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三学期
伍
しおりを挟む「よし、ここからは三年の分野だ。先輩たちの本気を見せてやろう」
顎を上げて不敵に笑った亀世さん。こっちに来い、と顎で私たちを呼び付けるとその場に腰を下ろして、落ち葉の散らばる地面を指さした。
「巫寿、拾ってみろ」
落ち葉を拾う?
不思議に思いながらも言われたとおりに亀世さんが示した腐りかけの黒くなった落ち葉にそっと指を伸ばす。
葉の部分を摘むと、持ちあげるよりも前に指先でパリパリと細かく砕けた。指先は真っ黒に煤けている。
これは腐ったり枯れているというよりも────。
「この葉っぱ、焦げてませんか?」
「お? こっちも焦げてっぞ」
「ここもだ」
各所からみんなのそんな声が上げる。
どういうこと? 焚き火をしたとでも言うんだろうか? でも焚き火をした後というのなら、燃えた葉っぱがあちこちに散らばっているのは妙だ。
亀世さんがは顎に手を当てた。
「先生がこの山でキャンプや焚き火は禁止されていると言っていたのも踏まえて、攫われた地点に不自然な燃えた跡から推測するに──攫ったのはおそらく、怪し火を操る妖もしくは火に関連する妖だな」
思わずなるほどと手を打った。
キャンプが行われていれば燃え跡があってもおかしくないけれど、禁止されているのだとしたら火がついた跡があるのは不自然だ。
つまり人以外の何かがここに存在したということ。
さっき車の中で先生に話しかけていたのは、世間話ではなく情報収集だったわけか。
「ほい、そんでもってこっちな」
今度は鶴吉さんが私たちを手招きして呼び寄せる。駆け寄った私たちに、亀世さんと同様「ここ見てみ」と地面を指さす。
ぬかるみが乾いたところに、何かがその上を踏んだような車輪が通った跡がある。自転車のタイヤ痕にしては太く、タイヤの跡にしては細い。
「麓の天気は晴れていたらしいが、丁度一日前に山頂付近で雨が降っていたらしい。恐らく瑞祥が攫われた頃とほぼ同時についた後だろうな。ほら」
乾いたその跡のそばには人の足跡があった。おそらく24センチ、瑞祥さんの足のサイズもおそらくその辺なはずだ。
「この辺りは自転車や自動車で通り抜けれるような舗装されたみちでもない。神隠しと関連していると言ってもいいだろうよ」
ほぉ~、とみんなの感心のため息が揃う。
まだ探し始めて十分と経っていないのに、現場を見ただけでこんなにも次々と手がかりが浮上してくるなんて。
「ちなみにその時、落雷はなかったもののゴロゴロって雷鳴は聞こえたらしい。じゃあ今わかったことから犯人像を推測すると?」
聖仁さんがニコニコしながらそう尋ねた。私たちはお互いの顔を見合わせて、分かったことを指折りしながら整理していく。
「火を使う妖だろ?」
「恐らく攫われた時についた車輪のあと……」
「雷鳴が聞こえたってことは……」
うーん、と首を捻る私たち。
先輩たちはもう答えが分かっているのか、まるで赤ん坊を見守るような眼差しで私たちが答えを導き出すのを待っている。
うう、と唸り声を上げた泰紀はシュッと勢いよく手を挙げた。
「聖仁先生! ググッていい?」
「あはは。本当の先生だったら駄目って言うだろうけど、いいよ。文明の利器に頼る方が早い時もあるからね」
聖仁先生で助かった。
早速私たちは特徴を検索ボックスに打ち込んでボタンを叩く。ほぼ同時にみんなのスマホに同じ画面がパッと現れて「あっ!」と声を上げる。
表示された画面を皆して聖仁さんに差し出し、声を揃えた。
「輪入道だ!」
「そう、恐らく瑞祥は輪入道に攫われて神隠しにあったんだ」
「すごーい! 僕らもう犯人に辿り着いちゃったよ!」
辿り着いたのは先輩たちの知識と文明の利器のお陰なのだけれど、たしかにここまでスムーズに犯人にたどり着くなんて。
神隠しの捜索って意外と簡単なのでは?
「ちなみに、ここまでならちょっと習えば誰だってできるよ。初歩中の初歩だから油断しないようにね」
心の中を読まれた。
へへ、と私たちは肩を竦めてお互いの顔を見た。
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