上 下
94 / 112
第4章

⑲ 秘甜蜜剣流奥義

しおりを挟む
 ぷしゅー。

 電車は仲間の待つ宿屋の近くの駅に着いた。

「一緒に降りるの見られたらいかんから、私はもういっこ先で降ります」

 私は宿屋までの道中、混乱する思考をどうにも制御できないでいた。

 道すがら、道路の反対からきれいな女性三人に手を振られた。

 誰だ、あの人たちは?

 私はぺこりと会釈だけした。

「……!」

 ああ、あの人たちは朝、お風呂で一緒になってしまった旅行客の人たちだ。



『これ! 何をぼうっとしておるか!』

 いきなり、私の内部から声を発する者があった。

『あの女たちが手を振ったのは、『次は本番しましょうね』って意味ではないか! きちんとこっちも手を振ってOKのサインを出さんか!!』

 この声は、≪剣技≫の勇者のかけら!

『んん~? 最近は調子いいではないか。ズッコンバッコンとかなりの頻度でできておるではないか。二十四時間三百六十五日やりまくるという理想には程遠いが、目標に近づいてきておるぞ』

 な、何を言っているんだ。



『そろそろわかってきたであろう? 貴様はひとりだけの女を愛することができぬ宿命にある。言い換えれば、ハーレムをつくるために生まれてきたのだ!』

 バカな、そんな宿命などあるものか。

『言うがよい。『俺はハーレム王になる!』と。貴様がそう宣言した段階で、我は貴様の肉体に戻ってやるぞ』

 彼の戦闘能力はすべての勇者のかけらの中でも図抜けている。

 彼が戻ってくることは、魔王を倒すためにも絶対に必要なことだろう。

 だけど、そんなこと宣言できるわけない。



『でゅふふふふふ』

 この度は別の声がした。

 しゃべり方が気持ち悪い。

『ぬ? 貴様は≪認識≫のかけらか! 初めて声を発しおった』

『むふふふ。エロゲーみたいなシチュエーション……エロゲーみたいなシチュエーション……よかったなー……』

 さっきの電車エッチのことだろうか?

 確かにエロゲームでは、ああいったシチュエーションが見られると聞いたことがあるが。

『次は、公衆便所に女を縛り付けて、皆に見せつけながらはめまくろうぜー』

 できるわけないだろ!!

 とんでもない嗜好だな。

『まあいいや、これからもたまにああいったことがありそうだから、俺も戻ろう』

 カッ……

 私の身体が光り、力が蘇ってくるのがわかる。



 これで、現在の六体のうち、五体までが私の肉体に戻ってきたことになる。

『ほほう、貴様に離反する者はあとは我のみか。しかし我は決して譲ることはない。ハーレム王を目指さぬ限り、絶対に協力などせぬからな』

 くそう、とんでもない頑固じじいだ。



 私は宿に戻り、鑑定結果をいづなに伝えた。

「呪いではないというのがわかっただけでもよかったと思います」

「そうだね。だけど、神の加護が強すぎて呪いのように働いてしまっているなんて。逆に打つ手がなくなってしまった」

 そうだ、打つ手がないのだ。



 がばっ!

 真夜中、私は飛び起きた。

 またしても強烈なエッチな夢だ。

 今日はできるだけ寝ないようにと思っていたのだが、いづなに気を使わせまいと横になっていたら、いつの間にか眠ってしまったらしい。

 ぐおおおお! いづなとエッチしたい!!

 だけどそれはいけないので、いづなを起こさないようにこっそり布団を出た。

 ひとまず水風呂で頭を冷やすか、あるいはトイレでオナニーだ。

 トイレはあまり長時間占有したくないが、一発で治まるとはとても思えない。

 男風呂で汚いおっさんがいることを期待しよう。きっと萎えるはずだ。

 夜は更けはじめたばかりだ。

 この時間なら、誰か入っているに違いない。



「あら、おじさん」

 ふと声をかけてきたのは、風呂で一緒になってしまったおばさんの一人だった。

 なんでか知らないが、お肌ぴちぴちでしわも消えて二〇代くらいにしか見えないけど。

「どうしたの、慌てちゃって……って、またおちんちんが大変なことになっちゃったのね」

 股間を押さえながら走っていたので、もろにばれてしまった。

「うふふふふ。おじさんのおかげで今日は絶好調だったのよ。いらっしゃいな。また抜いてあげるわよ」

「いやいや……せっかくの申し入れ、申し訳ないのだが……それを受けるわけには……」



 断るつもりだったのに、いつの間にかおばさん(お姉さん?)たちの部屋に連れ込まれてしまっていた。

 彼女らはお酒を飲んでいて上機嫌だった。

「やだ、おじさんじゃない。また会えてうれしい」

「座って、座って。一緒に飲みましょう」

 いけない、いけないんだ。

 なのに私はお酒を注がれていた。

 そして三人の女性はそれぞれが私に密着して座ってくる。

 すごくいいにおいがする。

「どうぞどうぞ、飲んで飲んで」

「はい、口移しで飲ませてあげるわ」

「どうぞ、わかめ酒よ」

 そんなことをしていれば後はなるようになるだけだった。

 4Pが始まった。

 もちろん、今回は本番ありで。



「おじさん、絶倫すぎ……」

「もう身体がもたない……」

「中出ししまくって、子供できてたら旦那になんて言おう……」

「ああ、でもやめられないわ……」

「素敵すぎる……こんなの旦那じゃ味わえない……」

「もっと頂戴……中に頂戴……」

 同じようなセリフを繰り返しながら、何度も私に抱きついてくる。

 ずっこんばっこん、ずっこんばっこん、ずっこんばっこん……

 いけないとわかっているのに、こうしないと昂ぶりが抑えられない。



 一時間後には、彼女たちはほとんど気絶するかのように眠ってしまった。

 部屋はもうどろどろでとんでもないことになっていた。

 だけど、あの夢を見た後だとまだまだ治まらない。

 どうすればいいんだ。

 くそう、眠っている女性をさらに襲うなんてできるわけがない。

 頭ではわかっているのに、身体は意識のない女性を犯そうと動いていた。

 やばい、これは洒落にならない!



「うふふふふふ。仙崎先生はさすがでらっしゃいます」

 その声は……

 声の方を向くと、そこには裸の京香ちゃんが立っていた。

 頭に何か変なものをくっつけている。

「さあ、今度は私を犯してください」

「ちょ……」

 声を出そうと思ったが、お尻を向けられてさらに驚いた。

 尾てい骨がある辺りから、つるんとした細い尻尾が生えていた。その先端にはハート形の棘というかちょっと大きくなった部分がある。

 そして、背中からは小さな羽が生えている。

 頭にくっついてるのは角じゃないか!

 まるで羊の角のような……

 まさかこれは!



「もしかして、京香さん……きみは、サキュバスに憑りつかれてしまったのか?」

 京香ちゃんはニヤリと笑った。

「憑りつかれた? そんなことあるわけないやないですか」

 そのまま私を椅子にして座るかのように腰を沈めると、ずぶずぶずぶと私のものが京香ちゃんの中に入ってゆく。

「なりたいと思ったら、なれたんです」

 ぎゅいいいいいいいん!!

 吸われる! 吸われる!?

 結合した部分から私の精がどんどん吸われていった。

 アジ・ダハーカの中でファラナークと結合したときに吸われた時のような生易しいものではない。あれもかなり凄まじかったけど。

 エネルギーを吸い取られるだけじゃない、物質的な精まで吸い取られているから本当に干からびてしまいそうだ。

 すごい勢いで吸われてゆく。

 どびゅ、どびゅ、どびゅびゅびゅ~。

「うわああああ!!」

「もっとください、仙崎先生。もっともっとください!!」



 京香ちゃんは私の腕をとると、自分のおっぱいを揉ませるように導いた。

 くっそー、このままではやられてしまう!

「≪ゴールドフィンガー・デトックス≫!!」

「あはああ! す、すごい!!」

 京香ちゃんの身体から紫色の気体が噴き出して消える。

「≪潮吹きデトックス≫!!」

 ぱんぱんぱんぱんぱん!!

 腰を使ってのデトックスを行った。

「うはああああああ!」

 京香ちゃんは結合したまま激しく潮を吹いた。



「もっと、もっとくださいぃ」

 げげげげげ、まだ欲しがるのかよ。

 効いてるけど、効いてない!!

 ぎゅいいいいいいいん!!

 ひ、干からびる…………!!



『愚か者め!!』

 この声は、≪剣技≫の勇者のかけら?

『こんなサキュバスごときにいいようにやられおって!』

「しかし、京香さんは異常なまでに性欲が強いんだ!」

『けぇい! 今こそ見せてくれよう。我が貴様から離れて三十年の間に極めた技を!』

 きゅいいいいいいいいいん。

 私の股間の「剣」にすごいエネルギーが蓄積されてゆくのがわかる。



秘甜蜜剣流ひてんみつるぎりゅう奥義! ≪天翔竜閃≫!!』



「ふぁうう?? 私の中に入っとる竜がうねる、うねる……竜が翔んどる??」

 びゅびゅっびゅびゅびゅびゅびゅっびゅっびゅびゅびゅびゅびゅびゅびゅー!!!

 ぐはあああ! すごい量が出てしまう!!

「あう、あうあうあう? なななな、なにこれー?? 飛ぶ……昇天すりゅー?」

 京香ちゃんは気を失った。

 前のめりに倒れ、ごろりと仰向けになると、お腹は妊娠したかのように膨れていた。



『竜が天に昇るときに発する超気持ちよくなるエネルギーを濃縮した精を、なおかつ大量に放出したのだ。いくら強欲なサキュバスであろうと気絶するほどの絶頂を味わおう』



「しかし、これは……こちらのダメージも甚大だ……」

『ふん、貴様の鍛えようが足らんのだ。我ならば百人のサキュバスでも相手してみせよう』

「…………」

 この勇者のかけらの言うことはどこまで信じていいんだろう。

 だけど、おかげで助かった。



「あへあへあへあへあへあへ……」

 サキュバスになった京香ちゃんは白目をむいてぴくぴくと痙攣していた。

 そこへ誰かがやってきた。

「うわ、紫色の魔素が見えたから何事かと思えば……」

 部屋に入ってきたのはみーはんだった。



「うわ、やっぱりこの子サキュバスに憑りつかれてるじゃん」

 みーはんは京香ちゃんの姿を見て言った。

「だけど……京香さんは憑りつかれたわけじゃなく、自分でなったと言っていた」

「はぁ? なりたいと思ってなれるなら誰も苦労しないわよ。まあ、サキュバスになりたい人がいるかどうかは知らないけど」

「やっぱり、何かおかしいよね」

「ちょっとここじゃ、話しにくいわね。私の部屋に来なさい」

 みーはんは、この部屋にこもるすごいにおいをスキルで消してから自室へ案内した。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

苗床の魔女

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:9

吉藁 氷霞はコスプレっ子でプロゲイマーである

青春 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...