ホステスが異世界で巫女になったらしい

夢枕

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第1章 異世界召喚

プロローグ

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 私の名前は「理世」。

 本名ではなく源氏名だけどね。

 私は高校を卒業したあとしばらく小さな会社で働いていたけど、所謂パワハラとセクハラが面倒になって夜の世界に転職した。

 元々なぜか高圧的な人に目をつけられやすくて、お給料日に上司から給料が欲しければ○○しろみたいな高圧的なセクハラが日常茶飯事だったし、どうせそういう人の相手しなきゃいけないなら、それでお金が発生した方がいいでしょ?
 ホステスとして仕事をしていると、都会のお店にスカウトされて5年ほどは高級店と言われるお店で働いていたんだけど、そこで気づいたのよね。

 私、感情が人よりも希薄みたい。

 まぁ、薄々は気付いてたのよ?
 全く無いわけではないんだけど、周りの女の子達を見ていると表情がコロコロ変わってとても楽しそうだったり、何か嫌な事があって分かりやすくイライラしていたり、怒りのあまり物に当たる子なんかもいるわけで。

 嬉しい事があっても表情筋は仕事しないし、腹の立つ事があっても小さめなため息が出るくらいで、涙なんて物心ついてからは流した覚えもないのよね。

 三十路に手が届きそうになった頃、父の病気が発覚して、私は都会のお店を辞めて父が住む実家に帰り、近所のお店で働き始めた。
 感情が希薄でも、病気の父を一人にしておくほど薄情じゃない。

 ある日父は子犬を連れて帰ってきた。

 きな粉色のけむくじゃらにしか見えなかった生き物は、隙あらばイタズラを繰り返し、夜になればケージの中で寂しそうにクンクン鳴き、お風呂に入れれば大量の水しぶきを浴びせてきた。
 私は「きなこ」と名付けた犬の巻き起こす騒動に毎日振り回されたわ。

 父が亡くなったことで、きなこがたった一人の家族になった。
 そうなると必然的に溺愛しちゃうわよね。
 おかげでもともとほとんど恋愛には興味がなかったけど、私の少ない愛情はすべてきなこに注がれた。
 
その後また家族が増えたけど、自分の少ないと思っていた愛情がその子の分倍増したわ。
 といっても、他に向ける分は相変わらずないんだけど。

 私は私の大切な家族以外はどうでもいいと割り切って生きていこうと思うようになっていたのよね。
 おかげで仕事で後輩がミスをしても気にならないし、酔ったお客さんにおう吐物をぶちまけられても笑顔で接客できるものだから、いつのまにか菩薩ホステスなんてあだ名がついていたわ。

 そこは天使じゃないの?と思わなくもなかったけど、そういうのって気にするだけ無駄じゃない。
 平穏にきなこたちと一緒にいられるなら、他のことなんてどうでもいいのよ。

 その私が今、子供くらいの身長なのに、白髪と白ひげを地面まで伸ばしたお爺さんに向かって文句を言い、あからさまに不機嫌になっている。

「ちょっと待ちなさい!!!
 どうして私があなた方を助けないといけないの!?
 初めて会ってものの数分で、寄ってたかって自分たちを救えとか、あれをやれ、これをやれと捲し立てるなんて不躾どころの話じゃないんじゃない?
 しかも火を寄越せって何!?火くらい自分で起こしたらいいじゃないの!!」

 こんなに怒っている自分に驚いたけど、色々意味の分からないおかしな事が立て続けに起きて、私自身の余裕が無くなっていたのかもしれない。私もまだまだだと反省。

 そもそもおかしな事が頻発した原因はウラノアという神にある。
 私が働いていたお店のお客さんの1人だったのだけど、実はそれが神だったらしく、なんの説明もなく勝手に私を異世界に召喚するなんて不埒なまねをしてくれたの。

 お客様は神様だなんてよく聞くフレーズだけど、まさか本当に神様だって意味で使っている人なんているわけないじゃない?
 私も結構適当に対応してたんだけど、妙にそれが気に入られちゃったみたいなのよね。

 ネズミが話しかけてきたり、きなこがママと呼びかけてきたり、愛おしい息子くんが他人行儀に会釈してきたり、胡散臭い話し方のネズミがびっくりするほど愛くるしかったり、私の存在が忘れ去られたり……。いくら感情が希薄だと言っても限度ってものがあると思うの。

 あ~あ。目の前の人達が驚いて黙りこんじゃったわ。
 これ、どう収拾つけたら良いのかしら。

 そもそも、どうしてこうなったんだっけ。
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