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第1話 ニート王子、外に出る
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俺の名前はシン。王国の序列で第四位の王子だ。
剣も魔法も苦手で、家族や臣下からは役立たずと見なされ、陰で「ニート王子」と呼ばれている。
だが、ニートといえど、三ヶ月に一回あるかないかの公務だけは致し方なくやることにしている。これも王族の務めだからな。嫌々だが、逃げられない。
とはいえ、今回は特に面倒な仕事だった。
何日も馬車に揺られ、王都から遠く離れた辺境の地方で開催されている万国博覧会を、数日かけて視察するというものだ。
正直、これには俺を遠ざけたいという“厄介払い”的な意図も込められている気がする。いや、まず間違いない。
幾度となく馬車の揺れに身を任せながら、俺はそんな複雑な思いを抱いていた。
「これが終わったら、また城に戻れるのか?」
自分にそう問いかけるが、答えは誰も知らない。
やっと目的地にたどり着いた俺を迎えたのは、冷え切った視線の民衆たちだった。
歓声どころか、彼らの目には好奇と失望が同居していて、俺の噂を裏付けるように小声が飛び交う。
「ニート王子が、こんな辺境まで……?」
「見物だな。何しに来たんだか」
その声に、俺は苦笑いを浮かべて答える。
「ごきげんよう。今日は皆の声を聞きに来た――」
言葉は形式的なものだった。内心では、ただこの公務が早く終わってくれることだけを願っていた。
万国博覧会の開催式では長々とした演説を聞かされ、
地元料理を少しだけつまんで、文化品の展示をそれらしく眺めた。
そして最後に、町の広場で国民向けのスピーチをする流れになっていた。
その最中突然一人の男が俺に向かって走ってきた。
「税金泥棒!ニート王子を殺す!!!」叫び、小刀を振りかざす。
「っ…!」
避けようとしたが背後から来たため間に合わず、鋭い刃が俺の背中に刺さった。
冷たい痛みと共に血が流れ出すのを感じたが、その瞬間、体の奥で何か熱いものが目覚めた。
俺が知らなかった、隠された力が――。
剣も魔法も苦手で、家族や臣下からは役立たずと見なされ、陰で「ニート王子」と呼ばれている。
だが、ニートといえど、三ヶ月に一回あるかないかの公務だけは致し方なくやることにしている。これも王族の務めだからな。嫌々だが、逃げられない。
とはいえ、今回は特に面倒な仕事だった。
何日も馬車に揺られ、王都から遠く離れた辺境の地方で開催されている万国博覧会を、数日かけて視察するというものだ。
正直、これには俺を遠ざけたいという“厄介払い”的な意図も込められている気がする。いや、まず間違いない。
幾度となく馬車の揺れに身を任せながら、俺はそんな複雑な思いを抱いていた。
「これが終わったら、また城に戻れるのか?」
自分にそう問いかけるが、答えは誰も知らない。
やっと目的地にたどり着いた俺を迎えたのは、冷え切った視線の民衆たちだった。
歓声どころか、彼らの目には好奇と失望が同居していて、俺の噂を裏付けるように小声が飛び交う。
「ニート王子が、こんな辺境まで……?」
「見物だな。何しに来たんだか」
その声に、俺は苦笑いを浮かべて答える。
「ごきげんよう。今日は皆の声を聞きに来た――」
言葉は形式的なものだった。内心では、ただこの公務が早く終わってくれることだけを願っていた。
万国博覧会の開催式では長々とした演説を聞かされ、
地元料理を少しだけつまんで、文化品の展示をそれらしく眺めた。
そして最後に、町の広場で国民向けのスピーチをする流れになっていた。
その最中突然一人の男が俺に向かって走ってきた。
「税金泥棒!ニート王子を殺す!!!」叫び、小刀を振りかざす。
「っ…!」
避けようとしたが背後から来たため間に合わず、鋭い刃が俺の背中に刺さった。
冷たい痛みと共に血が流れ出すのを感じたが、その瞬間、体の奥で何か熱いものが目覚めた。
俺が知らなかった、隠された力が――。
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