神出鬼没の変態共

たいやき さとかず

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始動する学園生活

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 私立白峰学園。
 所謂"お金持ち"の子供達が通うエスカレーター式の男子校。誘拐等の犯罪の対策の為に山奥に隔離する様に存在する。
 勿論、"お金持ち"だけしか入れないわけではない。学力、運動、強いコネ。いずれかが飛び抜けている場合、特待生として入学でき、またそれがなくても一般生徒としても入ることができる。
 "頭の良い学校"、"運動のできる学校"。文武両道を地で行く世間からの評判がとても良い学校だが、いくつかの問題があった。その一つが性への考え方であった。思春期の男達が一所に集められ閉じ込められている状態からか、生徒達は同性へ恋慕や欲を当たり前のように抱くようになった。閉鎖空間な為、強姦などその手の犯罪もいくつか学園で起こっている。
 二つめは"差別的"であることだ。
「ホモが六割、バイが三割、ノーマルが一割。昨日も隣からアンアン聞こえた」
  "ノーマル"と呼ばれる一割の少年達は影のある顔をしてこう言う。
「マジか、やべえな」
 その言葉を聞いた者達は理解の出来ない状態に、分からないながらも同情の目を向ける。
 これが学園の外に出た"ノーマル"な少年達のいつもの流れであった。
 そんな白峰学園高等部には今年も沢山の"繰り上がり生徒"と"新入生"がいる。就職率が上がるというのがこの閉鎖空間に入る旨味の一つだからか、高等部及び大学には新入生が入りやすい。それを学校側も分かっているので、特待生の人数を増やしたり、一般の人間が入りやすいよう学費もできるだけ抑えめにしている。それでも私立。お金持ち学園と言われる施設なので高い。高いが、好条件の安定した将来とその時に得る経験や資金を考えると安い金額と言えた。昔の劣悪な学費に比べれば全然マシ、とは親世代の卒業生の言葉だ。

 季節は春。
 
 桜がハラハラと散るこの日、見事試験に受かった者達が正式に生徒と認められる式典が今から行われようとしていた。


・゜・☆・゜・


「新入生代表、武藤達弥」
「はいっ!」
 凛々しい声が響き渡り、その場は更に静まり返る。
 新入生代表は毎年学年トップの成績を残した者が勤める決まりとなっている。今年の学年トップである武藤達弥のテストの点数は500点中492点だった。腐っても名門校であるこの学園での歴代最高得点は484点。
 武藤達弥は記録を塗り替えた。
 保護者や将来会社の跡を継ぐ者達からの注目度はピカイチであった。
「―――――――新入生代表、武藤達弥むとうたつや
 武藤は舞台を降りて形式通りに頭を下げて席に戻る。 
 神聖なこの儀式に拍手など不粋だと言うように、司会を勤める教師は進行しだす。おかげで拍手しかけた者は大恥をかかずにすんだ。
「―――これにて、第75回私立白峰学園入学式を終了いたします。一同、起立」
 こうして、学園の入学式は一部例外を除いて形式通りに行われた。
 一部例外。
 それである新入生達は、来賓や在校生、保護者達が去ったホールで未だ座り続けたままだった。
「さて、改めて新入生諸君。この度は本学園に入学してくれてありがとう」
 爽やかな笑顔を生徒達に振り撒いたのは美中年、一部ではイケオジと呼ばれる中年男性だった。この中年男性こそ、理事長の白株方正しらかぶほうせいだ。
「では、宗形君」
「はい」
 白株の後ろから前に出てきたのは宗形算朖むなかたざんろう。白峰学園高等部の校長だ。
「さて、早速だが高等部の仕組みを簡単に説明したいと思う」
 エスカレーター式の学園といっても理事だけでは管理できないとして、各部署に校長という役職を昔からつけていた。校長職の定員は5人。それぞれが、生徒達にあった校則を作るため、保育所、初等部、中等部、高等部、大学では規則や仕組みが変わってくるのだ。
「高等部では、初等部、中等部と違い、他所の学校からやって来る人が多くなります。物や言葉、態度、考え方や価値観……慣れないものばかりで不安となるでしょう。その不安を取り除くため、一年次には境遇の似た生徒達を固めたクラス編成に、二年次には全体的に能力のバランスがとれたクラス編成に、三年次には進路と能力で分けたクラス編成になります」
 ここで声には出さないが可笑しい、と思う者が多くいた。そしてすぐに数人は納得する。
 一年次に、高等部での不安を減らそうとするなら寧ろ境遇は同じにしない方が効率がいい。お互いに理解し会うことができる。では何故しないのか。理由は二つあった。
 一つは、"お金持ち"には資金援助をしてくれるものが多い。"お金持ち"を固まらせれば効率良く特別待遇をとれるので媚びを売れるからだ。
 もう一つは、持ち上がりの生徒達だ。その殆んどが"お金持ち"な為、一般の生徒を見下す傾向がある。そんな生徒をいきなり外部からの生徒と同じクラスにしてしまえば、対立やいじめが起きる可能性が高い。
「クラスは、A組から始まり――――――」
 意図を察した数人は、生暖かい目で宗形を見ながら説明を聞いた。
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