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第10章 王宮の決戦
間に合ったリーカー
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ワーロン将軍はエリザリー女王の元に向かっていた。その途中、王宮を守る剣士と衛兵が「待て!」と剣や槍を突き出して止めようとしたが、すべて一刀で斬られた。もはやワーロン将軍を止められるものはいなかった。
女王の部屋の前でも衛兵が守っており、ワーロン将軍に槍を突き出したが、すぐに切り捨てられ、「ぐあー!」と大きな悲鳴が上がった。そして「ドカッ! ドカッ!」と大きな音がして、部屋の頑丈なドアが震え、ついには蹴破られた。ワーロン将軍が女王の部屋に足を踏み入れたのだ。
「いない・・・」
ワーロン将軍は見渡してみたがその部屋には誰もいなかった。サース大臣がいち早くエリザリー女王を部屋から脱出させていた。ただそのベッドのぬくもりからはそれはついさっきのことのようだった。
ワーロン将軍は顔を上げた。その目は野獣の様に鋭かった。彼は周囲の気配を読み、女王の行き先を読み取ろうとていた。
「逃がさぬわ! まだ遠くに行っていまい」
ワーロン将軍はそれを感じ取り、部屋を出て廊下を獲物を追い詰めるかのように大股で大きく歩き始めた。
◇◇◇
サース大臣は衛兵にエリザリー女王を抱えさせて王宮の中を逃げていた。エリザリー女王は不安げな顔をしていたが、もうすべてこの忠臣のサース大臣に任せていた。
今にもワーロン将軍が現れそうで、
「女王様をここから逃がすのだ!」
とサース大臣は大声を上げていたが、内心は相当に焦っていた。だが広いとはいえ、このまま王宮にいればいつかはワーロン将軍に見つかるだろう。女王を守る剣士や衛兵はまだ10名近く付き添っていたが、ワーロン将軍に会えば瞬く間にやられてしまう。早く王宮の外に脱出しなければ・・・。だが頑丈な門を、時間をかけて開けている余裕はない。だとすると・・・
「そうだ。抜け道だ。外につながる抜け道が広間にある。そこから脱出できる」
古くからこの王宮でエリザリー女王に長年仕えているサース大臣にはそれが知らされていた。
「急げ! 広間に!」
サース大臣は衛兵に指示して、一行は広間に向かった。
◇◇◇
ワーロン将軍はエリザリー女王を探し回った。所々で彼の反逆を知り、衛兵や剣士が散発的に攻撃してきたが、すべて斬り倒した。それに彼に味方する魔騎士も4人程、集まっていた。とにかく早く女王を探し出して殺さなければ・・・そうすれば儂の力で後は何とでもできるとワーロン将軍は思っていた。
一方、王宮に潜入したリーカーはそのただならぬ状態に驚いていた。各所で剣士や衛兵が斬られて倒れていた。それも相当な手練れで一刀のもとに・・・こんなことができるのは限られていた。
(遅かったか! もうワーロン将軍の反逆が始まっている・・・女王様はどうされたのだ・・・)
焦りながらもリーカーとサランサ、そしてエミリーもエリザリー女王を探し続けていた。
◇◇◇
エリザリー女王とサース大臣の一行はようやく広間に着いた。
「女王様。この広間から外に出られる秘密の抜け道があります。ここから・・・」
サース大臣が言いかけた時、目の前にワーロン将軍が立ちふさがった。
「あっ!」
サース大臣は驚きで声を出せなかった。ここにワーロン将軍が待ち構えていたとは・・・。
「フフフ。この広間に来ると思っていた。抜け道があるからな」
ワーロン将軍が不気味に笑った。
「ワーロン、控えなさい! 私は女王です!」
エリザリー女王がそうは言ったものの、それは弱々しくワーロン将軍は鼻で笑うだけだった。サース大臣が、衛兵に抱えられているエリザリー女王をかばうように前に立って叫んだ。
「この反逆者め! 女王様を弑するつもりか!」
「そうだ。そこをどけ!」
ワーロン将軍は大きな声を上げて剣を抜いた。
「いや、どかぬ!」
サース大臣は両手を広げた。
「よかろう。2人ともあの世に送ってやる!」
ワーロン将軍は剣を大きく振りあげて、2人に振り下ろそうとした。その時、何かが飛んできて、「カーン!」とその剣をはね返した。
「これは魔法の剣の矢・・・誰だ!」
ワーロン将軍は辺りを見渡した。するとリーカーが姿を現した。
「待て!これ以上の非道は許さん!」
そして、
「***魔道剣*魔法矢***」
を連続して放っていった。
「くそ! 邪魔者め!」
ワーロン将軍は剣で叩き落としながら、それを避けるため後ろに下がった。リーカーはそのワーロン将軍の前に立ちふさがり、剣を構えた。ワーロン将軍も剣を構えて言った。
「リーカー。やはり生きていたか!」
「貴様の陰謀を止めるまで死ぬわけにいかぬ」
その後ろにいるサース大臣はリーカーにそう言った。
「リーカー殿。頼みます。マークス殿があなたの無実を示し、ワーロン将軍の陰謀を暴いたのです。あなたはもう反逆者ではない」
それを聞いてリーカーがワーロン将軍に言った。
「聞いたか! ワーロン。もはやお前の陰謀は露見した。あきらめて剣をおけ!」
だがワーロン将軍は退こうとしなかった。
「それがどうした! もはやお前たちに何ができるというのだ!」
ワーロン将軍の背後には魔騎士たちが集まってきていた。彼らは剣を抜いて構えていた。
「悪の栄えたためしはない! このリーカーのいる限り、お前たちの好きなようにはさせぬ!」
リーカーが声を上げた。
「ならば見せてみよ! 行け!」
ワーロン将軍が命ずると、魔騎士たちがリーカーに向かって来た。
「***魔道剣*発動***」
リーカーの剣は滑らかに動き出した。魔騎士たちも呪文を唱えて自らの剣に魔法をかけてリーカーに斬りかかっていった。炎の剣や雷の剣、水柱の剣が飛び交い、炎が身を焼き、雷が感電させ、水柱が衝撃を与えた。だがリーカーの剣はそれらの剣の勢いに負けず、主人の心のままに流れるように空間を斬り裂いた。
「ドサッ! ドサッ! ドサッ!」
リーカーが通り過ぎた後には魔騎士が次々に倒れていった。
「これほどの魔法の剣を!」
ワーロン将軍は驚きの声を上げた。
その時、エミリーを連れたサランサが広間に入ってきた。彼女はエリザリー女王を見て言った。
「女王様。エミリー様は御無事です!」
「女王様!」
エミリーはエリザリー女王に微笑んだ。
「よかった。無事で。さあ、こっちに来てもっとよく顔を見せておくれ」
エリザリー女王も笑顔になった。
ワーロン将軍は自分がつけ狙うエミリーを、まさかサランサが保護していたとは思っていなかった。
「サランサ! 儂を裏切ったのか!」
ワーロン将軍は声を上げた。だがサランサは気丈にもその言葉に負けなかった。
「いいえ。お父様。あなたが私を、いえ、この国を裏切ったのです。あなたは私の敵です!」
サランサは怒りを込めてワーロン将軍をにらんだ。
「儂は、儂はお前のために・・・不憫なお前のためにしたのだ。それを・・・」
ワーロン将軍はサランサの言葉に呆然とした。一番大事にしていた娘に裏切られるとは・・・ワーロン将軍は大きな衝撃を受けていた。一体何が悪いのか・・・それは・・・
「エミリーさえいなければ!」
ワーロン将軍は唇をかんだ。だがふと前を見ると、エミリーが女王の方に走り寄っていた。妨げるものは何もない。
「死ね!」
ワーロン将軍はいきなり魔法の刃を飛ばした。それはエミリーの体を突き抜けんばかりに飛んでいった。
「しまった!」
とっさのことでリーカーは反応することができなかった。刃がエミリーにどんどん迫っていた。
「グサリ!」
魔法の刃はエミリーではなく、サランサの胸を貫いて、辺りに血が飛び散らせた。サランサがとっさに身を挺してエミリーをかばったのだ。サランサはバタンと床に倒れ込んだ。
「サランサ殿!」
リーカーがすぐに駆け寄って抱き起した。
「ううっ・・・。リーカー・・・さ、ま・・・」
サランサはリーカーに向かって微笑むと、そのままこと切れた。
女王の部屋の前でも衛兵が守っており、ワーロン将軍に槍を突き出したが、すぐに切り捨てられ、「ぐあー!」と大きな悲鳴が上がった。そして「ドカッ! ドカッ!」と大きな音がして、部屋の頑丈なドアが震え、ついには蹴破られた。ワーロン将軍が女王の部屋に足を踏み入れたのだ。
「いない・・・」
ワーロン将軍は見渡してみたがその部屋には誰もいなかった。サース大臣がいち早くエリザリー女王を部屋から脱出させていた。ただそのベッドのぬくもりからはそれはついさっきのことのようだった。
ワーロン将軍は顔を上げた。その目は野獣の様に鋭かった。彼は周囲の気配を読み、女王の行き先を読み取ろうとていた。
「逃がさぬわ! まだ遠くに行っていまい」
ワーロン将軍はそれを感じ取り、部屋を出て廊下を獲物を追い詰めるかのように大股で大きく歩き始めた。
◇◇◇
サース大臣は衛兵にエリザリー女王を抱えさせて王宮の中を逃げていた。エリザリー女王は不安げな顔をしていたが、もうすべてこの忠臣のサース大臣に任せていた。
今にもワーロン将軍が現れそうで、
「女王様をここから逃がすのだ!」
とサース大臣は大声を上げていたが、内心は相当に焦っていた。だが広いとはいえ、このまま王宮にいればいつかはワーロン将軍に見つかるだろう。女王を守る剣士や衛兵はまだ10名近く付き添っていたが、ワーロン将軍に会えば瞬く間にやられてしまう。早く王宮の外に脱出しなければ・・・。だが頑丈な門を、時間をかけて開けている余裕はない。だとすると・・・
「そうだ。抜け道だ。外につながる抜け道が広間にある。そこから脱出できる」
古くからこの王宮でエリザリー女王に長年仕えているサース大臣にはそれが知らされていた。
「急げ! 広間に!」
サース大臣は衛兵に指示して、一行は広間に向かった。
◇◇◇
ワーロン将軍はエリザリー女王を探し回った。所々で彼の反逆を知り、衛兵や剣士が散発的に攻撃してきたが、すべて斬り倒した。それに彼に味方する魔騎士も4人程、集まっていた。とにかく早く女王を探し出して殺さなければ・・・そうすれば儂の力で後は何とでもできるとワーロン将軍は思っていた。
一方、王宮に潜入したリーカーはそのただならぬ状態に驚いていた。各所で剣士や衛兵が斬られて倒れていた。それも相当な手練れで一刀のもとに・・・こんなことができるのは限られていた。
(遅かったか! もうワーロン将軍の反逆が始まっている・・・女王様はどうされたのだ・・・)
焦りながらもリーカーとサランサ、そしてエミリーもエリザリー女王を探し続けていた。
◇◇◇
エリザリー女王とサース大臣の一行はようやく広間に着いた。
「女王様。この広間から外に出られる秘密の抜け道があります。ここから・・・」
サース大臣が言いかけた時、目の前にワーロン将軍が立ちふさがった。
「あっ!」
サース大臣は驚きで声を出せなかった。ここにワーロン将軍が待ち構えていたとは・・・。
「フフフ。この広間に来ると思っていた。抜け道があるからな」
ワーロン将軍が不気味に笑った。
「ワーロン、控えなさい! 私は女王です!」
エリザリー女王がそうは言ったものの、それは弱々しくワーロン将軍は鼻で笑うだけだった。サース大臣が、衛兵に抱えられているエリザリー女王をかばうように前に立って叫んだ。
「この反逆者め! 女王様を弑するつもりか!」
「そうだ。そこをどけ!」
ワーロン将軍は大きな声を上げて剣を抜いた。
「いや、どかぬ!」
サース大臣は両手を広げた。
「よかろう。2人ともあの世に送ってやる!」
ワーロン将軍は剣を大きく振りあげて、2人に振り下ろそうとした。その時、何かが飛んできて、「カーン!」とその剣をはね返した。
「これは魔法の剣の矢・・・誰だ!」
ワーロン将軍は辺りを見渡した。するとリーカーが姿を現した。
「待て!これ以上の非道は許さん!」
そして、
「***魔道剣*魔法矢***」
を連続して放っていった。
「くそ! 邪魔者め!」
ワーロン将軍は剣で叩き落としながら、それを避けるため後ろに下がった。リーカーはそのワーロン将軍の前に立ちふさがり、剣を構えた。ワーロン将軍も剣を構えて言った。
「リーカー。やはり生きていたか!」
「貴様の陰謀を止めるまで死ぬわけにいかぬ」
その後ろにいるサース大臣はリーカーにそう言った。
「リーカー殿。頼みます。マークス殿があなたの無実を示し、ワーロン将軍の陰謀を暴いたのです。あなたはもう反逆者ではない」
それを聞いてリーカーがワーロン将軍に言った。
「聞いたか! ワーロン。もはやお前の陰謀は露見した。あきらめて剣をおけ!」
だがワーロン将軍は退こうとしなかった。
「それがどうした! もはやお前たちに何ができるというのだ!」
ワーロン将軍の背後には魔騎士たちが集まってきていた。彼らは剣を抜いて構えていた。
「悪の栄えたためしはない! このリーカーのいる限り、お前たちの好きなようにはさせぬ!」
リーカーが声を上げた。
「ならば見せてみよ! 行け!」
ワーロン将軍が命ずると、魔騎士たちがリーカーに向かって来た。
「***魔道剣*発動***」
リーカーの剣は滑らかに動き出した。魔騎士たちも呪文を唱えて自らの剣に魔法をかけてリーカーに斬りかかっていった。炎の剣や雷の剣、水柱の剣が飛び交い、炎が身を焼き、雷が感電させ、水柱が衝撃を与えた。だがリーカーの剣はそれらの剣の勢いに負けず、主人の心のままに流れるように空間を斬り裂いた。
「ドサッ! ドサッ! ドサッ!」
リーカーが通り過ぎた後には魔騎士が次々に倒れていった。
「これほどの魔法の剣を!」
ワーロン将軍は驚きの声を上げた。
その時、エミリーを連れたサランサが広間に入ってきた。彼女はエリザリー女王を見て言った。
「女王様。エミリー様は御無事です!」
「女王様!」
エミリーはエリザリー女王に微笑んだ。
「よかった。無事で。さあ、こっちに来てもっとよく顔を見せておくれ」
エリザリー女王も笑顔になった。
ワーロン将軍は自分がつけ狙うエミリーを、まさかサランサが保護していたとは思っていなかった。
「サランサ! 儂を裏切ったのか!」
ワーロン将軍は声を上げた。だがサランサは気丈にもその言葉に負けなかった。
「いいえ。お父様。あなたが私を、いえ、この国を裏切ったのです。あなたは私の敵です!」
サランサは怒りを込めてワーロン将軍をにらんだ。
「儂は、儂はお前のために・・・不憫なお前のためにしたのだ。それを・・・」
ワーロン将軍はサランサの言葉に呆然とした。一番大事にしていた娘に裏切られるとは・・・ワーロン将軍は大きな衝撃を受けていた。一体何が悪いのか・・・それは・・・
「エミリーさえいなければ!」
ワーロン将軍は唇をかんだ。だがふと前を見ると、エミリーが女王の方に走り寄っていた。妨げるものは何もない。
「死ね!」
ワーロン将軍はいきなり魔法の刃を飛ばした。それはエミリーの体を突き抜けんばかりに飛んでいった。
「しまった!」
とっさのことでリーカーは反応することができなかった。刃がエミリーにどんどん迫っていた。
「グサリ!」
魔法の刃はエミリーではなく、サランサの胸を貫いて、辺りに血が飛び散らせた。サランサがとっさに身を挺してエミリーをかばったのだ。サランサはバタンと床に倒れ込んだ。
「サランサ殿!」
リーカーがすぐに駆け寄って抱き起した。
「ううっ・・・。リーカー・・・さ、ま・・・」
サランサはリーカーに向かって微笑むと、そのままこと切れた。
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