言祝ぎの子 ー国立神役修詞高等学校ー

三坂しほ

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集合地点で合流するよりも先に、その少し手前の交差点で亀世さんチームと落ち合うことができた。おーい、と信号の下で手を振ると、それに気づいたふたりが駆け寄ってくる。


「妖から有力情報が聞けたんだって?」

「そうなんだ。ちょっと気になるところはいくつかあったけど、3箇所目の地点とピンポイントで重なってるから何かしらあると思うんだよね」

「とりあえず行ってみるか」

「だね。詳細は歩きながら説明────」


信号が青に変わって、歩き出そうとしたその時。

車道で信号待ちしていたタクシーから「あれ、君らこんなとこで何してんの?」と聞き馴染みのある声に呼び止められた。

振り返ると後部座席の窓から顔を出したくゆる先生が「おーい」とこちらに向かって大きく手を振っていた。


「えー! 薫センセーこそ何してんの!?」

「あはは、ちょっと渡って待ってて」


顔を引っこめた薫先生。タクシーが近くの道路脇によると、精算中のランプが点灯する。歩道の信号が点滅を始めて、私たちは慌てて渡りきった。

次の青信号で私たちの元へ駆け寄ってきた薫先生。黒のダウンジャケットに紫色の袴姿だ。はぁ~寒!と紺色のマフラーに顔を埋め白い息を吐く。


「薫先生はお仕事ですか?」

「そ、巫寿。正解。厄介な仕事また押し付けられちゃってさぁ。まったく俺の事便利屋かなんかだと思ってんのかね」


やれやれと首を振った薫先生。


「俺らは任務中なんだぜ! 昔の行方不明事件の捜索やってんの」

「へぇ~、頑張ってんじゃん。でももう結構遅いよ。そろそろ社に戻った方がいいんじゃない?」


そう言われて思い出したように時間を確認する。奉仕終了まであと15分くらいだった。最近暗くなるのが早かったせいで時間感覚が分からなくなっていたらしい。


「でもあと一箇所だけなんで、そこだけ回ったら帰ります」

「じゃあ俺も付き合うから、サクッと終わらせちゃってよ」


思わぬ提案にみんな目を瞬かせる。


「薫先生も任務中なんじゃないんですか?」

「俺のはあとでいいよ、こっから近いし」


じゃあお願いします、と頭を下げた聖仁さんは薫先生と並んで歩き出す。

私たちもその後ろに続く。


「で、皆はどこ向かってんの?」

「この先にある廃神社です。水折みおり神社ってとこなんですけど、妖からそこで妙な霊を見たって話を聞いて────」


え?と話を遮るように聞き返した薫先生。少し驚いた顔をして「いま水折神社って言った?」と聞き返す。

まるでその神社のことを知っているような口ぶりだ。


「ご存知なんですか?」

「ご存知も何もそこ、俺がこれから任務に行く場所だよ」


今度は私たちの「え?」が揃う。

ふむ、と腕を組み黙り込む薫先生。そんな様子に私たちは顔を見合わせる。

そしてこの流れ、とても嫌な予感がする。


「いやね、普段なら"丁度いいじゃ~ん、特別授業だよ"って連れてってるところなんだけど、今回は案件が案件なだけに……うーん、どうしようか」

「嘘だろ? あんなに無理やり俺らを振り回してた薫先生が悩むだなんて、明日は槍が降るのか?」

「ちょっと泰紀? 俺のことなんだと思ってるの? あはは」


たしかにこれまでの薫先生なら私たちの都合なんてお構い無しに「特別授業だよ~」と笑いながら問答無用の強制参加だった。

薫先生が考え込むくらいの案件って一体何?


「どういう任務なんですか?」


代表して聖仁さんが尋ねる。顎をさする薫先生、そして。


「それがさぁ、"空亡の残穢"の回収なんだよね」


みんなの目が点になる。たっぷり十秒間が空いて、「ええ!?」と驚愕する声が揃った。

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