6 / 36
6.第2王子レオン・ローゼンタール
しおりを挟む俺はこの国の第2王子だ。
今日は俺と同年代の子が集められて親睦を目的としたお茶会が開催されるらしい。
どうせ貴族の子どもが多く所属する学園にゆくゆくは入るのだし、このタイミングでやる必要があるのだろうか。
めんどくさくてしょうがないが、親の決めたことや慣例に逆らう方がもっとめんどくさいのでとりあえずはこなすしかないだろう。
そうして始まったお茶会は、案の定時間の無駄と思われるものだった。
我先にと挨拶に来られてもどれも印象に残らない者ばかりで、人として魅力を感じることがない。
ましてや近くに残ってこちらに熱い視線を送ってくる者たちからはなんとなく不快感すら感じる。
今までの短い人生の中で何かに執着したり自分から興味を持つことがなかったので、こんなものだろうと時間が過ぎるのを待っていた。
不意に、視界の端に金に輝く髪が目に入った。
プラチナゴールドの髪は柔らかそうに、小さい頭を覆っている。
静かに佇んでいる彼の顔を見て、こんなに目を惹かれることがあるだろうかと思うほど無意識に見つめていた。
不意に、彼と目が合う。
ここからでもわかる碧色の目は大きく、陶器のような滑らかそうな肌は触りたくなる。
彼はほんの一瞬、普通の人では気づかないだろうわずかな変化だが顔を曇らせた。
まるで俺と目が合ったのがまずかったような反応だ。
(…ふーん?)
そんな反応をされたのは初めてだ。
目を逸らされた後もずっと彼のかわいい顔を見つめ続ける。
早く挨拶に来い、そんな思いをこめて。
ここまですれば彼も来ざるを得ないだろう。
そして実際に目の前に来た彼は、うっとりするほどかわいかった。
「こんにちは。レオンでんか。
ルーズヴェルト家次男のノエル・ルーズヴェルトともうします。
このたびはしょうたいしていただき光栄です」
その小さな口から発せられる声は心地良く、他の者のように色を含んでいない。
つたないながらも落ち着いた口調に、ずっと聞いていたくなるほどだ。
こちらも挨拶を返しながら、ふとルーズヴェルト家のノエル?と記憶を掘り返す。
確か、わがまま放題、癇癪持ちで公爵家であるルーズヴェルト家を持ってしても手をつけられないほどのひどい性格だと聞いている。
だが、目の前の彼からはそんな雰囲気を感じず、どういうことだろうかと不思議に思う。
こちらがずっと見つめていると、居心地が悪かったのか彼は表情のなかった顔に控えめに笑みを乗せる。
「…っ」
天使…!!
ただでさえかわいい彼は、微笑むとそれはもう天使と見間違えるほどで。
周りからも息を呑む雰囲気が伝わって来て、この顔を見ているのが自分だけではないことを悔しく思う。
早々に立ち去ろうとする彼を思わず引き止め、今後につなげたくてなんとか言葉を交わす。
これが一目惚れか。
強烈な出会いに心の底から神に感謝した。
それから数年。
ノエルも自分も少しずつ成長しているが、彼のかわいくも美しい姿は変わらず、むしろ磨きがかかって来ているように感じる。
お茶会は数回に1回しか来てくれず、他はもっともらしい理由をつけて断られている。
来た時も結局少ししか話すことができず。
そして彼は相変わらず傲慢で気性が荒いという噂が絶えない。
最近は人を貶めて楽しんでるとか、その美しさを利用して自分の駒となる人材を増やし、自分の手を汚さないようにしているなどの話も聞く。
会った時は穏やかそうな、静かな雰囲気しか感じないが、表の顔と上手く使いこなしていると言われればありえなくもなさそうだ。
なかなか自分の思い通りに距離を詰められないこと、話に聞く彼の性格の歪みが美しい外見をカバーできないほどに酷いことから、だんだん彼に対する恋の感情が憎いという感情に近くなってきている。
もう彼のことは諦めよう。
下手に近づいて自分まで駒の一つにされても敵わないからな…
こうして自分を無理やり納得させ、交流は徐々に減っていった。
1,167
あなたにおすすめの小説
悪役令息上等です。悪の華は可憐に咲き誇る
竜鳴躍
BL
異性間でも子どもが産まれにくくなった世界。
子どもは魔法の力を借りて同性間でも産めるようになったため、性別に関係なく結婚するようになった世界。
ファーマ王国のアレン=ファーメット公爵令息は、白銀に近い髪に真っ赤な瞳、真っ白な肌を持つ。
神秘的で美しい姿に王子に見初められた彼は公爵家の長男でありながら唯一の王子の婚約者に選ばれてしまった。どこに行くにも欠かせない大きな日傘。日に焼けると爛れてしまいかねない皮膚。
公爵家は両親とも黒髪黒目であるが、彼一人が色が違う。
それは彼が全てアルビノだったからなのに、成長した教養のない王子は、アレンを魔女扱いした上、聖女らしき男爵令嬢に現を抜かして婚約破棄の上スラム街に追放してしまう。
だが、王子は知らない。
アレンにも王位継承権があることを。
従者を一人連れてスラムに行ったアレンは、イケメンでスパダリな従者に溺愛されながらスラムを改革していって……!?
*誤字報告ありがとうございます!
*カエサル=プレート 修正しました。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
彼はやっぱり気づかない!
水場奨
BL
さんざんな1日を終え目を覚ますと、そこは漫画に似た世界だった。
え?もしかして俺、敵側の端役として早々に死ぬやつじゃね?
死亡フラグを回避して普通に暮らしたい主人公が気づかないうちに主人公パートを歩み始めて、周りをかき回しながら生き抜きます。
婚約者の前で奪われる!?王太子が僕の番だった夜
侑
BL
僕は辺境伯家の嫡男レオン・グレイスフィールド。
婚約者・隣国カリスト王国の辺境伯家、リリアナの社交界デビューに付き添うため、隣国の王都に足を踏み入れた。
しかし、王家の祝賀の列に並んだその瞬間、僕の運命は思わぬ方向へ。
王族として番に敏感な王太子が、僕を一目で見抜き、容赦なく迫ってくる。
転生者で、元女子大生の僕にはまだ理解できない感覚。
リリアナの隣にいるはずなのに、僕は気づけば王太子殿下に手を握られて……
婚約者の目の前で、運命の番に奪われる夜。
仕事の関係上、あまり創作活動ができず、1話1話が短くなっています。
2日に1話ぐらいのペースで更新できたらいいなと思っています。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~
水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった!
「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。
そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。
「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。
孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる