そんな事を言って笑うと、沈んだ水の中から引き上げられるように、目の前に光が溢れた。

「眠らないで貰える?貴女はまだ傾いてるんだから」

 へ?

 目の前には体から発光するような眩しい女が立っていた。
 神々しいというのだろうか、はっきりと輪郭が分からない位見難く発光する人の形。辛うじて女であると思われるそれは軽い口調で私に話しかけている。

 私、……私は誰?

「ほら、忘れてないで、貴女の前世」

『前世』その言葉に走馬灯のような映像が頭に流れる。
 あ……

 私は、そうだ。
 香山 江美。二十一歳。地元の短大を出て、一番近い好条件の製造業の会社に就職した。それから……それから……
 私は会社の先輩『佐伯 莉子』の彼氏を奪ってやった。
 大人しそうな外見で世渡りが下手で、何考えてるか分からない女だった。私より年上の癖にろくな化粧もしてなくても結構綺麗な顔してたから気に食わなかった。
 私なんてこの前彼氏に浮気されて別れたのに、のほほんと付き合ってたあの女がムカついて仕方が無かった。なんだよ、手作り弁当って。家庭的アピールしてんじゃねぇよ。
 ジワジワと追い詰めて、面白半分で彼氏を誘惑するとあいつの彼氏は簡単に私に堕ちた。

 昼休みに彼氏を誘惑して、就業後にラブホに行って、寝取ってやった。
 莉子先輩は体調不良だかで午後からは会社にいなかったから、目の前で彼氏に振られるところを見れなくて残念だったわ。
 人の物取るのって本当に快感と思って、とどめを刺す様に車の中でまた先輩の彼氏のちんこをしゃぶってやってたら、あいつ、事故起こしやがった……

 そうだ。たぶんそのせいで私死んだんだ。その後の記憶がない。

「悪い子。だからこんなに天秤が傾いているのよ」

 眩しい女は私に偉そうに言う。お前誰だよ?

「汚い口は止めて頂戴。私はこの世界の女神、テレーゼ。慈悲の女神と言われてるけど、本当は違うの。私は天秤の女神。全ての調和を図る神であり、均衡を保つ平和の神なのよ」

 はあ?意味分からないわ。

「貴女のせいで、こちらでも沢山の天秤が傾いたままよ。私の大事な世界で好き勝手してくれたわね。本当に腹立たしいわ」

 その言葉を聞いて、現世の記憶も浮上してきた。

 私はドリエラ・ウェルプ。稀少な女魔法使いで、貴族令嬢。贅沢品を取り扱う商会の会長であり……ヘインリヒ・ゼルナーを狙っていた……そういえば、腹立たしいから壊してやろうと魔法を放って、あの気持ち悪いオナホが光って……どうなったんだろう?

「まぁ、私の失敗のせいでこんな事になったのだけど、まさか幸福側に傾いた天秤を持つ魂を無くしたうえ、その器に反対の魂が入り込むとは思わなかった。貴女って本当に図々しい」
「探して探して、二十三年間もどこかを彷徨って見つからなかったのにあんな魔術具に入っていたなんて、驚いたわ……でも、ちょっと力を貸してホムンクルスを発動させるだけで良かったから、労力は少なかったけど」
「本来なら、あの器には元から幸福側の魂が入ってて、色々頑張ってあの相手と出会うはずだったんだけど、まぁ全然違う出会いでも、運命に引き寄せられてちゃんと納まるところに納まって、良かった良かった……」

 女神の独り言は私には理解できない。何のことよ?

「まぁ、とにかく、貴女にはこの天秤の傾きを戻してもらわないといけないわね」

 傾き?

「ええ。天秤は善悪の傾き。善い事をすれば善が反対側に乗り、悪い事をすれば悪が反対側に乗るの。もちろん悪を被った場合は逆に善が乗る事になるわ。貴女の前の世界でいうところの因果応報というものかしら」
 え?
「だから悪い事をしたら、その分返ってくるという事」
 え?
「ふふふ、貴女丁度良い体になったわね。声も出せない、抵抗もできない。ついでに匂いと感触、痛み、はっきりした意識を与えましょう。あら、こういうのって人間の世界じゃ拷問っていうのかしら?まぁ、これで傾き過ぎた天秤が正しく戻るまで待てばいいわね」

 眩い女神は私に手をかざした。



 気付いたら、レイロに抱えられて私は移動していた。
 レイロの持ち方が乱暴で痛い。
 ちょっと、何するのよ!もっと普通に持ちなさい!ちょっと聞いてるの!

 レイロは私を見ずに何かに追い立てられるように走っている。
 よく見ると彼の服装は貴族の礼服でもなく、仕事の制服でもなく、みすぼらしい囚人服のような……

「ドリエラ、おれ、……逃げなきゃ、どこ、……はぁ、はぁ」
 血走った虚ろな目でレイロは走っていた。その様子は尋常ではなく、明らかにドリエラがかけた精神操作魔法の禁断症状が出ていた。ドリエラが魔法を使えれば簡単に色んな事が解消できるのだが、どういう訳だか全く体が動かない。声も出ない。さっきの夢の様な場所であの光る女神に言われた事が本当なのかと、ドリエラはヒヤリと恐怖を感じ始めていた。
 視界を下に持っていくと、自分には手も足も無い事が分かる。まさか、……まさか……思い浮かぶのは、ヘインリヒ・ゼルナーが使用していたマネキンの胴体部のようなオナニーホールの姿……

 王都の中心街から離れ、街道を反れた畦道を走っていく。数時間走り続けたのだろうか、地方都市のよく分からない路地裏に入り込み、限界になったレイロはドリエラを落とし、頭を抱えるように倒れ込んだ。ドリエラは地面に叩きつけられて酷く痛かった。

 何するのよ!
 ドリエラは内心で悪態を吐いていたが声も出ないし、体は何も動かない。
 気付くとレイロはそのまま気絶していた。

 自分が何も出来ない事が信じられないドリエラは魔力を発動させようとしたり、声を出そうとしたり必死になって試みていた。
 やがて疲れて、黙ってレイロの寝顔を眺めて夜の街の喧噪を聞いていた。何分、何時間か経った頃、ふとドリエラはレイロの無意識下の精神に入り込んでいた。

「お前、ドリエラか?」
 そう言われて振り向くと、レイロがこちらを見て驚いていた。
「ええ、何なの?これって夢?」
 ドリエラは夢の中でレイロと会話をしていた。

 目の前のレイロは整った顔を段々と怒りに染めてパクパクと口を開け閉めした。
「お前!お前ぇぇ!」
 腹の底から絞り出したような野太い声を出したレイロはいきなりドリエラを突き飛ばす。

 固い地面に叩きつけられたドリエラには夢なのに痛みがあった。夢の中では体の自由は効くが生前のように魔法は使えなかった。
「ああっ」
 痛みに顔を顰めていると、レイロは馬乗りになって腕を振り上げ、目を瞑ったドリエラの頬に酷い痛みが走った。顔ごともって行かれそうになる程の衝撃に目の前にチカチカと星が舞う。
 力づくでドリエラが纏っていた貴族の服を破かれると、濡れてもいない秘所を無理矢理犯された。
「こうすればお前は喜んだもんな!ほら!ほら!気持ち良いだろ!お前のせいで俺の脳は壊れてんだ!お前のせいで!もう治らないんだとよ!全部お前のせいで!!」

 渇いた粘膜を肉棒で擦られる壮絶な痛みと、激昂して拳を振り下ろされる衝撃にドリエラは気を失いそうになるのに、それは出来なかった。
 永遠に続くのではないかという程痛めつけられた時、いきなり現実世界に戻った。

「なあんだ?これ?」
 体を持ち上げられ、汚い浮浪者が目の前に立っていた。
「あのボロボロの男のもんかな?」
 持ち上げた男の隣に立っていた、これもまた浮浪者がドリエラと倒れていたレイロを見比べて言った。こちらはまだ若そうな浮浪者の男だ。
「うわ、やわらけぇ!こりゃ、マネキンじゃねぇ、性具(オナホ)だぜ!」
 ドリエラの胸を掴んで男は酷い不潔な顔を近付ける。その無遠慮な触り方がドリエラにまた痛みを与える。それに何日風呂に入っていないのか、二人とも嗅いだことのない悪臭を纏っていた。
「すげぇな、えぇ!これはすげぇ!生の女みてぇだ!おまんこの穴も尻の穴もちゃんとついてるぜ!」
「俺、使ってみてぇ!」
「はぁ!?俺が先だ!」
 浮浪者の男達は倒れているレイロを気にもせずに、ドリエラを持って口喧嘩をしながら移動し始めた……


 誰にも聞こえない所で女の悲鳴が響いていた。


 ―――――


 岡田浩平は関東のとある拘置所の雑居房の中で目を瞑っていた。
 周りには同室で三人の男達が眠っていて、時折寝言やいびきをたてるし、巡回での刑務官の足音が大きい時はこうして真夜中に目が覚めるのだ。

 今日は昼間に母親が面会にきてくれたのだ。
 わざわざ自分の為に足を運んでくれて、「お弁当も差し入れ出来ないなんて……」と母は面会室で泣いた。拘置所では差し入れ出来るものは決まっているのだ。それを知らずに持ってきて、事務官に中に持ち込めないと言われてしまったという。


 浩平は交通事故を起こし、今拘置所に収監されていた。
 本来なら過失運転致死でここまで長期拘留されることは少ない。
 初めての交通事故で、過失で人を殺してしまった。普通ならもっと早く執行猶予がついて釈放されているのだが、被害者が問題だったのだ。
 まさか、浮気相手を車に乗せて、彼女を轢き殺してしまうなんて……

 浩平は今検察から殺人罪ではないのかという嫌疑をかけられて、勾留期間を延ばされていた。事故のせいで同乗していた浮気相手も死んでしまった。


 夜、こうして目が覚めると、もう浩平は眠れなかった。
 頭に浮かぶのは彼女のことばかりだった。

 莉子は可愛かった。あまり明るい子ではなかったけど真面目で家庭的な彼女だった。手作りのお弁当や、お菓子をくれて浩平は順調な交際をしていたのに……エミちゃんに浮気に誘われ、俺は人生初のモテ期かと舞い上がってしまった。走行中にエミちゃんにフェラチオして貰ったのも悪かったんだ。本当に馬鹿だった。

 不注意でたまたま歩いていた莉子を轢き殺した。

 母が言うには、莉子は家を出る前、恨みつらみを何かに書きなぐっていたらしい。それは俺の事、エミちゃんの事、会社での事……
 何処かでその情報をマスコミが嗅ぎつけてきて、勤めていた会社も今窮地に立たされているのだとか……莉子はあの日、体調不良で半休を取ったのではなく、会社に辞表を置いて帰ったのだと後で知った。

 週刊誌には、『会社の中での陰湿なイジメ』『会社ぐるみで社員を殺害?』『本命彼女が邪魔だった浮気女が彼氏に殺人教唆?』なんていうデマまで書かれていると母は憤っていた。
 俺がただ一人で事故を起こしただけだったのに、大変な事になっているのだ。実際警察が会社に来たらしい。会社の経営にも影を落としていて、社内で莉子にきつく当たっていた人達が居たらしく、何人かは自主退職したという。

 涙が溢れ、浩平は静かに泣いた。
 莉子、ごめん。本当にごめん……
 俺が命を奪った事で、謝る事も、できない。
 俺は本当に最低だ……


 拘置所の廊下を歩く刑務官は雑居房で一人の収容者が泣いていても、チラリと見て気にする事もなく点検を終える。誰かが泣いている事など日常茶飯事だし、彼等が心を砕く事では無かった。
 無機質な足音は浩平の房からすぐに遠のいて行った。
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