言祝ぎの子 ー国立神役修詞高等学校ー

三坂しほ

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旅立ち

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「────みんな用意できた?」


十分後、各々に荷物をまとめた私たちは裏の鳥居に集まった。大鳥居から出れば神職に見つかるかもしれない、という恵衣くんの提案だった。


「にしてもこの後はどうするんだよ? 春先とはいえまだ夜は冷えるし、野宿するにはキツイんじゃね?」


ダウンコートのフードを被った慶賀くんが赤い鼻をすんとすすって白い指先に息を吹きかける。


「かむくらの屯所に一旦泊まるのはどうだろう? あれこれ理由をつけて次の日にすぐ発てば何とかなるんじゃないかな」

「馬鹿なのかお前。あそこには神修の教師もいるんだぞ。学生が揃って深夜に訪ねてきたら、一発で学校側へ連絡が行く」


たしかに、と嘉正くんが眉根を寄せた。

かむくらの神職には嬉々きき先生や薫先生、漢方薬学の豊楽ほうらく先生も所属している。集会所であるかむくらの屯所にも頻繁に出入りしているので、間違いなく見咎められるだろう。

みんなは神妙な顔つきで「どうする?」と目配せをする。

やっぱり私一人だけで行った方が。


「あ、だったらウチくる?」


ポンと手を打ったのは来光くんだった。

来光くんは今訳あって親元から離れており、長期休暇の際にも実家ではなく薫先生の家に帰っている。


「薫先生普段は教員の独身寮に帰ってるから、僕が長期休暇の時しか家には帰ってこないんだよ。充分広いし他人の目もないし、暫く隠れ家にするには最適だと思う」


みんなの表情が明るくなる。決まりだ。

でも、本当にそれでいいんだろうか。

嘉正くんがこっそり買ってきてくれた迎門げいもんの面をみんなに配った。「はい巫寿」と面を差し出す。

受け取るのに躊躇っていると、嘉正くんは眉尻を下げて笑った。


「どんなことがあろうと、みんなで戦おう」

「そーだよ! 誰一人死なせねぇ!」

「うんうん。空亡を倒して、巫寿ちゃんも助かる方法を皆で探そう」


強い力で肩を叩かれる。頼もしい手だ。

ギュッと唇を噛み頷く。みんなの気持ちが嬉しくて、また涙が溢れてしまいそうだった。


「行くぞ、巫寿」


面を少しだけ持ち上げて恵衣くんが私を見た。いつもと変わない落ち着いた表情で、空いた手を私に手を差し出す。

これからのことなんて分からない。皆を困難な状況に巻き込むかもしれない。もっと辛いことが、この先待っているかもしれない。

けれど差し出されたこの手に、少しは縋ってもいいのだろうか。強く引っ張ってくれるこの手に、身を任せてもいいのだろうか。




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