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#01.すれ違い
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最近気付いたことがある。僕は親友のことが、好きだ。
その気持ちが成す形が友情であるのか、恋慕であるのかは分からない。それでも、傍に居て欲しいと思う。他の誰にも取られたくはないと思う。
君の一番が僕であればと思う。
親友はいつも僕の一番近くに居てくれる。それは単に、友達作りが下手な僕に対する同情心なのかもしれない。
それでも誰よりも長い時間を共有していることは間違いなかった。
他の誰よりも多くのことを語り合って、休日には連絡を取り二人で街へ出掛けた。お互いの家へ行き来し、誕生日も共に過ごした。
彼女は、表向きはとても社交的で明るい。校内で友人を見掛けるたびに、その背を目掛けて跳び付き歯の浮くようなセリフを平気で口走る。
第三者の目からすればそれは、おそらく微笑ましい光景と呼べるのだろう。
いつも跳び付いた相手へ気持ちの良い笑顔を向け、とても楽しそうに会話をする。そして、冷めた視線で背を向けると、数歩離れてふと本音を漏らすのだ。
「あー、面倒臭い」
僕はそんな親友が苦手で堪らなかった。きっと先程まで親友と笑顔を向け合っていた彼女たちは、親友にこんな一面があるとは夢にも思っていないのだろう。
僕も彼女たちと同じように、親友の内面に触れていなければこんなに怯えて過ごすことも無かったのだろう。
親友が零す薄暗い本音が、僕に向けられているように錯覚してしまうのだ。
親友の心の中に僕が居たのなら、親友の一番の存在が僕であったなら、こんなことを感じずに済むのだろうか。そんな都合のいいことがあるはずがないと、十分に理解はしていた。
しかし、どこかで期待している自分も感じていた。
親友がこうして本音を打ち明けるのも、親友の嘘を見抜けるのも、僕だけだ。
そう思っていた。慢心していたのだと思う。
帰り道、僕は隣を歩く親友へ尋ねた。
「愛羅ちゃん、ひとつ聞いてもいい?」
「うん、なあに」
相変わらず柔らかいトーンで言葉を繰り出す親友に、安心と不安を抱いた。
「僕のこと、好き?」
一瞬にして彼女の表情が曇るのに気が付いた。親友は瞬時にいつもの笑顔を作り上げるが、その顔はやはりぎこちない。
震える声で彼女は答えた。
「美桜の次くらいに好きかな……」
正直に言えば、少し傷ついた。
美桜とは、同じ演劇部に所属している同級生で、親友とはいつも趣味の話で盛り上がっている仲だった。確かに二人は普段から距離も近く、ここ数か月で親友が一番スキンシップを取っていた相手といえば、美桜だろう。
僕はそんな二人の関係を見ているのが、とても辛かった。
二年に進級してから親友の後を追うように演劇部へと入部した僕は、その当時の二人がそれ程までに仲が良いとは感じて居なかった。
単に、知らなかっただけなのかもしれない。それでも、今の二人の距離感とは明らかに違っていた。
だから、余計に傷ついた。心のどこかでは、負けるはずがないと思っていたのかもしれない。
しかしそれはただの欲でしかなく、親友の想いの中に僕が入る隙など、存在しないのだ。
必死で明るく振る舞った。傷ついたこと、一番でありたいと願っていたことを、悟られないように。
「思ってたより上位だった! 愛羅ちゃんって誰のことも好きじゃなさそうだから、ちょっとびっくりした」
何故だろうか、親友の顔がまっすぐに見られなかった。下手な嘘を見抜かれるのが怖いためだろうか、目を合わせると涙が流れてしまいそうな気がした。
「……私は伊咲のこと、普通に好きだよ」
突然、親友が告げた。反射的に見上げたその顔は真剣そのもので、胸の奥がズキリと痛んだ。
きっと深い意味なんてない。友達として、友達の中でも二番目に、僕のことが好きなのだ。
期待をしてしまいたくなかった。ここで素直に受け取ってしまえば、傷つくと思った。
何を返せばこの距離を、この関係を、お互いの心を壊さずに済むのか。そんなことを考える余裕すら、今の僕には無かった。
「そんなの……勘違いだよ。僕なんかのこと好きになるわけないでしょ」
親友に、というよりは、期待してしまいそうな自分に向けた言葉だった。いつものように明るく冗談を言って、この気持ちごと笑い飛ばして欲しい。
そんな願いは惜しくも叶わなかった。
「勘違いなんかじゃないよ……」
そう呟いた親友の表情は、とても切なげだった。
最近気付いたことがある。僕は親友のことが、好きだ。
その気持ちが成す形が友情であるのか、恋慕であるのかは分からない。それでも、傍に居て欲しいと思う。他の誰にも取られたくはないと思う。
君の一番が僕であればと思う。
親友はいつも僕の一番近くに居てくれる。それは単に、友達作りが下手な僕に対する同情心なのかもしれない。
それでも誰よりも長い時間を共有していることは間違いなかった。
他の誰よりも多くのことを語り合って、休日には連絡を取り二人で街へ出掛けた。お互いの家へ行き来し、誕生日も共に過ごした。
彼女は、表向きはとても社交的で明るい。校内で友人を見掛けるたびに、その背を目掛けて跳び付き歯の浮くようなセリフを平気で口走る。
第三者の目からすればそれは、おそらく微笑ましい光景と呼べるのだろう。
いつも跳び付いた相手へ気持ちの良い笑顔を向け、とても楽しそうに会話をする。そして、冷めた視線で背を向けると、数歩離れてふと本音を漏らすのだ。
「あー、面倒臭い」
僕はそんな親友が苦手で堪らなかった。きっと先程まで親友と笑顔を向け合っていた彼女たちは、親友にこんな一面があるとは夢にも思っていないのだろう。
僕も彼女たちと同じように、親友の内面に触れていなければこんなに怯えて過ごすことも無かったのだろう。
親友が零す薄暗い本音が、僕に向けられているように錯覚してしまうのだ。
親友の心の中に僕が居たのなら、親友の一番の存在が僕であったなら、こんなことを感じずに済むのだろうか。そんな都合のいいことがあるはずがないと、十分に理解はしていた。
しかし、どこかで期待している自分も感じていた。
親友がこうして本音を打ち明けるのも、親友の嘘を見抜けるのも、僕だけだ。
そう思っていた。慢心していたのだと思う。
帰り道、僕は隣を歩く親友へ尋ねた。
「愛羅ちゃん、ひとつ聞いてもいい?」
「うん、なあに」
相変わらず柔らかいトーンで言葉を繰り出す親友に、安心と不安を抱いた。
「僕のこと、好き?」
一瞬にして彼女の表情が曇るのに気が付いた。親友は瞬時にいつもの笑顔を作り上げるが、その顔はやはりぎこちない。
震える声で彼女は答えた。
「美桜の次くらいに好きかな……」
正直に言えば、少し傷ついた。
美桜とは、同じ演劇部に所属している同級生で、親友とはいつも趣味の話で盛り上がっている仲だった。確かに二人は普段から距離も近く、ここ数か月で親友が一番スキンシップを取っていた相手といえば、美桜だろう。
僕はそんな二人の関係を見ているのが、とても辛かった。
二年に進級してから親友の後を追うように演劇部へと入部した僕は、その当時の二人がそれ程までに仲が良いとは感じて居なかった。
単に、知らなかっただけなのかもしれない。それでも、今の二人の距離感とは明らかに違っていた。
だから、余計に傷ついた。心のどこかでは、負けるはずがないと思っていたのかもしれない。
しかしそれはただの欲でしかなく、親友の想いの中に僕が入る隙など、存在しないのだ。
必死で明るく振る舞った。傷ついたこと、一番でありたいと願っていたことを、悟られないように。
「思ってたより上位だった! 愛羅ちゃんって誰のことも好きじゃなさそうだから、ちょっとびっくりした」
何故だろうか、親友の顔がまっすぐに見られなかった。下手な嘘を見抜かれるのが怖いためだろうか、目を合わせると涙が流れてしまいそうな気がした。
「……私は伊咲のこと、普通に好きだよ」
突然、親友が告げた。反射的に見上げたその顔は真剣そのもので、胸の奥がズキリと痛んだ。
きっと深い意味なんてない。友達として、友達の中でも二番目に、僕のことが好きなのだ。
期待をしてしまいたくなかった。ここで素直に受け取ってしまえば、傷つくと思った。
何を返せばこの距離を、この関係を、お互いの心を壊さずに済むのか。そんなことを考える余裕すら、今の僕には無かった。
「そんなの……勘違いだよ。僕なんかのこと好きになるわけないでしょ」
親友に、というよりは、期待してしまいそうな自分に向けた言葉だった。いつものように明るく冗談を言って、この気持ちごと笑い飛ばして欲しい。
そんな願いは惜しくも叶わなかった。
「勘違いなんかじゃないよ……」
そう呟いた親友の表情は、とても切なげだった。
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