闇の者

広之新

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第13章 偽りの令嬢

裏の顔

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 笠取荘の隠し部屋に児雷也が来ていた。いつもは半蔵がつなぎをつけて集めるのだが、今日は違った。
「児雷也。何かあったのか?」半蔵は尋ねた。
「お頭。申し訳ありません。お呼び立てして。相談に乗っていただきたいことが・・・」児雷也は少し恥ずかしそうにしていた。
「そうか。いよいよか。」半蔵は児雷也の態度から何かを察しているようだった。
「はい。そろそろ身を固めようかと思いまして。」
「うむ。表の顔は運送会社の社長だ。家庭をもって当たり前だ。」半蔵はうなずいた。
「しかし・・・」
「うむ。そうだ。家族にも闇のことは秘密にしなければならぬ。お前は父にも秘密にして祖父の仕事を引き継いだ。闇のことは跡継ぎにした者以外、秘密にしなければならぬ。それができるか?」半蔵は聞いた。
「はい。そのつもりです。」児雷也は言った。
「そうか。それなら何も言わぬ。しかし正介として言わせてもらう。おめでとう!」半蔵は笑顔になった。
「ありがとうございます。」児雷也は半蔵が祝福してくれたことがうれしかった。
「ところで身元はしっかりしているのだろうな?」
「はい。うちの長山常務が持ってきた見合い話で。その辺のところはしっかりしています。ジャーク産業の高山専務の一人娘です。美人で優しくて・・・」
「ほお、ずいぶん入れ込んでいるな。」半蔵は冷やかすように言った。
「いえ、そんな・・・」
「まあ、よい。どこまで話が進んでいるのだ?」
「まずあちらの両親にもお会いしなければ。海外に行かれていたのでこちらに戻って来られたらあいさつにいくつもりです。それからプロポーズして・・・」児雷也は楽しそうに言った。半蔵はそんな児雷也を温かい目で見つつも、一抹の悪い予感を覚えていた。


 人気のないあの倉庫に清香はいた。薄暗く電灯がともるその場所には薪の火が燃やされていた。彼女は椅子に座り、その火をじっと見ていた。その目には憎しみが宿っていた。
「うまくいっているようだな。」一人の異星人が声をかけた。
「はい。カイネさん。」清香は答えた。
「それはよかった。後は仕留めるだけだな。」
「はい。あの男は週末にも誘いに乗って来るでしょう。その時に近くの空き家に誘い込んで恨みを晴らします。」清香は言った。
「うむ。それでいい。これで兄の仇を取れるな。ダバ主任も浮かばれよう。俺も奴らに弟を殺されたからお前の気持ちはよくわかる。」カイネは言った。
「それもあなたのおかげです。総督府からは不慮の死としか知らされませんでしたが、あなたからマコウ人に歯向かう忍者に爆弾で殺されたことを教えていただきました。それで泣き暮らす日々から生きていく希望を得たのです。」清香は言った。
「しかし、地球人に整形して、大企業の重役の娘になりすましてターゲットに近づいた。この執念には頭が下がる。」
「いえ、あなたが『バゴス』を街にはなって忍者たちが出てくるようにしていただいたのでその一人が判明したのです。ここに連れて来ればあとは訓練通り、必ず抹殺いたします。」清香の顔は火に照らされて恐ろしく見えた。
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