4 / 48
Side:氷川ゆいな 隠蔽工作
しおりを挟む
※氷川ゆいな視点
ダンジョンの第一階層に残されていた死傷者が運び出されていく。
ダンジョン封鎖作戦成功後、ダンジョンの深層階をうろつくだけだった強個体の魔物が、今日に限って浅い階層まで上がって暴れ回った。
結果、死亡者20名、重軽傷者120名というダンジョン配信事業が開始されて以降、初めての重大な探索事故が起きた。
今日暴れ回っていたエンシェントドラゴンは、明らかに自分がチームを率いて戦ってきた個体とは別格の強さで、明らかに力の差を感じた。
自分が生き残れたのも、颯爽と現れたあの人が、エンシェントドラゴンを一太刀で倒してくれたおかげだ。
彼がいなければ、自分はそのまま倒され、ダンジョンから飛び出したエンシェントドラゴンによって、もっと被害がひろがっていただろう。
エンシェントドラゴンの死骸に視線を送ると、助けてくれた彼の無駄のない太刀筋が思い出された。
深層階から這い出したエンシェントドラゴンは、今までの個体がかすむくらい強い力を持った個体をあの人は一刀のもとに断ち切って見せたのだ。
はっきり言って、自分とはレベルが違いすぎた。
彼から見たら、わたくしの戦闘術など子供の遊戯でしかないだろう。
それくらい、あの斬撃は素晴らしく無駄を省いた必殺の一撃だった。
でも、名前を聞けずじまいだった……。
探索者なら協会の名簿を調べれば名前は分かるはず。
彼は未熟者に名乗る名はないと言ってたけど、せめて名前だけでも知りたい。
助けてくれた彼のことを思い出していたら、背後から声がかかった。
「ゆいな、無事だったようだな。この規模の探索事故は初めてだ。これじゃあ、うちも無傷じゃ済まない」
声をかけてきたのは、血の繋がらない父親であり、日本探索者協会会長兼Tチューブ配信運営会社『ダンジョンスターズ』の社長職を務めている氷川武だった。
母がこの男と再婚した時は、自分が物心つく前。
その後、5歳で母が亡くなったけれど、なぜこの男と再婚したのかは結局聞けずじまいだった。
それに、この男から父親らしいことをしてもらった記憶はほとんどない。
守銭奴、サイコパス、マッドサイエンティスト、他にもいろいろと悪名を持つ父であった。
自分も表情を出さず、笑わないことで周囲から『氷帝』と呼ばれているため、血は繋がっていないが、案外似た者同士なのかもしれない。
「知っている探索者仲間や駆け出しの探索者が、何十人か亡くなっています。会社の心配よりも先に、亡くなった方へのお悔やみとしっかりとした補償を確約してあげるのが筋では?」
言われたくないことを他人から言われると、露骨に機嫌が悪くなる癖は変わらないままだ。
ただでさえ、『ダンジョンスターズ』は人の生き死にを見せ物にして、あくどく金を稼いでいると言われているのだし、こんな重大な事故が起きた時くらい、少しは神妙な顔をしてて欲しい。
「ゆいなに言われなくてもそれくらい分かっている。補償に関しては、すでに事故調査部が動いてる。日本政府からも、調査員が派遣されてくるから、お前にも証言してもらうことになるだろうな」
ダンジョン配信が事業として開始され、探索中の怪我や死亡事故は起きていたが、これほどまでの大規模な事故には初めて直面している。
会社と政府の調査に協力し、このような重大事故が再発しないよう対策をしっかりと話し合わないといけない。
「承知しました。でしたら、もう一人、調査に協力してもらいたい人がいます――」
エンシェントドラゴンを倒した彼を呼び、事故の被害拡大防止に貢献したことも報告しないと。
討伐された魔物の死骸を見ていた父が、こちらの言葉が聞こえていないかの様にふるまう。
「それにしても、ゆいながこの凶暴なエンシェントドラゴンを倒してくれたとはな。しかも、こんな鮮やかな斬り口なんか見たことないぞ。これでまた氷帝の討伐伝説が1つ生まれたな。今回の犠牲者の名は、氷帝の伝説とともにきっと語り継がれるぞ」
こちらを見ない父が発した意味不明な言葉に言葉に、不穏さを感じた。
事実とは、明らかに異なりすぎることを言ってる。
ダンジョンの第一階層に残されていた死傷者が運び出されていく。
ダンジョン封鎖作戦成功後、ダンジョンの深層階をうろつくだけだった強個体の魔物が、今日に限って浅い階層まで上がって暴れ回った。
結果、死亡者20名、重軽傷者120名というダンジョン配信事業が開始されて以降、初めての重大な探索事故が起きた。
今日暴れ回っていたエンシェントドラゴンは、明らかに自分がチームを率いて戦ってきた個体とは別格の強さで、明らかに力の差を感じた。
自分が生き残れたのも、颯爽と現れたあの人が、エンシェントドラゴンを一太刀で倒してくれたおかげだ。
彼がいなければ、自分はそのまま倒され、ダンジョンから飛び出したエンシェントドラゴンによって、もっと被害がひろがっていただろう。
エンシェントドラゴンの死骸に視線を送ると、助けてくれた彼の無駄のない太刀筋が思い出された。
深層階から這い出したエンシェントドラゴンは、今までの個体がかすむくらい強い力を持った個体をあの人は一刀のもとに断ち切って見せたのだ。
はっきり言って、自分とはレベルが違いすぎた。
彼から見たら、わたくしの戦闘術など子供の遊戯でしかないだろう。
それくらい、あの斬撃は素晴らしく無駄を省いた必殺の一撃だった。
でも、名前を聞けずじまいだった……。
探索者なら協会の名簿を調べれば名前は分かるはず。
彼は未熟者に名乗る名はないと言ってたけど、せめて名前だけでも知りたい。
助けてくれた彼のことを思い出していたら、背後から声がかかった。
「ゆいな、無事だったようだな。この規模の探索事故は初めてだ。これじゃあ、うちも無傷じゃ済まない」
声をかけてきたのは、血の繋がらない父親であり、日本探索者協会会長兼Tチューブ配信運営会社『ダンジョンスターズ』の社長職を務めている氷川武だった。
母がこの男と再婚した時は、自分が物心つく前。
その後、5歳で母が亡くなったけれど、なぜこの男と再婚したのかは結局聞けずじまいだった。
それに、この男から父親らしいことをしてもらった記憶はほとんどない。
守銭奴、サイコパス、マッドサイエンティスト、他にもいろいろと悪名を持つ父であった。
自分も表情を出さず、笑わないことで周囲から『氷帝』と呼ばれているため、血は繋がっていないが、案外似た者同士なのかもしれない。
「知っている探索者仲間や駆け出しの探索者が、何十人か亡くなっています。会社の心配よりも先に、亡くなった方へのお悔やみとしっかりとした補償を確約してあげるのが筋では?」
言われたくないことを他人から言われると、露骨に機嫌が悪くなる癖は変わらないままだ。
ただでさえ、『ダンジョンスターズ』は人の生き死にを見せ物にして、あくどく金を稼いでいると言われているのだし、こんな重大な事故が起きた時くらい、少しは神妙な顔をしてて欲しい。
「ゆいなに言われなくてもそれくらい分かっている。補償に関しては、すでに事故調査部が動いてる。日本政府からも、調査員が派遣されてくるから、お前にも証言してもらうことになるだろうな」
ダンジョン配信が事業として開始され、探索中の怪我や死亡事故は起きていたが、これほどまでの大規模な事故には初めて直面している。
会社と政府の調査に協力し、このような重大事故が再発しないよう対策をしっかりと話し合わないといけない。
「承知しました。でしたら、もう一人、調査に協力してもらいたい人がいます――」
エンシェントドラゴンを倒した彼を呼び、事故の被害拡大防止に貢献したことも報告しないと。
討伐された魔物の死骸を見ていた父が、こちらの言葉が聞こえていないかの様にふるまう。
「それにしても、ゆいながこの凶暴なエンシェントドラゴンを倒してくれたとはな。しかも、こんな鮮やかな斬り口なんか見たことないぞ。これでまた氷帝の討伐伝説が1つ生まれたな。今回の犠牲者の名は、氷帝の伝説とともにきっと語り継がれるぞ」
こちらを見ない父が発した意味不明な言葉に言葉に、不穏さを感じた。
事実とは、明らかに異なりすぎることを言ってる。
3
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~
仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。
祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。
試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。
拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。
さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが……
暫くするとこの世界には異変が起きていた。
謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。
謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。
そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。
その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。
その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。
様々な登場人物が織りなす群像劇です。
主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。
その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。
ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。
タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。
その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる