夏の日に

烈風

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プロローグ

思い出

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鉄火の砲煙が空を突き、雨霰と銃弾飛び交う富士訓練場の、野外に貼られたテントの司令部に私はいた

空はどこまでも澄み渡り、入道雲が青空を覆う中

私一人、昔の思い出を懐かしんでいた。

12年前。自分がまだ小学六年生の時

人見知りで内気な自分は打ち解ける友人も少なく憂鬱な日々を過ごしていた。

騒がしい教室の中でただ一人、空を見上げていた

入道雲が青空を隠すように浮かび、まさに夏の日の空であった

「放課後遊ばない?」
何故か僕に投げかけられたわけではないその言葉に反応してしまった

「あ、ねえ僕も一緒にいれてくれない?」

自分でも何故話しかけたのかはわからない

ただどうしてもこの言葉を出さずにはいられなかった

「お!いいよ!」

快く返事してくれたのは、龍本佑

クラスのムードメーカーで、明るい人物だ

「ありがとう!」

そう返事すると僕は高ぶる気持ちを抑えて自分の席に戻った

その日の放課後、佑の家に向かうと、祐以外にもう一人男子がいた

古林律斗 優しくて聡明で、僕の数少ない仲のいい友達だ

友達がいて安心したのと、佑の明るい性格のおかげで自分はすぐに馴染むことができた

今までにないほど楽しくあっという間に時は過ぎてしまった…

僕は別れを告げて、自分の家に帰った

その日からその二人と仲良くするようになった

毎日のように集まっては遊ぶようになっていた


……今でもたまに夢を見る

夏の日に遊んでいた時のことを

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