闇の者

広之新

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第10章 闇に咲く花

追っ手

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 M3地域には採掘を監督するための監視塔があった。そこに多くのヤゴール星人が詰めていた。
「変わったことはないか?」ミギレ監督官がオペレーターに声をかけた。
「はい。もう少しで朝の定時連絡です。まあ、いつも通りともいますが・・・」オペレーターは慣れ切っていた。いくら地球人が多く集まったからといって逃げ出すとは思っていなかった。
「それはそうだな。」ミギレ監督官も同じだった。もうしばらく掘ればここの鉱物はなくなる。また次に移動するだけだ。集めた地球人は生き埋めにでもして、また元気な奴を集めて来ればいい・・・そう思っていた。
「監督官。」交代要員のヤゴール人がそばに寄って来た。
「どうした?」
「少しおかしいです。いつもなら作業が始まって機械が動き出すのにその様子がありません。」そのヤゴール人は報告した。
「そうか?」あわててミギレ監督官は様々な計器を調べた。確かに中で作業が行われている様子はなかった。
「おかしい。洞窟に連絡しろ!」ミギレ監督官が声を上げた。オペレーターは何度も呼びかけたが返答はなかった。
「連絡ありません。」
「そうか。異変が起こっている。もしかしたら見張りがやられて逃げられたのかもしれぬ。すぐに追え!」ミギレ監督官はすぐに命令した。強力な妨害電波を放っているために監視カメラが使えないため、バイオノイドを連れた警備の者をあちこちに派遣するしかなかった。

 逃げ出した一行の前にはきつい山道が続いていた。
「さあ、しっかりがんばって。」霞は必死に歩く人たちに声をかけていた。だが毎日の激しい労働に疲れ切っておりその足どりは重かった。そして日の光は容赦なく降り注ぎ、汗を大量に流しながら体力を奪っていった。そこに、
「キューン! キューン!」とサイレンが鳴り始めた。
「まずい。奴ら気付いたようだ。」大作が言った。
「急ぎましょう。」霞は皆に声をかけた。

「サイレンが鳴りました。追っ手が放たれたようです。」疾風が連絡した。
「疾風と佐助は追っ手を妨害しろ! 霞たち一行を守れ!」半蔵はそう通信を送った。
「まずいことになりましたね。」児雷也が言った。半蔵は地図を見ながら考えていた。
「多分、霞たちはこの辺だ。奴らはそれをめがけて迫ってくる。何とか切り抜けてくれればいいが・・・」

 森の中をヤゴール星人とバイオノイドが進んでいた。そこに、
「はっはっはっは・・・」と笑い声が響き渡った。
「何者だ!」ヤゴール星人は足を止め、辺りを見渡しながら叫んだ。すると木の上に忍び装束の男がいるのに気付いた。それは疾風だった。
「貴様は誰だ!」
「貴様らの好きにはさせぬ。」疾風は木から木に飛び移っていた。
「怪しい奴! 打ち落とせ!」ヤゴール人がそう言うと、バイオノイドはナイフを投げてつけてきた。
「ビューッ!」疾風のそばにナイフが突き刺さった。疾風はそれを翻弄するように木から木へ飛び移り、やがてバイオノイドたちの上に降りてきた。引き抜いた刀でバイオノイドをすべて斬り倒していった。すると恐怖にかられたヤゴール星人は
「ひえっー!」と逃げて行った。
 
 また別のヤゴール星人一行の前に一人の忍び装束の男が立ちふさがった。それは佐助だった
「そこをどけ!」ヤゴール人が叫んだ。しかし佐助はそのまま立っていた。
「構わぬ!斬り捨てい!」ヤゴール星人が声を上げるとバイオノイドが斬りかかってきた。だが佐助は動かずにそのまま斬られてしまった。だが血は流れなかった。それはダミーであった。
「?」首を傾げる一行の後ろに佐助の姿があった。逆手に刀を握り、背後から斬りかかっていった。不意を突かれたバイオノイドはすべて斬り倒された。ヤゴール星人は剣を抜いて斬りかかってきたが、佐助の刀で剣を叩き落とされ、そのまま逃げて行った。

 だが別の1隊が霞たち一行に出くわしていた。逃げてきた人たちは悲鳴を上げて後ろに隠れた。大作をはじめ屈強な男たちと霞がその前に出た。
(ヤゴール星人1人にバイオノイド数体・・・さて、どうするか・・・)霞は奪ったムチを構えた。バイオノイドが剣を抜いて向かって来た。霞はムチで叩くがバイオノイドには通じないようだった。
(電気を流せば・・・)霞はコントロール装置を触ってムチに電流を通した。それで剣で襲ってくるバイオノイドを攻撃した。何度も電磁ムチで叩くと、電撃を受けたバイオノイドはそのまま倒れて消えていった。
 大作ら男たち4人もムチに電流を流して戦ったが、バイオノイドの剣に阻まれていた。そしてその剣が大作たちに振り下ろされた。だが一瞬早く、霞が電撃ムチで防いでバイオノイドを倒した。
他のバイオノイドも次々に電撃ムチで倒されていったが、そのうちにエネルギーがなくなって電流が流れなくなった。それでも霞はムチを振り回し、倒れたバイオノイドから剣を奪った。それを向かってくるバイオノイドに突き立てて倒した。
「ぬぬぬ・・・!」バイオノイドを率いてきたヤゴール人は不利を悟って引き上げていった。
「また助かったぜ。玲香のおかげだ。」大作が喜んで霞に声をかけた。
「そんなことはないわ。みんな頑張ったからよ。それよりみんな大丈夫?」霞が周りを見渡した。一緒に来た人たちにケガはないようだった。
「よし。このまま一気にここを抜けよう。奴らはこれに凝りてすぐには襲ってこないだろう。」大作はそう言って一行を出発させた。霞はふと空を見た。すると南の方に雲が広がってきているのを見た。
(大雨になるわ。これから道が悪いし・・・)霞は不安を感じていた。
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