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プロローグ:末路
プロローグ
ある冬の終わり。ニクシア第一研究所、研究員棟にて。
ドンドン
「おーい、いるか?」
ドンドン
「……開けるからな。」
ギィ、と扉が音を立てる。明かりのない真っ暗な部屋には、足の踏み場もないほど物が散乱していた。
刺激臭が鼻をつく。私は持っていたハンカチで鼻を覆った。
部屋の奥には、青白く光るディスプレイの前に座る人影が見える。彼女だ。
「おい。」
肩に手を置けば、彼女は大きく肩を震わせる。
「あ、え……ツカツキさん……」
ぱちくりと瞬きをするその目元には濃い隈が蓄えられていた。べたつく前髪をはらいながら挙動不審に私を見上げるその姿には、初めて会ったときのあのフレッシュさはかけらも感じられなかった。
「あ、あの……どうかされましたか?」
「どうかしたじゃない。君は何週間無断に欠勤しているんだ。ここの規則は入社時にみっちりと叩き込んだはずだが?」
カツカツと机を叩けば、彼女はそれに合わせて顔をこわばらせていく。
しかしどうしてもディスプレイからは目を離したくないようで、ひきつった笑みを浮かべながらチラチラと画面を確認している。
私は大きくため息を吐いた。
「まあいい、今日は君に話があって来たんだ。」
「は、はい……何でしょうか。」
「君はクビだ。」
ただでさえ大きな目が、さらに大きく開かれる。
「い、いやです……」
「君に、拒否権があるとでも?」
「……」
必死に何か打開策でも考えているのか、一点を見つめ彼女は黙りこくっている。だが、もう遅い。上の奴らは随分我慢強く見逃してくれた。半年前にその甘い誘惑を振り払えていれば、話は違っただろう。
「まあそういうわけで、これももう回収だ。」
「……!!」
椅子から動かない彼女を蹴とばして退かす。大きな音と共に空のプラスチックボトルがそこら中に散乱した。
未だ映像を流し続けるコンピューターに手を伸ばせば、彼女は物凄い勢いで私の手に飛びついた。
「いやです!!それは、それだけは!!」
「嫌と言われてもなぁ……これは研究所の重要なデータなんだが?」
彼女は聞かない。まるで大切な娘を取られそうになり「娘だけは!!」なんて命乞いをする親みたいに、私に縋り付いて離れない。
ああ、面倒くさいな。本当に。
私は懐にしまっていた拳銃を取り出して、引き金を引いた。
派手は発砲音がひとつ鳴り響いた後、あたりは静寂に包まれた。
ずるりと、彼女が崩れ落ちる。私の清潔な白衣に赤い跡が大きく残った。
「はあ、洗濯しなきゃな。」
思わず舌打ちをする。動かなくなった彼女を蹴飛ばして、コンピュータに手をかける。
青白く光るディスプレイには彼女が夢中になって見ていた秘め事が鮮明に映し出されていた。
担当した職員を次々と狂わせる双子のキメラ。彼女は六人目の担当者だった。
「まったく。これの何が奴らを夢中にさせるんだか。」
気持ちわりぃ。
私は電源ボタンを押す。
ディスプレイに映し出されていた異常な光景は、ぶつりと途切れて消えた。
ある冬の終わり。ニクシア第一研究所、研究員棟にて。
ドンドン
「おーい、いるか?」
ドンドン
「……開けるからな。」
ギィ、と扉が音を立てる。明かりのない真っ暗な部屋には、足の踏み場もないほど物が散乱していた。
刺激臭が鼻をつく。私は持っていたハンカチで鼻を覆った。
部屋の奥には、青白く光るディスプレイの前に座る人影が見える。彼女だ。
「おい。」
肩に手を置けば、彼女は大きく肩を震わせる。
「あ、え……ツカツキさん……」
ぱちくりと瞬きをするその目元には濃い隈が蓄えられていた。べたつく前髪をはらいながら挙動不審に私を見上げるその姿には、初めて会ったときのあのフレッシュさはかけらも感じられなかった。
「あ、あの……どうかされましたか?」
「どうかしたじゃない。君は何週間無断に欠勤しているんだ。ここの規則は入社時にみっちりと叩き込んだはずだが?」
カツカツと机を叩けば、彼女はそれに合わせて顔をこわばらせていく。
しかしどうしてもディスプレイからは目を離したくないようで、ひきつった笑みを浮かべながらチラチラと画面を確認している。
私は大きくため息を吐いた。
「まあいい、今日は君に話があって来たんだ。」
「は、はい……何でしょうか。」
「君はクビだ。」
ただでさえ大きな目が、さらに大きく開かれる。
「い、いやです……」
「君に、拒否権があるとでも?」
「……」
必死に何か打開策でも考えているのか、一点を見つめ彼女は黙りこくっている。だが、もう遅い。上の奴らは随分我慢強く見逃してくれた。半年前にその甘い誘惑を振り払えていれば、話は違っただろう。
「まあそういうわけで、これももう回収だ。」
「……!!」
椅子から動かない彼女を蹴とばして退かす。大きな音と共に空のプラスチックボトルがそこら中に散乱した。
未だ映像を流し続けるコンピューターに手を伸ばせば、彼女は物凄い勢いで私の手に飛びついた。
「いやです!!それは、それだけは!!」
「嫌と言われてもなぁ……これは研究所の重要なデータなんだが?」
彼女は聞かない。まるで大切な娘を取られそうになり「娘だけは!!」なんて命乞いをする親みたいに、私に縋り付いて離れない。
ああ、面倒くさいな。本当に。
私は懐にしまっていた拳銃を取り出して、引き金を引いた。
派手は発砲音がひとつ鳴り響いた後、あたりは静寂に包まれた。
ずるりと、彼女が崩れ落ちる。私の清潔な白衣に赤い跡が大きく残った。
「はあ、洗濯しなきゃな。」
思わず舌打ちをする。動かなくなった彼女を蹴飛ばして、コンピュータに手をかける。
青白く光るディスプレイには彼女が夢中になって見ていた秘め事が鮮明に映し出されていた。
担当した職員を次々と狂わせる双子のキメラ。彼女は六人目の担当者だった。
「まったく。これの何が奴らを夢中にさせるんだか。」
気持ちわりぃ。
私は電源ボタンを押す。
ディスプレイに映し出されていた異常な光景は、ぶつりと途切れて消えた。
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