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第四話 双剣が片手剣に勝てるわけがない
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「おいおい、本当にやる気かよ、新入り?」
挑発的な笑みを浮かべるのはギルド員の男。胸元を開いて見せつけている鍛え抜かれた筋肉が、俺は強いぜと語りかけてくる。ふふっ、まったくおしゃべりな大胸筋だぜ。
「待って、ここで乱闘はダメ!」
エリスが間に割って入り腕を広げた。カウンターを乗り越える際の恐ろしく綺麗なおみ足、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「なら、訓練場でやるか?」
男は肩をすくめながら提案する。最初からそう仕向けるつもりだったんだろう。既に周囲には「おもしろいものが見られそうだ」と笑う冒険者たちが集まり始めている。だが見世物になって恥をかくのはお前だ。
「いいだろう」
こうして、ギルドの訓練場での勝負が決まった。
場を移すと、見物人はさらに増えていた。訓練場の柵に身を乗り出して囃し立てる者もいれば、腕を組んで静かに見守る者もいる。だが、共通しているのは皆、この男の強さを知っていることだった。
「アイツ、ロイドさんに勝てるわけねぇだろ」
「元B級の上位、町じゃ一番の実力者だぜ?」
聞こえてくる囁きに、フィリアが不安そうに顔を曇らせる。
「ガルド、大丈夫……?」
彼女の問いに、エリスも小さく息を飲むのが見えた。冒険者たちと肩を並べたことはないが、同じ作戦に参加した事は何度もある。確かに元B級相手なら分が悪すぎるかもな。何せB級の上位ともなれば、一国の精鋭騎士団に匹敵する実力を持つ者もいるのだ。一介の盾兵だった俺とは大違いである。
「名乗っておくか。俺はロイド・グランツ。元B級上位、ここらじゃ俺より強いやつはそうそう見当たらないぜ」
男は不敵に笑いながら宣言した。その言葉に見物人たちからどよめきが上がる。やはりこの男こそがこの町の頂点——誰もがそう確信している。
「それで、お前は? まさか名乗る名前もねぇってことはないよな?」
「……ガルドリック。特に肩書はないが、戦いに関しては少し心得がある」
それだけだ。
元B級、それも上位と付け加えて名乗るなんてダセェやつの真似が出来るか。ただ名を名乗るのみ。所属を口にして喧嘩するのは仲間を背負った時だけだ。
ロイドが薄く笑い、見物人たちは余裕ぶった俺を嘲笑する。
「へぇ、少し心得がある程度で俺に勝てると思うのか?」
「そうだ。……だが特別な事じゃない、お前のことは特に強いとも思っていない。さっさと片付けで謝罪させるだけだ」
真っ直ぐにロイドを見据え、淡々と言い放った。
その瞬間、観客たちの間に沈黙が流れる。
「……面白え」
ロイドの口元が歪み、不敵な笑みが浮かぶ。
「ガルドさん、ここでは訓練用の装備を使ってください」
訓練場の武器庫は、冒険者ギルドの奥にあった。
壁一面に剣や槍、斧といった武器が並べられ、反対側には盾が種類ごとに立てかけられている。
「好きな武器を選びな。もっとも、何を選ぼうが結果は変わらねぇけどな」
ロイドが余裕たっぷりに言い放つ。すでに自分の武器は決めているらしく、彼は二本の短剣を手にしていた。双剣使いか。
俺は無言で盾の方へ向かった。
視線を走らせると、目に入るのはどれも小さい。
荷物になる盾が冒険者に好まれないのは分かる。大盾は集団戦でこそ本領を発揮するものだ。
仕方なく棚の端に立てかけられていた一番大きな盾を手に取る。
それでも、以前使っていた軍用の大盾に比べれば遥かに小さい。
全身を覆うには程遠いが、ないよりはマシだ。
それから武器棚に向かい、大剣を手に取った。
本来は両手持ち用の剣だが、今の俺にとっては片手で扱っても余裕がある重量である。剣術なんて基礎しか知らないので、デカくて叩きつけられるこれがいい。
「お、おい……」
誰かの戸惑った声が聞こえた。
見ると、周囲の冒険者たちが俺の装備を見て驚いている。
「なんだあの馬鹿……」
「盾もでかいのに、剣も両手剣じゃねえか……」
「おいおい、無茶するなよ!そんなもん振り回せるわけ——」
彼らの反応を無視して、大剣を軽く振る。
風を切る音が響き、目の前の冒険者たちが息を呑んだ。
「……問題ない」
むしろ軽いくらいだ。
これが今の俺にとっての最適解。
「ふん、何を選ぼうが勝負は変わらん。準備ができたなら、さっさと始めようぜ?」
ロイドが双剣を構えながら、貼り付けていた笑みを消した。
「それでは、私が合図をします。いいですね?………始め!」
「速攻で決めてやる!」
ロイドの双剣が空気を裂いて襲いかかる。鋭く、速く、迷いのない剣閃。その一撃一撃が、俺の体を裂かんとする殺意に満ちている。刃の無い訓練武器なのに、触れれば胴体ごと断たれそうな気迫だ。
だが、俺は一歩も引かない。盾を斜めに構え、刃を受けるのではなく、滑らせるように逸らす。ロイドの攻撃が空を切り、流れるように次の一手へと繋がるのを、俺は見極めていた。
「ちっ……ッ!」
苛立ちを滲ませるロイドが双剣を交差させて連撃を仕掛ける。だがその動きにも対応できる。
右の剣が俺の側頭部を狙う。盾の角度を変え、刃を弾きながら逆方向へ誘導する。同時に左の剣が胴を狙ってくるが、それも盾の縁で受け、更にわずかに押し返して間合いを狂わせた。
「なっ……!?」
ロイドの体勢が僅かに崩れた瞬間、俺はさらに前へ出る。大盾の重みを活かし、じわじわとプレッシャーをかけながら、奴の剣を封じ込めていく。
剣士は間合いとリズムを奪われると一気に脆くなる。俺はそれを知っている。たとえ鍛えた肉体が無くなろうと、日々の訓練で積み上げた経験は消えていない。
ロイドの双剣が次の攻撃を繰り出そうとする。だが、俺はその前に盾を押し込み、腕の自由を奪う。ロイドの刃は力が乗る前に潰され、その力を発揮する事が出来ない。
「チッ……この……!」
焦りを感じたロイドが距離を取ろうとする。しかし、それこそが隙。
身軽な双剣使いのバックステップに合わせ、それを上回る速度の踏み込みを行う。踏み出した足が地面に着いた瞬間に両足で飛ぶように進む、盾兵達の使う特殊な歩法だ。重心を低くして滑るように踏み込み、そのまま全身の力を込めて盾を前へと叩きつける。
鈍い衝撃と共に、ロイドの体が弾き飛んだ。
「ぐっ……!」
土煙を上げてロイドが地面を滑る。それを見逃すわけもなく、追撃の大剣を叩き込んだ。
体勢を立て直そうとするロイドの双剣を、俺の大剣が弾き飛ばす。
訓練用の双剣が宙を舞い、皆が見守る中で地面を転がった。
「…………!」
沈黙。
訓練場を囲む冒険者たちも、言葉を失ったように見つめている。
俺は剣を下ろし、息を整えた。
「……終わりだな」
俺の言葉に、ロイドは唇を噛んだまま拳を握りしめていた。
勝負がついた瞬間、見物していた冒険者たちがざわめきだす。
「嘘だろ……ロイドさんが負けるなんて……」
「なんだアイツ、あんな盾の扱い見たこと無いぞ」
「ロイドが一方的に攻めていたはずだ。でも、いつの間にか……」
その驚愕の声の中、フィリアが駆け寄ってきた。
「すごいすごい!ガルド、強いって思ってたけど、ここまでとは!」
彼女は飛び跳ねるように喜び、満面の笑みを浮かべている。
エリスも驚きつつ、落ち着いた口調で言った。
「……驚いたわ。正直、勝てるとは思っていなかった。もしかしたらロイドさんが少し苦戦するかもと思ったのに」
そんな二人の反応を受け、俺は小さく息を吐く。
(戦闘経験は間違いなく俺の培ったものだ。だが、それを勇者の力が後押ししてくれた結果だ。手放しでは喜べないな)
とはいえ、妙に体が軽く動くのが少し気になる。どこかで体ならしておきたいな。
地面に座り込んだロイドは、まだ自分の負けを受け入れられないような表情をしていた。
しかし、やがて苦笑いを浮かべて立ち上がると、大きく息を吐いた。
「……いや、完敗だ。こりゃ俺の方が未熟だったな」
潔く負けを認めた彼に、見物人たちもどよめく。
ロイドは埃を払って俺の前に立つと手を差し出してきた。俺も迷うこと無く手を握る。
「悪かったなガルド。どうやら俺は、お前のことを見くびってたようだ」
「……いいさ。俺もいい経験になった」
ロイドは満足そうに頷いた。案外悪いやつじゃないのかもな。
「エリス。こいつ、C級スタートでいいんじゃないか?」
「え? でも、新人は普通F級から……。いえ、そもそも彼は登録申請すらしていないんです」
エリスが戸惑うと、ロイドは肩をすくめた。
「いいから作っておけ。実力的にはB級でもいいくらいだが、さすがにそこまでは無理だからな。C級が妥当だろ」
エリスは少し考え込み、それから小さく頷く。
「……わかりました。ギルド長に相談してみます」
「いやいや待ってくれ、俺は冒険者になる気は――」
その時、後ろから別のギルド員が駆け寄ってきた。
「ロイドさん、こんなところにいたんですね!」
「ん? どうした?」
「例の魔物です、また目撃情報が入りました!」
「またか……好き勝手暴れやがって」
「例の魔物? この町の近くに何かヤバいのがいるのか?」
ロイドは俺の方を向くと、ニヤリと笑った。
「ガルド、ちょうどいい。お前の実力を見込んで、一緒に来ないか?」
ふふ、俺の実力を見込んでか。
俺が言うべきことは一つだ。分かってるよな?
「その前にフィリアに謝らんかい!」
スパーンッ!ロイドのケツが気持ちのいい音を奏で、飛び上がって崩れ落ちた。
あ、力の加減ミスった。
挑発的な笑みを浮かべるのはギルド員の男。胸元を開いて見せつけている鍛え抜かれた筋肉が、俺は強いぜと語りかけてくる。ふふっ、まったくおしゃべりな大胸筋だぜ。
「待って、ここで乱闘はダメ!」
エリスが間に割って入り腕を広げた。カウンターを乗り越える際の恐ろしく綺麗なおみ足、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「なら、訓練場でやるか?」
男は肩をすくめながら提案する。最初からそう仕向けるつもりだったんだろう。既に周囲には「おもしろいものが見られそうだ」と笑う冒険者たちが集まり始めている。だが見世物になって恥をかくのはお前だ。
「いいだろう」
こうして、ギルドの訓練場での勝負が決まった。
場を移すと、見物人はさらに増えていた。訓練場の柵に身を乗り出して囃し立てる者もいれば、腕を組んで静かに見守る者もいる。だが、共通しているのは皆、この男の強さを知っていることだった。
「アイツ、ロイドさんに勝てるわけねぇだろ」
「元B級の上位、町じゃ一番の実力者だぜ?」
聞こえてくる囁きに、フィリアが不安そうに顔を曇らせる。
「ガルド、大丈夫……?」
彼女の問いに、エリスも小さく息を飲むのが見えた。冒険者たちと肩を並べたことはないが、同じ作戦に参加した事は何度もある。確かに元B級相手なら分が悪すぎるかもな。何せB級の上位ともなれば、一国の精鋭騎士団に匹敵する実力を持つ者もいるのだ。一介の盾兵だった俺とは大違いである。
「名乗っておくか。俺はロイド・グランツ。元B級上位、ここらじゃ俺より強いやつはそうそう見当たらないぜ」
男は不敵に笑いながら宣言した。その言葉に見物人たちからどよめきが上がる。やはりこの男こそがこの町の頂点——誰もがそう確信している。
「それで、お前は? まさか名乗る名前もねぇってことはないよな?」
「……ガルドリック。特に肩書はないが、戦いに関しては少し心得がある」
それだけだ。
元B級、それも上位と付け加えて名乗るなんてダセェやつの真似が出来るか。ただ名を名乗るのみ。所属を口にして喧嘩するのは仲間を背負った時だけだ。
ロイドが薄く笑い、見物人たちは余裕ぶった俺を嘲笑する。
「へぇ、少し心得がある程度で俺に勝てると思うのか?」
「そうだ。……だが特別な事じゃない、お前のことは特に強いとも思っていない。さっさと片付けで謝罪させるだけだ」
真っ直ぐにロイドを見据え、淡々と言い放った。
その瞬間、観客たちの間に沈黙が流れる。
「……面白え」
ロイドの口元が歪み、不敵な笑みが浮かぶ。
「ガルドさん、ここでは訓練用の装備を使ってください」
訓練場の武器庫は、冒険者ギルドの奥にあった。
壁一面に剣や槍、斧といった武器が並べられ、反対側には盾が種類ごとに立てかけられている。
「好きな武器を選びな。もっとも、何を選ぼうが結果は変わらねぇけどな」
ロイドが余裕たっぷりに言い放つ。すでに自分の武器は決めているらしく、彼は二本の短剣を手にしていた。双剣使いか。
俺は無言で盾の方へ向かった。
視線を走らせると、目に入るのはどれも小さい。
荷物になる盾が冒険者に好まれないのは分かる。大盾は集団戦でこそ本領を発揮するものだ。
仕方なく棚の端に立てかけられていた一番大きな盾を手に取る。
それでも、以前使っていた軍用の大盾に比べれば遥かに小さい。
全身を覆うには程遠いが、ないよりはマシだ。
それから武器棚に向かい、大剣を手に取った。
本来は両手持ち用の剣だが、今の俺にとっては片手で扱っても余裕がある重量である。剣術なんて基礎しか知らないので、デカくて叩きつけられるこれがいい。
「お、おい……」
誰かの戸惑った声が聞こえた。
見ると、周囲の冒険者たちが俺の装備を見て驚いている。
「なんだあの馬鹿……」
「盾もでかいのに、剣も両手剣じゃねえか……」
「おいおい、無茶するなよ!そんなもん振り回せるわけ——」
彼らの反応を無視して、大剣を軽く振る。
風を切る音が響き、目の前の冒険者たちが息を呑んだ。
「……問題ない」
むしろ軽いくらいだ。
これが今の俺にとっての最適解。
「ふん、何を選ぼうが勝負は変わらん。準備ができたなら、さっさと始めようぜ?」
ロイドが双剣を構えながら、貼り付けていた笑みを消した。
「それでは、私が合図をします。いいですね?………始め!」
「速攻で決めてやる!」
ロイドの双剣が空気を裂いて襲いかかる。鋭く、速く、迷いのない剣閃。その一撃一撃が、俺の体を裂かんとする殺意に満ちている。刃の無い訓練武器なのに、触れれば胴体ごと断たれそうな気迫だ。
だが、俺は一歩も引かない。盾を斜めに構え、刃を受けるのではなく、滑らせるように逸らす。ロイドの攻撃が空を切り、流れるように次の一手へと繋がるのを、俺は見極めていた。
「ちっ……ッ!」
苛立ちを滲ませるロイドが双剣を交差させて連撃を仕掛ける。だがその動きにも対応できる。
右の剣が俺の側頭部を狙う。盾の角度を変え、刃を弾きながら逆方向へ誘導する。同時に左の剣が胴を狙ってくるが、それも盾の縁で受け、更にわずかに押し返して間合いを狂わせた。
「なっ……!?」
ロイドの体勢が僅かに崩れた瞬間、俺はさらに前へ出る。大盾の重みを活かし、じわじわとプレッシャーをかけながら、奴の剣を封じ込めていく。
剣士は間合いとリズムを奪われると一気に脆くなる。俺はそれを知っている。たとえ鍛えた肉体が無くなろうと、日々の訓練で積み上げた経験は消えていない。
ロイドの双剣が次の攻撃を繰り出そうとする。だが、俺はその前に盾を押し込み、腕の自由を奪う。ロイドの刃は力が乗る前に潰され、その力を発揮する事が出来ない。
「チッ……この……!」
焦りを感じたロイドが距離を取ろうとする。しかし、それこそが隙。
身軽な双剣使いのバックステップに合わせ、それを上回る速度の踏み込みを行う。踏み出した足が地面に着いた瞬間に両足で飛ぶように進む、盾兵達の使う特殊な歩法だ。重心を低くして滑るように踏み込み、そのまま全身の力を込めて盾を前へと叩きつける。
鈍い衝撃と共に、ロイドの体が弾き飛んだ。
「ぐっ……!」
土煙を上げてロイドが地面を滑る。それを見逃すわけもなく、追撃の大剣を叩き込んだ。
体勢を立て直そうとするロイドの双剣を、俺の大剣が弾き飛ばす。
訓練用の双剣が宙を舞い、皆が見守る中で地面を転がった。
「…………!」
沈黙。
訓練場を囲む冒険者たちも、言葉を失ったように見つめている。
俺は剣を下ろし、息を整えた。
「……終わりだな」
俺の言葉に、ロイドは唇を噛んだまま拳を握りしめていた。
勝負がついた瞬間、見物していた冒険者たちがざわめきだす。
「嘘だろ……ロイドさんが負けるなんて……」
「なんだアイツ、あんな盾の扱い見たこと無いぞ」
「ロイドが一方的に攻めていたはずだ。でも、いつの間にか……」
その驚愕の声の中、フィリアが駆け寄ってきた。
「すごいすごい!ガルド、強いって思ってたけど、ここまでとは!」
彼女は飛び跳ねるように喜び、満面の笑みを浮かべている。
エリスも驚きつつ、落ち着いた口調で言った。
「……驚いたわ。正直、勝てるとは思っていなかった。もしかしたらロイドさんが少し苦戦するかもと思ったのに」
そんな二人の反応を受け、俺は小さく息を吐く。
(戦闘経験は間違いなく俺の培ったものだ。だが、それを勇者の力が後押ししてくれた結果だ。手放しでは喜べないな)
とはいえ、妙に体が軽く動くのが少し気になる。どこかで体ならしておきたいな。
地面に座り込んだロイドは、まだ自分の負けを受け入れられないような表情をしていた。
しかし、やがて苦笑いを浮かべて立ち上がると、大きく息を吐いた。
「……いや、完敗だ。こりゃ俺の方が未熟だったな」
潔く負けを認めた彼に、見物人たちもどよめく。
ロイドは埃を払って俺の前に立つと手を差し出してきた。俺も迷うこと無く手を握る。
「悪かったなガルド。どうやら俺は、お前のことを見くびってたようだ」
「……いいさ。俺もいい経験になった」
ロイドは満足そうに頷いた。案外悪いやつじゃないのかもな。
「エリス。こいつ、C級スタートでいいんじゃないか?」
「え? でも、新人は普通F級から……。いえ、そもそも彼は登録申請すらしていないんです」
エリスが戸惑うと、ロイドは肩をすくめた。
「いいから作っておけ。実力的にはB級でもいいくらいだが、さすがにそこまでは無理だからな。C級が妥当だろ」
エリスは少し考え込み、それから小さく頷く。
「……わかりました。ギルド長に相談してみます」
「いやいや待ってくれ、俺は冒険者になる気は――」
その時、後ろから別のギルド員が駆け寄ってきた。
「ロイドさん、こんなところにいたんですね!」
「ん? どうした?」
「例の魔物です、また目撃情報が入りました!」
「またか……好き勝手暴れやがって」
「例の魔物? この町の近くに何かヤバいのがいるのか?」
ロイドは俺の方を向くと、ニヤリと笑った。
「ガルド、ちょうどいい。お前の実力を見込んで、一緒に来ないか?」
ふふ、俺の実力を見込んでか。
俺が言うべきことは一つだ。分かってるよな?
「その前にフィリアに謝らんかい!」
スパーンッ!ロイドのケツが気持ちのいい音を奏で、飛び上がって崩れ落ちた。
あ、力の加減ミスった。
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