76 / 90
第13章 偽りの令嬢
裏の顔
しおりを挟む
笠取荘の隠し部屋に児雷也が来ていた。いつもは半蔵がつなぎをつけて集めるのだが、今日は違った。
「児雷也。何かあったのか?」半蔵は尋ねた。
「お頭。申し訳ありません。お呼び立てして。相談に乗っていただきたいことが・・・」児雷也は少し恥ずかしそうにしていた。
「そうか。いよいよか。」半蔵は児雷也の態度から何かを察しているようだった。
「はい。そろそろ身を固めようかと思いまして。」
「うむ。表の顔は運送会社の社長だ。家庭をもって当たり前だ。」半蔵はうなずいた。
「しかし・・・」
「うむ。そうだ。家族にも闇のことは秘密にしなければならぬ。お前は父にも秘密にして祖父の仕事を引き継いだ。闇のことは跡継ぎにした者以外、秘密にしなければならぬ。それができるか?」半蔵は聞いた。
「はい。そのつもりです。」児雷也は言った。
「そうか。それなら何も言わぬ。しかし正介として言わせてもらう。おめでとう!」半蔵は笑顔になった。
「ありがとうございます。」児雷也は半蔵が祝福してくれたことがうれしかった。
「ところで身元はしっかりしているのだろうな?」
「はい。うちの長山常務が持ってきた見合い話で。その辺のところはしっかりしています。ジャーク産業の高山専務の一人娘です。美人で優しくて・・・」
「ほお、ずいぶん入れ込んでいるな。」半蔵は冷やかすように言った。
「いえ、そんな・・・」
「まあ、よい。どこまで話が進んでいるのだ?」
「まずあちらの両親にもお会いしなければ。海外に行かれていたのでこちらに戻って来られたらあいさつにいくつもりです。それからプロポーズして・・・」児雷也は楽しそうに言った。半蔵はそんな児雷也を温かい目で見つつも、一抹の悪い予感を覚えていた。
人気のないあの倉庫に清香はいた。薄暗く電灯がともるその場所には薪の火が燃やされていた。彼女は椅子に座り、その火をじっと見ていた。その目には憎しみが宿っていた。
「うまくいっているようだな。」一人の異星人が声をかけた。
「はい。カイネさん。」清香は答えた。
「それはよかった。後は仕留めるだけだな。」
「はい。あの男は週末にも誘いに乗って来るでしょう。その時に近くの空き家に誘い込んで恨みを晴らします。」清香は言った。
「うむ。それでいい。これで兄の仇を取れるな。ダバ主任も浮かばれよう。俺も奴らに弟を殺されたからお前の気持ちはよくわかる。」カイネは言った。
「それもあなたのおかげです。総督府からは不慮の死としか知らされませんでしたが、あなたからマコウ人に歯向かう忍者に爆弾で殺されたことを教えていただきました。それで泣き暮らす日々から生きていく希望を得たのです。」清香は言った。
「しかし、地球人に整形して、大企業の重役の娘になりすましてターゲットに近づいた。この執念には頭が下がる。」
「いえ、あなたが『バゴス』を街にはなって忍者たちが出てくるようにしていただいたのでその一人が判明したのです。ここに連れて来ればあとは訓練通り、必ず抹殺いたします。」清香の顔は火に照らされて恐ろしく見えた。
「いざとなれば我らも加勢する。奴は忍者。油断ならぬ奴だからな。」
「児雷也。何かあったのか?」半蔵は尋ねた。
「お頭。申し訳ありません。お呼び立てして。相談に乗っていただきたいことが・・・」児雷也は少し恥ずかしそうにしていた。
「そうか。いよいよか。」半蔵は児雷也の態度から何かを察しているようだった。
「はい。そろそろ身を固めようかと思いまして。」
「うむ。表の顔は運送会社の社長だ。家庭をもって当たり前だ。」半蔵はうなずいた。
「しかし・・・」
「うむ。そうだ。家族にも闇のことは秘密にしなければならぬ。お前は父にも秘密にして祖父の仕事を引き継いだ。闇のことは跡継ぎにした者以外、秘密にしなければならぬ。それができるか?」半蔵は聞いた。
「はい。そのつもりです。」児雷也は言った。
「そうか。それなら何も言わぬ。しかし正介として言わせてもらう。おめでとう!」半蔵は笑顔になった。
「ありがとうございます。」児雷也は半蔵が祝福してくれたことがうれしかった。
「ところで身元はしっかりしているのだろうな?」
「はい。うちの長山常務が持ってきた見合い話で。その辺のところはしっかりしています。ジャーク産業の高山専務の一人娘です。美人で優しくて・・・」
「ほお、ずいぶん入れ込んでいるな。」半蔵は冷やかすように言った。
「いえ、そんな・・・」
「まあ、よい。どこまで話が進んでいるのだ?」
「まずあちらの両親にもお会いしなければ。海外に行かれていたのでこちらに戻って来られたらあいさつにいくつもりです。それからプロポーズして・・・」児雷也は楽しそうに言った。半蔵はそんな児雷也を温かい目で見つつも、一抹の悪い予感を覚えていた。
人気のないあの倉庫に清香はいた。薄暗く電灯がともるその場所には薪の火が燃やされていた。彼女は椅子に座り、その火をじっと見ていた。その目には憎しみが宿っていた。
「うまくいっているようだな。」一人の異星人が声をかけた。
「はい。カイネさん。」清香は答えた。
「それはよかった。後は仕留めるだけだな。」
「はい。あの男は週末にも誘いに乗って来るでしょう。その時に近くの空き家に誘い込んで恨みを晴らします。」清香は言った。
「うむ。それでいい。これで兄の仇を取れるな。ダバ主任も浮かばれよう。俺も奴らに弟を殺されたからお前の気持ちはよくわかる。」カイネは言った。
「それもあなたのおかげです。総督府からは不慮の死としか知らされませんでしたが、あなたからマコウ人に歯向かう忍者に爆弾で殺されたことを教えていただきました。それで泣き暮らす日々から生きていく希望を得たのです。」清香は言った。
「しかし、地球人に整形して、大企業の重役の娘になりすましてターゲットに近づいた。この執念には頭が下がる。」
「いえ、あなたが『バゴス』を街にはなって忍者たちが出てくるようにしていただいたのでその一人が判明したのです。ここに連れて来ればあとは訓練通り、必ず抹殺いたします。」清香の顔は火に照らされて恐ろしく見えた。
「いざとなれば我らも加勢する。奴は忍者。油断ならぬ奴だからな。」
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる