化天のうち

烈風

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尾張統一編

連戦

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「父上……大丈夫ですか…」

信長が心配そうに信秀に問いかける

「心配ない……じきに治るさ…」

この頃信秀は病に伏すことが多くなっていた

「………(この状態が続くとまずい…)」

「………(既に病のことは国中に知れ渡っている……このままでは……しかし…)」

信秀が病に伏しているとわかれば、反旗を翻すものが出るやもしれないと信長は懸念していたのだ

「……それと信長…話があるのだ……」

信秀が信長を近づけさせる

「…………」


那古野城下

「なんだありゃ…」

あたりが騒然となる

それもそのはずである、城主である信長が乱れた服装をし、人に寄りかかり、人目も寄らず柿を食べながら歩いているのである。

「殿の病が憑って阿呆になったか」と人々は嘲笑った



「殿……」

平手政秀が信長に神妙な様子で話しかける

「なんだ、爺」

「近頃のお様子は何です…」

「様子とはなんだ」

「自覚がございませぬのか……服装を乱し、人目も気にせず歩きながら物を食べ……殿がなんと言われているかお分かりですか……」

「なんと呼ばれておるのだ」

「尾張一の大うつけと…」

信長はそう聞くと声を出し笑い、部屋を後にした

「どうなされたのですか……前まであんなに真面目でおられたのに…」

平手は無念そうに拳を握った


末盛城 

療養中の信秀のもとに報が舞い込む 

[犬山の織田信清、挙兵]

信秀はその報を聞くやすぐさま戦支度を始めた

「殿!その体では無理です!」

「国中のものがワシの動きに注目しておる……ここで出陣せねばワシが重病だと悟り、野心を持つものが謀反を起こす」

「さあ行くぞ、尾張の虎最後の戦いだ…」

信秀軍と信清軍は井口の地にて激突

しかし兵の練度も指揮官の能力も信秀軍に劣る信清軍は瞬く間に崩され敗走を開始した

このことは直ぐに尾張や近隣諸国に伝わった
 
……しかしこの無理もたかってか

天文二十一年 三月三日

尾張の虎と恐れられた織田信秀 死去
享年四二歳であった

信秀の葬儀には国中の僧や諸国往来中の僧を三百名ほど招き入れ、家臣一同が集まる盛大なものとなった

この時信長は脇差を荒縄で巻き、髪も正さず、袴もはかずに現れた

そして仏前に立ち焼香を鷲掴みにしそれを投げつけ帰っていった


「やはり…うつけであったか……これでは織田弾正忠家も長くはあるまい」

「殿……」

「(……大殿…私が不甲斐ないばかりにこのような事になってしまい申し訳ありませぬ……)

平手政秀はこのような混乱の中、切腹してしまった

信長は同時期に父・信秀と重臣・政秀を失った



那古野城  

「殿!鳴海城の山口教継教吉親子が駿河勢を城に招き入れております!」

駿河勢は今川領の者達、そして今川は織田家の敵、つまり山口親子は敵を迎え入れ那古野城側に謀反を起こしたということである

「直ちに出撃する!兵を集めよ」

信長はおよそ800の兵を率いて出撃対する山口勢は1500

信長は三の山、山口勢は赤塚の地に布陣した

「よし……御弓衆に攻撃を開始させろ!」

信長勢は山を下り攻撃を開始した

「はは!馬鹿め自ら地の利を捨てるとは!うつけには戦術の才もないようだな」

山口勢はそう嘲笑っていたが、次第に笑う余裕もなくなっていく

「殿、我らがおされております」

「なんだと!?」

山口勢の先鋒は混乱に陥る


「ハハハ……気づいたか…」

信長はこの戦いに鍛え続けた精鋭部隊の投入、新たに作った長槍を投入(信長勢の槍はおよそ6m 通常の槍は4m)
しかも槍隊を密集させることにより隙をなくす戦術を取っていた。
そして鉄砲隊も投入する等革新的な戦術に山口勢は翻弄される。

しかし兵の差は何ものにも埋め難く、結局引き分けに終わった

その日のうちに捕虜を交換し、互いに帰陣した



「山口め……倍の兵力がありながら負けるだと…?まさか…寝返りは嘘だったのか?」

この後山口親子は今川に呼び出された無理矢理切腹させられる


しかしこの戦いからすぐに事件は起こる

「殿、清洲城の織田信友の軍勢がお味方の城を攻撃しました」

「……直ちに出撃する、末盛の信行にも兵を出すよう伝えい!」

翌日早朝に信長は出撃

庄内川にて信長の叔父である信光の軍勢と合流  

また末森からは信行の家臣、柴田勝家の軍勢が遣わされた

柴田勝家は、後に「鬼柴田」と呼ばれ、数々の武功を残す猛将である

八月十六日、萱津の地にて両軍は激突する

初めは拮抗していたものの次第に信友の軍はおされはじめる

「くっ……押され始めた…」

この戦いで信友軍の指揮を取っていたのは信友の重臣、坂井甚介であった

「殿の名誉にかけて、あのようなうつけ者に負けるわけにはいかぬ……」

しかし正午の頃になると勝敗は喫する

「敵将…覚悟」

坂井甚介の陣には柴田勝家の軍勢が突撃し、坂井甚介と柴田勝家が対峙した

「我が名は柴田勝家…貴殿の御命頂戴する」

「…望むところ!」

柴田勝家は甚介の槍を素早く弾き、甚介が怯んだところで、首元を突き、討ち取った

「敵将…討ち取ったり」

勝家が勘介を討ち取ったことにより、指揮官を失った信友勢は敗走を開始した

信長はしばらく追撃したのに帰城した


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