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第2章
⑲ 鎧の力
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秋穂からのメッセージはどう戦うべきか判断に迷っていた私にとって、明確な指針となった。
いきなり倒そうなんて考えなくてよい。
アジ・ダハーカが町を攻撃することないよう注意を引きつけつつ、やられてしまわないよう戦えばよいのだ。
それは、私の気持ちを随分と軽くした。
そのとき、アジ・ダハーカは再び動き始めた。解毒が終わったのだ。
黒かった表皮は剥がれ落ちて新たに赤い鱗が覆っている。
その見た目に若干の変化があり、さっきまではごつごつとした印象だったが、とげとげした感じだ。そのせいでむしろ大きくなったようにさえ見える。
三つの頭が私を見つけて威嚇のおたけびを上げる。
取るに足らない小さな存在でも、ちくちくと攻撃されれば不愉快だろう。
「ならばちくちくと攻撃してやる!」
私は敵表面を無数にロックオンし、爆裂魔法を放つ。
しかし、魔法が発動したと同時に表面に魔法陣のようなものが現れた。
キィン! と奇妙な音がしたかと思うと、爆裂魔法が私に跳ね返ってきた。
私は慌てて避ける。
「反射魔法か?」
『はい、全身に反射魔法を施しているようです。この魔法の効果は二十分ほど続くようなので、しばらく一切の魔法攻撃は通じません』
「なんということだ」
アジ・ダハーカは私に攻撃の隙を与えまいとしてか、棘だらけの表皮から棘の鱗を無数に飛ばしてきた。
この攻撃は亜光速に近く、私でも躱すことはほとんど不可能だ。
だが、鎧は飛んでくる鱗の棘すべてをはじいてしまった。
無傷の私に、アジ・ダハーカも驚いていた。
「鎧のおかげで助かったよ」
『それは、どういたしまして』
秋穂の嬉しそうな返事が聞こえた。
だが、棘の鱗を飛ばされ続けると迂闊に近づくことができない。
『どうやら、≪エナジードレイン≫を警戒しているようです』
「ほとんど効いてないと思ったが、警戒される程度には効いていたか」
ふと気がつくと、私の右側からドラゴンの大群が攻めようとしていた。
「懲りないな。ドラゴンなど一気に殲滅……」
ドガーン!
ドラゴンの大群に木が移った瞬間を狙って、アジ・ダハーカが爆裂魔法を食らわせてきた。
これも鎧がなければかなりの大ダメージとなっていたに違いない。
私がよろめいた瞬間をチャンスといわんばかりにドラゴンたちが襲い掛かってくる。
「!?」
攻撃というより、まとわりついてくる??
ドラゴンたちは私の動きを封じるように取り囲んできた。
私は視界が奪われ、ロックオンによる多重攻撃ができなくなってしまった。
「がぼ!?」
突然、強烈な物理攻撃が脇腹を襲う。
私はふっ飛ばされて山に突き刺さる。
アジ・ダハーカが超重量の尻尾でドラゴンもろとも殴ってきたのだ。
狙ったとは思えないが、またしてもいづなや秋穂たちの近くだった。
「仙崎様!」
「仙崎さん!!」
またスプラッタになってしまったかと思いきや、今回砕け散ったのは山の岩盤のほうだった。
「……鎧のおかげだ」
駆け寄ってきた二人は安堵の表情を浮かべた。
私は秋穂に礼を言おうと思ってそちらを見たところで、彼女が目をそらせた。
なんで? と思ったが、『勇者の鎧』が生まれた経緯をいづなには悟られたくない。
この辺り、秋穂はわきまえたものだった。
「驚いた。敵の攻撃が随分と戦術的になった」
「私もそれは感じます。鎧を着る以前までのような力任せの攻撃ではないように思います」
「アジ・ダハーカは知能をもっているようです」
「魔法攻撃はできないし、剣で攻撃しようにも近づくことさえままならない。どうすればいいんだ」
「でも仙崎さん、あまり焦っている感じはしませんね」
「ああ、なぜだろう。きみたちの助けがあると思えるだけで、きっと何とかなるという希望が見えてくるんだ」
「せ、仙崎様……♡」
いづなはなんだかキュンキュンしていた。
秋穂はにっこりと微笑んだだけだったが、さらに希望を与える言葉をくれた。
「ええ、私たちの助けがあればなんとかなります。いづなさん!」
「わかりました。秋穂様、よろしいのですね?」
「もちろん」
いづなは先ほど私たちが乗ってきた軽自動車に手を触れた。
「≪合成≫!」
自動車がカッと光ると、その形を変えてしまっていた。
何とそれは、人が何とか担げるほどのレーザー砲だった。
「いづなさん、すごいわ。設計図通り」
「設計図を書かれた秋穂様のおかげです」
「これなら魔法でなくとも、近づかずに攻撃できます」
「大事な車じゃないか。こんなことに……」
「地上がやられてしまったら、車の使い道なんてなくなってしまいます」
確かにその通りだ。
「だけど、これは電気で動くんだよね。アジ・ダハーカにダメージを与えるには、少々の電力じゃ通じないんじゃ……」
「電気なら、敵の周りにたくさんあります」
そう言って差し出したのは、スマホだった。
なるほど、そういうことか!
このスマホには、魔素を吸収して電力に変換するアプリがインストールされている。
魔素は、やっつけたドラゴン数千匹分がアジ・ダハーカの周辺にまだ漂っている。
私は亜光速でアジ・ダハーカの周辺を飛んで魔素をかき集めた。
魔素から変換されたスマホの電気を私が≪エナジードレイン≫で自身の体内にため込んでいった。
驚いたことに『勇者の鎧』の力によって、ほとんど無限に電気をため込むことができた。
『仙崎さん、それだけの電力量ですと一発撃っただけでそのレーザー砲は壊れてしまいます。チャンスは一回だけです』
「わかった」
とんでもないエネルギーを人間ほどの大きさしかない道具で出力するのだ。
それでも何兆ものドラゴンが集まったアジ・ダハーカにどこまで通用するかわからない。
「頭では効かない。となると、心臓を狙うべきだ」
先ほど同時に三つの頭を破壊したが、まったくダメージにならなかった。
「くらえ!」
私は狙いを定めて、レーザー砲を心臓があると思われる一点に放った。
弾けるような音とともに光が放たれ、アジ・ダハーカの胸部を貫いた。
「ギャアアアアアア!!!」
アジ・ダハーカは叫び声をあげた。
胸にはぽっかりと巨大な穴が開いて、むこう側の風景が見えた。
「やったか?」
レーザー砲はあまりのエネルギーで融け、一部は蒸発してしまっていた。
どこまでのダメージかわからないが、少なくとも苦しんでいる今がチャンスだ。
私は胸の穴に飛び込んで、剣で斬りつけた。
いや、体内に入り込んだのだから反射魔法は効かないかもしれない。
試しに一発爆裂魔法を食らわせる。
ドカーン!
よし、ここなら魔法も通じる!
「おおおおおおらああああ!!」
ありったけのMPを使って爆裂魔法をくらわし、開いた穴をもっと大きくしてやる。
そしてすぐさまにエナジードレインでHPとMPを回復させる。
敵のエネルギーを使ってまたしても無限攻撃だ!
だが、敵も黙ってやられてくれることはない。
壁面に突然ぎょろりと目玉が現れたかと思うと、ドラゴンの顔になって襲い掛かってくる。
ここが自分の体内だというのに、お構いなしで炎や魔法を繰り出してくる。
おかげで乱戦状態となり、仲間のドラゴンにやられるドラゴンさえも現れた。
そこには本体を守ろうとする必死さがうかがえた。
『仙崎さん!!』
「くそう。心臓らしきものがあると思ったが、ただのドラゴンの集合体らしい。こいつはいったいどうなっているんだ」
『仙崎さんが体内に入ってくださったおかげで、かなりのことがわかりました』
「そうか!」
『アジ・ダハーカはドラゴンの集合体だと言いましたが、体内にいる誰かが強力な力でドラゴンを集めてコントロールし、一つの生命体のように振る舞わせているのです』
「ガンダムのパイロットみたいに?」
『ガンダム……はい、エヴァンゲリオンでも巨人でもいいのですが、巨大ロボットを操縦している者がいると考えていただければ大丈夫です』
「では、そいつをやっつければ、アジ・ダハーカは倒せる?」
『きっと!』
「だけど、あまりに巨大だ。そんな奴を探してやっつけるのにとんでもなく時間がかかってしまう。その間に、空の裂け目から新しいモンスターがやってくるかもしれない!」
『はい。だから今さっきつくったアプリをメールで送信したので、それを新たにインストールしてください』
ピロリーン。
メールが届く。
『頑張ってください♡』
たったそれだけのメッセージだが、最後のハートマークが何となくキュンとくる。
そして添付ファイルを開くと、「インストールしますか?」とスマホが聞いてくるので、私は「OK」をタップする。
二〇秒ほどでインストールが完了する。その間も次々とドラゴンが襲ってくるので気が気ではなかった。
「できた!」
『そのアプリは、≪魔素の流れ探知機≫です』
「探知機?」
『はい。アジ・ダハーカを統括している者は、魔素を通じてコントロールしていることがわかりました。ですから、魔素がどのように流れているかその源流を探すことで、本当の敵の所在がわかるはずです』
「わかった」
早速アプリを起動する。
レンズ越しの風景が画面に映し出され、そこに重ねるようにサーモグラフィーのような赤や青、黄色で何かの分布を表している。その色の分布がある方向に流れているのがはっきりと見て取れる。
つまり、この流れをさかのぼっていけば敵の本体を見つけることができる。
しかし、この短時間でこんなアプリをつくってしまうなんて。さすが≪大賢者≫のスキルを身につけただけのことはある。
「こっちだな!」
見た壁面から次々とドラゴンが湧いてくる。
私は強力な爆裂魔法で吹き飛ばしながら突き進むが、数があまりに多くて動けなくなる。
しかし私はゆっくりとだがスマホを通じて、魔素を電力に変えて電気をため込んでいた。
「これでどうだ!」
電気を一気にまとわりつくドラゴンたちに流し込む。
「「「「「「「「ぎょわわわわわわー!!」」」」」」」」
周囲のドラゴンたちが感電する。
あまりに強烈なショックだったせいで、ドラゴンたちは死んで魔素になってゆく。
スマホで魔素を電力に、≪エナジードレイン≫で敵のHPを自分のHPやMPにしながら、私はさらにスマホ画面が示す源流を目指し、掘り進んでいった。
「ここか!」
いきなり倒そうなんて考えなくてよい。
アジ・ダハーカが町を攻撃することないよう注意を引きつけつつ、やられてしまわないよう戦えばよいのだ。
それは、私の気持ちを随分と軽くした。
そのとき、アジ・ダハーカは再び動き始めた。解毒が終わったのだ。
黒かった表皮は剥がれ落ちて新たに赤い鱗が覆っている。
その見た目に若干の変化があり、さっきまではごつごつとした印象だったが、とげとげした感じだ。そのせいでむしろ大きくなったようにさえ見える。
三つの頭が私を見つけて威嚇のおたけびを上げる。
取るに足らない小さな存在でも、ちくちくと攻撃されれば不愉快だろう。
「ならばちくちくと攻撃してやる!」
私は敵表面を無数にロックオンし、爆裂魔法を放つ。
しかし、魔法が発動したと同時に表面に魔法陣のようなものが現れた。
キィン! と奇妙な音がしたかと思うと、爆裂魔法が私に跳ね返ってきた。
私は慌てて避ける。
「反射魔法か?」
『はい、全身に反射魔法を施しているようです。この魔法の効果は二十分ほど続くようなので、しばらく一切の魔法攻撃は通じません』
「なんということだ」
アジ・ダハーカは私に攻撃の隙を与えまいとしてか、棘だらけの表皮から棘の鱗を無数に飛ばしてきた。
この攻撃は亜光速に近く、私でも躱すことはほとんど不可能だ。
だが、鎧は飛んでくる鱗の棘すべてをはじいてしまった。
無傷の私に、アジ・ダハーカも驚いていた。
「鎧のおかげで助かったよ」
『それは、どういたしまして』
秋穂の嬉しそうな返事が聞こえた。
だが、棘の鱗を飛ばされ続けると迂闊に近づくことができない。
『どうやら、≪エナジードレイン≫を警戒しているようです』
「ほとんど効いてないと思ったが、警戒される程度には効いていたか」
ふと気がつくと、私の右側からドラゴンの大群が攻めようとしていた。
「懲りないな。ドラゴンなど一気に殲滅……」
ドガーン!
ドラゴンの大群に木が移った瞬間を狙って、アジ・ダハーカが爆裂魔法を食らわせてきた。
これも鎧がなければかなりの大ダメージとなっていたに違いない。
私がよろめいた瞬間をチャンスといわんばかりにドラゴンたちが襲い掛かってくる。
「!?」
攻撃というより、まとわりついてくる??
ドラゴンたちは私の動きを封じるように取り囲んできた。
私は視界が奪われ、ロックオンによる多重攻撃ができなくなってしまった。
「がぼ!?」
突然、強烈な物理攻撃が脇腹を襲う。
私はふっ飛ばされて山に突き刺さる。
アジ・ダハーカが超重量の尻尾でドラゴンもろとも殴ってきたのだ。
狙ったとは思えないが、またしてもいづなや秋穂たちの近くだった。
「仙崎様!」
「仙崎さん!!」
またスプラッタになってしまったかと思いきや、今回砕け散ったのは山の岩盤のほうだった。
「……鎧のおかげだ」
駆け寄ってきた二人は安堵の表情を浮かべた。
私は秋穂に礼を言おうと思ってそちらを見たところで、彼女が目をそらせた。
なんで? と思ったが、『勇者の鎧』が生まれた経緯をいづなには悟られたくない。
この辺り、秋穂はわきまえたものだった。
「驚いた。敵の攻撃が随分と戦術的になった」
「私もそれは感じます。鎧を着る以前までのような力任せの攻撃ではないように思います」
「アジ・ダハーカは知能をもっているようです」
「魔法攻撃はできないし、剣で攻撃しようにも近づくことさえままならない。どうすればいいんだ」
「でも仙崎さん、あまり焦っている感じはしませんね」
「ああ、なぜだろう。きみたちの助けがあると思えるだけで、きっと何とかなるという希望が見えてくるんだ」
「せ、仙崎様……♡」
いづなはなんだかキュンキュンしていた。
秋穂はにっこりと微笑んだだけだったが、さらに希望を与える言葉をくれた。
「ええ、私たちの助けがあればなんとかなります。いづなさん!」
「わかりました。秋穂様、よろしいのですね?」
「もちろん」
いづなは先ほど私たちが乗ってきた軽自動車に手を触れた。
「≪合成≫!」
自動車がカッと光ると、その形を変えてしまっていた。
何とそれは、人が何とか担げるほどのレーザー砲だった。
「いづなさん、すごいわ。設計図通り」
「設計図を書かれた秋穂様のおかげです」
「これなら魔法でなくとも、近づかずに攻撃できます」
「大事な車じゃないか。こんなことに……」
「地上がやられてしまったら、車の使い道なんてなくなってしまいます」
確かにその通りだ。
「だけど、これは電気で動くんだよね。アジ・ダハーカにダメージを与えるには、少々の電力じゃ通じないんじゃ……」
「電気なら、敵の周りにたくさんあります」
そう言って差し出したのは、スマホだった。
なるほど、そういうことか!
このスマホには、魔素を吸収して電力に変換するアプリがインストールされている。
魔素は、やっつけたドラゴン数千匹分がアジ・ダハーカの周辺にまだ漂っている。
私は亜光速でアジ・ダハーカの周辺を飛んで魔素をかき集めた。
魔素から変換されたスマホの電気を私が≪エナジードレイン≫で自身の体内にため込んでいった。
驚いたことに『勇者の鎧』の力によって、ほとんど無限に電気をため込むことができた。
『仙崎さん、それだけの電力量ですと一発撃っただけでそのレーザー砲は壊れてしまいます。チャンスは一回だけです』
「わかった」
とんでもないエネルギーを人間ほどの大きさしかない道具で出力するのだ。
それでも何兆ものドラゴンが集まったアジ・ダハーカにどこまで通用するかわからない。
「頭では効かない。となると、心臓を狙うべきだ」
先ほど同時に三つの頭を破壊したが、まったくダメージにならなかった。
「くらえ!」
私は狙いを定めて、レーザー砲を心臓があると思われる一点に放った。
弾けるような音とともに光が放たれ、アジ・ダハーカの胸部を貫いた。
「ギャアアアアアア!!!」
アジ・ダハーカは叫び声をあげた。
胸にはぽっかりと巨大な穴が開いて、むこう側の風景が見えた。
「やったか?」
レーザー砲はあまりのエネルギーで融け、一部は蒸発してしまっていた。
どこまでのダメージかわからないが、少なくとも苦しんでいる今がチャンスだ。
私は胸の穴に飛び込んで、剣で斬りつけた。
いや、体内に入り込んだのだから反射魔法は効かないかもしれない。
試しに一発爆裂魔法を食らわせる。
ドカーン!
よし、ここなら魔法も通じる!
「おおおおおおらああああ!!」
ありったけのMPを使って爆裂魔法をくらわし、開いた穴をもっと大きくしてやる。
そしてすぐさまにエナジードレインでHPとMPを回復させる。
敵のエネルギーを使ってまたしても無限攻撃だ!
だが、敵も黙ってやられてくれることはない。
壁面に突然ぎょろりと目玉が現れたかと思うと、ドラゴンの顔になって襲い掛かってくる。
ここが自分の体内だというのに、お構いなしで炎や魔法を繰り出してくる。
おかげで乱戦状態となり、仲間のドラゴンにやられるドラゴンさえも現れた。
そこには本体を守ろうとする必死さがうかがえた。
『仙崎さん!!』
「くそう。心臓らしきものがあると思ったが、ただのドラゴンの集合体らしい。こいつはいったいどうなっているんだ」
『仙崎さんが体内に入ってくださったおかげで、かなりのことがわかりました』
「そうか!」
『アジ・ダハーカはドラゴンの集合体だと言いましたが、体内にいる誰かが強力な力でドラゴンを集めてコントロールし、一つの生命体のように振る舞わせているのです』
「ガンダムのパイロットみたいに?」
『ガンダム……はい、エヴァンゲリオンでも巨人でもいいのですが、巨大ロボットを操縦している者がいると考えていただければ大丈夫です』
「では、そいつをやっつければ、アジ・ダハーカは倒せる?」
『きっと!』
「だけど、あまりに巨大だ。そんな奴を探してやっつけるのにとんでもなく時間がかかってしまう。その間に、空の裂け目から新しいモンスターがやってくるかもしれない!」
『はい。だから今さっきつくったアプリをメールで送信したので、それを新たにインストールしてください』
ピロリーン。
メールが届く。
『頑張ってください♡』
たったそれだけのメッセージだが、最後のハートマークが何となくキュンとくる。
そして添付ファイルを開くと、「インストールしますか?」とスマホが聞いてくるので、私は「OK」をタップする。
二〇秒ほどでインストールが完了する。その間も次々とドラゴンが襲ってくるので気が気ではなかった。
「できた!」
『そのアプリは、≪魔素の流れ探知機≫です』
「探知機?」
『はい。アジ・ダハーカを統括している者は、魔素を通じてコントロールしていることがわかりました。ですから、魔素がどのように流れているかその源流を探すことで、本当の敵の所在がわかるはずです』
「わかった」
早速アプリを起動する。
レンズ越しの風景が画面に映し出され、そこに重ねるようにサーモグラフィーのような赤や青、黄色で何かの分布を表している。その色の分布がある方向に流れているのがはっきりと見て取れる。
つまり、この流れをさかのぼっていけば敵の本体を見つけることができる。
しかし、この短時間でこんなアプリをつくってしまうなんて。さすが≪大賢者≫のスキルを身につけただけのことはある。
「こっちだな!」
見た壁面から次々とドラゴンが湧いてくる。
私は強力な爆裂魔法で吹き飛ばしながら突き進むが、数があまりに多くて動けなくなる。
しかし私はゆっくりとだがスマホを通じて、魔素を電力に変えて電気をため込んでいた。
「これでどうだ!」
電気を一気にまとわりつくドラゴンたちに流し込む。
「「「「「「「「ぎょわわわわわわー!!」」」」」」」」
周囲のドラゴンたちが感電する。
あまりに強烈なショックだったせいで、ドラゴンたちは死んで魔素になってゆく。
スマホで魔素を電力に、≪エナジードレイン≫で敵のHPを自分のHPやMPにしながら、私はさらにスマホ画面が示す源流を目指し、掘り進んでいった。
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