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第11話 一撃必殺論
しおりを挟む俺たちは入場受付場で、探索者免許を出し、預けてあった武器を返してもらい、ロビーと言われているダンジョンの入口前にある待機所みたいなところに来た。
周囲の探索者たちからは、好奇の視線が送られてくる。
前回、初めてハイシンした時は、これほどまでに探索者たちからの視線を集めてはなかったはずだが……。
この世界では、エンシェントドラゴンごときを倒した程度で、こうも周囲の視線が変化するのか。
好奇の視線を向けてきた探索者を睨むと、相手はすぐに視線を外し、逃げるように別の場所に移動していく。
「はい、じゃあ、仕切り直しっす! サブローししょーの教えてくれた魔法せいで、地面に新しい穴を追加しちゃった件は内緒にしておいてくださいね」
肩にサラマンダーを乗せたまま、葵がハイシンの映像を映す『どろーん』に向かってにこやかな笑みを浮かべた。
コメントには、葵の笑顔に騙された者たちによる返事が一気に流れ出す。
見てくれに騙される愚か者たちめ……。
「いや、あれくらい普通だぞ。お前が最初に出した火の玉のがしょぼすぎるだけだ」
「サブローししょーは、ああ言ってるけど、そうなんすか? サラちゃん?」
葵の肩に乗っているサラマンダーは首を振っていた。
「うんうん、さっきのは、わりとあたしの負担が大きい魔法ってわけっすね。今のあたしだと、サラちゃんの力を借りて出せて数発で気絶する。ふむうむ」
サラマンダーのやつ、葵のことを相当気に入っているな。
精霊はわりと人馴れしないんだが。
それだけ、葵とは相性がいいのか。
さっきの魔法も精霊の力を借りて発動させてはいるが、精霊を召喚する詠唱では、精神力とも言える魔力を消費するはずだが、葵は意外と平気そうな顔をしていたわけだしな。
力づくで精霊を召喚すれば、するほど、こっちの魔力の消費は多くなるわけだし。
サラマンダーとの相性を見てると、火属性魔法を使う場合、葵の魔力消費はかなり低いと見てもいいか。
あれだけサラマンダーに好かれてるとなると、他の属性の精霊とは相性が悪いかもしれんな。
氷属性は絶望的だろう。
火属性精霊が好む術者を忌み嫌うのが氷属性精霊。
葵が氷属性の魔法を使ったとしても威力に反して魔力の消費は大きくなってしまうというところか。
「サラちゃん的には、火の矢とか火球がおすすめっすか。これなら、あたしでも連発してもわりと大丈夫って感じなんすね」
肩の上にいるサラマンダーが、葵の問いに頷き返した。
「そんな低位の魔法など、敵を一瞬で消し炭にできない威力しかだせんぞ。戦士としてはあり得ない魔法だ」
低位の魔法では雑魚すら倒すのに数発を要する。
魔法の師である母から、魔法は敵は一撃で倒し切れるやつを必ず選択しろと常に言われ続けていた。
実際、高威力の魔法で敵を倒し切れば、新たな敵が現れても慌てることなく対処ができるのだ。
これが、低威力の魔法でちまちまと敵を削っていると、新たな敵が洗われた時に対処ができない。
対処ができなければ、敵は攻撃の自由を得て、こちらはどんどんと不利になる。
そのまま戦闘が続けば、敵に攻撃の自由を与えたこちらが負けるのだ。
だから、敵は高威力の魔法を使い、一発で消し炭にせねばらならない。
この考えを徹底したことで、俺は地獄のような魔物との戦いを生き抜いてきた。
「俺が数々の戦いを通して体得したことを言い現わす良い言葉があった。それを葵に教えてやろう。『一撃必殺』だ!」
スーパータカミの従業員休憩室の中にあった書物にこの『一撃必殺』の意味が書いてあった。
ただ一撃で相手を殺すという思想である。
これこそが、俺の体得してきた戦闘術の全てを凝縮した言葉だ。
「じゃあ、サブローししょーに二撃目はないってことっすか?」
「ああ、そうだ! 二撃目を要すれば、俺が負ける時だろう。だから、最強の魔物であるスライムには、最大級の魔法をぶちこんだ!」
「すごく分かってあげたい気もするんすけど、分かっちゃいけない気がするっす」
俺の持論を聞いた葵が呆れたような顔をしている。
コメントも『スライム全力おっさん』とか『一撃の漢』といったものが大量に流れていった。
「これだから、素人は……。まぁ、いい。葵も何度か実戦を経験すれば、俺の持論が正しいと理解できるはずだ」
「まだ、あたしはデビューしたての探索者っすよ。免許取り立ての初心者として扱ってもらいたいっす」
「戦場の初心者も玄人も関係ない。生き残りたいなら、生き残る術を磨け」
魔物は初心者だろうが玄人だろうが関係なく襲ってくる。
自分は初めて戦場に出た者だから見逃してくれと言っても、相手に話は通じない。
葵を戦士として鍛え上げる気はないが、いちおう弟子であるため、戦士としての最低限の心構えは、彼女に伝えておいた。
「サブローししょー厳しいっす! スパルタっす!」
「もう、口を閉じろ。これからダンジョンに侵入する。とりあえず、今日はダンジョンの雰囲気を味わうだけにしておくから、俺の後ろについてこい」
「りょ、りょーかいっす。じゃあ、いっきますよー!」
ロビーにいた探索者たちとともに、騒がしい葵を連れ、一週間ぶりに開放されたダンジョンの中に入っていくことにした。
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