断罪回避のはずが、第2王子に捕まりました

ちとせ

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6.第2王子レオン・ローゼンタール

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俺はこの国の第2王子だ。

今日は俺と同年代の子が集められて親睦を目的としたお茶会が開催されるらしい。

どうせ貴族の子どもが多く所属する学園にゆくゆくは入るのだし、このタイミングでやる必要があるのだろうか。

めんどくさくてしょうがないが、親の決めたことや慣例に逆らう方がもっとめんどくさいのでとりあえずはこなすしかないだろう。

そうして始まったお茶会は、案の定時間の無駄と思われるものだった。

我先にと挨拶に来られてもどれも印象に残らない者ばかりで、人として魅力を感じることがない。
ましてや近くに残ってこちらに熱い視線を送ってくる者たちからはなんとなく不快感すら感じる。

今までの短い人生の中で何かに執着したり自分から興味を持つことがなかったので、こんなものだろうと時間が過ぎるのを待っていた。


不意に、視界の端に金に輝く髪が目に入った。
プラチナゴールドの髪は柔らかそうに、小さい頭を覆っている。

静かに佇んでいる彼の顔を見て、こんなに目を惹かれることがあるだろうかと思うほど無意識に見つめていた。


不意に、彼と目が合う。

ここからでもわかる碧色の目は大きく、陶器のような滑らかそうな肌は触りたくなる。

彼はほんの一瞬、普通の人では気づかないだろうわずかな変化だが顔を曇らせた。
まるで俺と目が合ったのがまずかったような反応だ。

(…ふーん?)

そんな反応をされたのは初めてだ。
目を逸らされた後もずっと彼のかわいい顔を見つめ続ける。

早く挨拶に来い、そんな思いをこめて。

ここまですれば彼も来ざるを得ないだろう。
そして実際に目の前に来た彼は、うっとりするほどかわいかった。

「こんにちは。レオンでんか。
ルーズヴェルト家次男のノエル・ルーズヴェルトともうします。
このたびはしょうたいしていただき光栄です」

その小さな口から発せられる声は心地良く、他の者のように色を含んでいない。
つたないながらも落ち着いた口調に、ずっと聞いていたくなるほどだ。

こちらも挨拶を返しながら、ふとルーズヴェルト家のノエル?と記憶を掘り返す。

確か、わがまま放題、癇癪持ちで公爵家であるルーズヴェルト家を持ってしても手をつけられないほどのひどい性格だと聞いている。

だが、目の前の彼からはそんな雰囲気を感じず、どういうことだろうかと不思議に思う。

こちらがずっと見つめていると、居心地が悪かったのか彼は表情のなかった顔に控えめに笑みを乗せる。

「…っ」

天使…!!

ただでさえかわいい彼は、微笑むとそれはもう天使と見間違えるほどで。

周りからも息を呑む雰囲気が伝わって来て、この顔を見ているのが自分だけではないことを悔しく思う。

早々に立ち去ろうとする彼を思わず引き止め、今後につなげたくてなんとか言葉を交わす。

これが一目惚れか。

強烈な出会いに心の底から神に感謝した。










それから数年。

ノエルも自分も少しずつ成長しているが、彼のかわいくも美しい姿は変わらず、むしろ磨きがかかって来ているように感じる。

お茶会は数回に1回しか来てくれず、他はもっともらしい理由をつけて断られている。

来た時も結局少ししか話すことができず。


そして彼は相変わらず傲慢で気性が荒いという噂が絶えない。
最近は人をおとしめて楽しんでるとか、その美しさを利用して自分の駒となる人材を増やし、自分の手を汚さないようにしているなどの話も聞く。

会った時は穏やかそうな、静かな雰囲気しか感じないが、表の顔と上手く使いこなしていると言われればありえなくもなさそうだ。

なかなか自分の思い通りに距離を詰められないこと、話に聞く彼の性格の歪みが美しい外見をカバーできないほどに酷いことから、だんだん彼に対する恋の感情が憎いという感情に近くなってきている。

もう彼のことは諦めよう。

下手に近づいて自分まで駒の一つにされても敵わないからな…

こうして自分を無理やり納得させ、交流は徐々に減っていった。
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