6 / 17
6.勝負
しおりを挟む
翌日、会社の給湯室にあるスペースでコーヒーを飲んでいた叶斗は、近づいて来た人物に自然と体がこわばるのを感じた。
昨日はその後、村瀬がシャワーを浴びている隙に思うように動かない体をなんとか動かして帰宅した。
なるべくなら顔を合わせたくないが、同じ部署である以上避けられない。
ましてや少しでも考えないようにしたくてこうして休憩をとっても、向こうからやってくるのではどうしようもないのだ。
「昨日は1人で帰ってしまうなんてひどいじゃないですか」
「……」
飄々とした態度で声をかけてくる村瀬に、叶斗は視線だけをチラッと寄こし、関わりたくないと顔をそらす。
立ち休憩用のハイテーブルに手を置き、高い身長をかがめて叶斗の顔を覗き込む村瀬は笑みを絶やさないまま、恐ろしいことを告げて来た。
「今後も俺が望んだときには付き合ってくださいね」
「…誰が…っ!」
思わず声が大きくなったが、幸い同じ空間に他に人はいない。
怒りと衝撃により村瀬の顔を見つめた叶斗は、その整った美貌を心底嫌そうに歪めた。
だが村瀬はそんな叶斗の顎を手で上向かせると、反対の手で自分のスマホをかかげる。
「昨日の写真、流出されてもいいんですか?」
「…っな…!?」
思いがけない言葉に、叶斗の目は見開かれたまま固まる。
(え…?嘘だろ…いつ撮られたんだ…?)
正直最中は途中から意識がはっきりしていたかと聞かれると微妙だ。
終わった後も少しの時間だが気を失うような、意識が遠のく感覚があった。
(でもさすがにカメラを向けられてたら気づく…よな…?)
「嘘だと思うならあなたのパソコンにメールで送っても良いですけど」
「…いらない」
社用のパソコンになんて送られて、万が一バレたらまずいのは村瀬も同じだろうに。
それほどのリスクを犯してでも自分を追い詰めたいのだろうか…。叶斗はショックを隠せないまま写真という絶望感に表情を暗くさせる。
憂を帯びて庇護欲の掻き立てられる叶斗の表情をじっと見つめ、村瀬はどうしようもなく抱きしめたい衝動をなんとか抑えていた。
あれから2週間。
写真で脅されている叶斗は、村瀬の気が向いた時に呼び出されては体を繋ぐ行為を繰り返していた。
車で出勤している村瀬によって、2回目以降は彼の家に連れ込まれる。
2年前とは乗る車も住んでる家も変わっており、明らかに以前よりもランクの上がった暮らしを叶斗は見せつけられていた。
そしてベッドの上では叶斗がどれだけ嫌がってもお構いなしだ。
(恨まれているんだろうな)
脅してまで自分を支配下に置きたいのはそういうことなのだろう。
行為の最中は感じているのを自覚させるような動きが多い。
さらに1回では終わらないことも多く、結局最後は訳がわからなくなった叶斗が泣を入れるまで続くこともしばしばだ。
以前言いなりにされていた時の恨みを叶斗を征服することで晴らしているのだろうか…
最近はそう思うようになってきて、いつまでこの状況が続くのだろうかと不安になる。
(胃が痛い……)
これ以上は心身共に耐えられない。そこまで追い詰められた叶斗はここで一つ賭けに出ることを決めた。
「1週間の利益幅で勝負、ですか?」
事後のベッドの上、まだ十分に足腰が立たない叶斗だが、なんとか座った状態で姿勢をただし、村瀬に勝負のことを持ちかけた。
シーツを巻きつけた状態というのがなんとも悲しいが、村瀬が服を寄越してくれないのだから仕方ない。
「この勝負で俺が勝ったら、写真を消去してこういうことは2度としないでほしい」
「俺が勝ったら?」
「……もし望みがあるならそれに従う」
村瀬はこの2年、大層なキャリアを積んできたという自信があるだろう。
目に見える形で叶斗を屈服させられる機会があるのなら乗ってくるのではないか、と叶斗は考えていた。
そして案の定。
「良いですよ。望みは1週間後までに考えておきます。
この1週間は夜のお誘いもなしにしてあげますよ」
(…ふぅ…)
これは叶斗にとっても賭けだ。
部署内の成績1位は叶斗であるし、村瀬にノウハウを教えたという自負もあるが、今の村瀬の実力がわからない以上怖いものもある。
…それでも。この状況を抜け出せる可能性があるならあとは頑張るだけだ。
昨日はその後、村瀬がシャワーを浴びている隙に思うように動かない体をなんとか動かして帰宅した。
なるべくなら顔を合わせたくないが、同じ部署である以上避けられない。
ましてや少しでも考えないようにしたくてこうして休憩をとっても、向こうからやってくるのではどうしようもないのだ。
「昨日は1人で帰ってしまうなんてひどいじゃないですか」
「……」
飄々とした態度で声をかけてくる村瀬に、叶斗は視線だけをチラッと寄こし、関わりたくないと顔をそらす。
立ち休憩用のハイテーブルに手を置き、高い身長をかがめて叶斗の顔を覗き込む村瀬は笑みを絶やさないまま、恐ろしいことを告げて来た。
「今後も俺が望んだときには付き合ってくださいね」
「…誰が…っ!」
思わず声が大きくなったが、幸い同じ空間に他に人はいない。
怒りと衝撃により村瀬の顔を見つめた叶斗は、その整った美貌を心底嫌そうに歪めた。
だが村瀬はそんな叶斗の顎を手で上向かせると、反対の手で自分のスマホをかかげる。
「昨日の写真、流出されてもいいんですか?」
「…っな…!?」
思いがけない言葉に、叶斗の目は見開かれたまま固まる。
(え…?嘘だろ…いつ撮られたんだ…?)
正直最中は途中から意識がはっきりしていたかと聞かれると微妙だ。
終わった後も少しの時間だが気を失うような、意識が遠のく感覚があった。
(でもさすがにカメラを向けられてたら気づく…よな…?)
「嘘だと思うならあなたのパソコンにメールで送っても良いですけど」
「…いらない」
社用のパソコンになんて送られて、万が一バレたらまずいのは村瀬も同じだろうに。
それほどのリスクを犯してでも自分を追い詰めたいのだろうか…。叶斗はショックを隠せないまま写真という絶望感に表情を暗くさせる。
憂を帯びて庇護欲の掻き立てられる叶斗の表情をじっと見つめ、村瀬はどうしようもなく抱きしめたい衝動をなんとか抑えていた。
あれから2週間。
写真で脅されている叶斗は、村瀬の気が向いた時に呼び出されては体を繋ぐ行為を繰り返していた。
車で出勤している村瀬によって、2回目以降は彼の家に連れ込まれる。
2年前とは乗る車も住んでる家も変わっており、明らかに以前よりもランクの上がった暮らしを叶斗は見せつけられていた。
そしてベッドの上では叶斗がどれだけ嫌がってもお構いなしだ。
(恨まれているんだろうな)
脅してまで自分を支配下に置きたいのはそういうことなのだろう。
行為の最中は感じているのを自覚させるような動きが多い。
さらに1回では終わらないことも多く、結局最後は訳がわからなくなった叶斗が泣を入れるまで続くこともしばしばだ。
以前言いなりにされていた時の恨みを叶斗を征服することで晴らしているのだろうか…
最近はそう思うようになってきて、いつまでこの状況が続くのだろうかと不安になる。
(胃が痛い……)
これ以上は心身共に耐えられない。そこまで追い詰められた叶斗はここで一つ賭けに出ることを決めた。
「1週間の利益幅で勝負、ですか?」
事後のベッドの上、まだ十分に足腰が立たない叶斗だが、なんとか座った状態で姿勢をただし、村瀬に勝負のことを持ちかけた。
シーツを巻きつけた状態というのがなんとも悲しいが、村瀬が服を寄越してくれないのだから仕方ない。
「この勝負で俺が勝ったら、写真を消去してこういうことは2度としないでほしい」
「俺が勝ったら?」
「……もし望みがあるならそれに従う」
村瀬はこの2年、大層なキャリアを積んできたという自信があるだろう。
目に見える形で叶斗を屈服させられる機会があるのなら乗ってくるのではないか、と叶斗は考えていた。
そして案の定。
「良いですよ。望みは1週間後までに考えておきます。
この1週間は夜のお誘いもなしにしてあげますよ」
(…ふぅ…)
これは叶斗にとっても賭けだ。
部署内の成績1位は叶斗であるし、村瀬にノウハウを教えたという自負もあるが、今の村瀬の実力がわからない以上怖いものもある。
…それでも。この状況を抜け出せる可能性があるならあとは頑張るだけだ。
62
あなたにおすすめの小説
黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~
ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。
転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。
朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。
生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。
どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。
忙しい大人の甘いオフィスラブ。
フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!
永川さき
BL
魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。
ただ、その食事風景は特殊なもので……。
元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師
まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。
他サイトにも掲載しています。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
陥落 ー おじさま達に病愛されて ー
ななな
BL
眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。
国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる