【悲報】JKヒモ勇者様、初回配信中にうっかり『氷帝』と呼ばれた美少女配信者を助け、エンシェントドラゴンを一閃してバズってしまう。

シンギョウ ガク

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Side:氷川ゆいな 精霊という存在

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 ※氷川ゆいな視点


 三郎様や弟子の方たちとの配信後、会社に戻るとダンジョンの封鎖解除やプラーナに関する各国からの問い合わせが殺到していた。


 三郎様のプラーナ式戦闘術は、世界各地に配信され、多くの探索者に驚きを与えたことだろう。


 自分自身も生命の精霊ガイア様を取り込んだ実体験がなく、配信を見ていただけなら半信半疑だったと思う。


 でも、体感した今はあのプラーナ式戦闘術を極めた先にある強さに可能性を感じている。


 社長就任は仕方なかったけれど、探索者引退宣言は時期尚早だったかもしれない。


 そんなことを頭の片隅で考えながら、いろいろと慌ただしかった業務を終え、自室に戻ったのは夜も更けていた。


 ベットに腰かけたところで、ふわふわと部屋の中を飛んでいたフロストフェアリーに声をかけた。


「お待たせしました。どうぞ、こちらへ」


 差し出した手に、フロストフェアリーが止まる。


 小さな人の背から蝶のような羽根が生えた精霊。


 彼女らが、長年ノイズと言われた声の持ち主だった。


 三郎様が施してくれた魔法により、彼らの存在が認知できるようになった。


 フロストフェアリー以外にも、精霊の姿は見えるようになったが、彼らは積極的にこちらに話しかけてくることはない。


「ゆいなは仕事しすぎね。もうちょっとわたしたちと遊んでもいいと思うの」


 手に止まったフロストフェアリーが、こちらを見て頬を膨らませて少し怒っている。


 お人形みたいに可愛い。


 ちょっと撫でてみてもいいかしら。


 手に止まったフロストフェアリーの頭を優しく撫でてみる。


 ひんやりと冷たい感触が手のひらを通じて伝わってきた。


「ゆいなには、昔からずっと声はかけてたのよ。それこそ、小さい時からね」


「申し訳ありませんでした。今日まで皆様の存在に気付くことさえできていなかった未熟者でしたので」


 頭を撫でられたフロストフェアリーは、目を閉じて、こちらの手に自らの手を添えた。


「この世界の人間たちは、わたしたちの声や姿が見えないらしいものね。でも、サブローの力でゆいなと喋ったりできるようになって嬉しいわ」
 

「わたくしも、姿が見えるようになり、おしゃべりできるようになって大変嬉しく感じております」


「もっと早く、声や姿が見えてたら、ゆいなにもっと力を貸せてたのだけどね……。そうすれば、あんな大きな犠牲も出さず、もっと簡単に魔物は排除できてたはず」


 手を添えてくれたフロストフェアリーは、哀しそうな顔をこちらに見せた。


 たしかに三郎様が指導して、初心者の葵さんが見せたあの桁外れの魔法があれば、ダンジョン封鎖作戦はもっと犠牲が少なく完遂できた可能性はある。


「そうですね。でも、貴方たちの力は強すぎるかもしれません」


「そう? 精霊はわりと気ままだから力を貸さない場合も多いわよ。わたしは、ゆいなが可愛いからいつでも力を貸してあげるけどね」


「わたくしは探索者を引退した者ですので……。もう、お力を借りることはないと」


「そうかな? 今日、サブローのところで生命の精霊ガイアから力を借りた連中に倒されてしょんぼりしてたよね?」


 ネクストジェネレーションとして、特性を授かった者の身体能力は、常人と比べ何十倍。


 プラーナ式戦闘術の指導を受けているとはいえ、一般人相手に普通に戦って負けるとは思ってなかった。


 サブロー様のあの発言は、明らかにこちらの実力を過小評価している発言だと思っていたからだ。


 でも、結果は大人と子供の喧嘩くらいの力の差だった。


「ゆいなの戦い方はお遊戯。サブローは戦士の戦い方。それくらいの違いがあるのが分かったでしょ?」


 フロストフェアリーは、こちらを見てため息を吐いている。


 彼女の言葉は正論だった。


 あのプラーナ式戦闘術を極め、精霊を使役した魔法も完璧に使いこなす三郎様と自分を比べたら、そう言われてもしょうがない。


「はい……」


「まぁ、でもゆいながそんなに落ち込む必要はないわ。わたしの声を自力でうっすら聞き取っているからね。生命のガイアが気に入ってくれるかは分からないけど、わたしはゆいなが大好きよ」


「ありがとうございます……」


 もう一度、手に止まっているフロストフェアリーの頭を優しく撫でる。


「精霊は気に入った人間にしか力を貸さない。けど、気に入られたら持ってる力は何十倍にも強化できるわ」


 手に止まっていたフロストフェアリーは、背中の羽根をはばたかせると飛び立ち、肩に乗った。


「だから、安心して。ゆいなにはわたしがついてるからね」


「ありがとうございます。えーっと、なんとお呼びすればいいんでしょうか?」


「ん? わたし。精霊に個別の名はないから好きに呼んで」


 ずっと特性を使うたび、かすかに聞こえていた声の主のため、肩に乗るフロストフェアリーにとても親近感を抱いている。


 お人形さんみたいに可愛いし、フロストフェアリーさんから、名前を取ってアリーさんとかどうかしら。


 喋り方も大人っぽいし、精霊ってことできっと自分よりも年上だから、アリー姉さんとかがよさそう。


「で、では。アリー姉さんって呼ばせてもらっていいでしょうか。わたくし、兄妹がいないので、ずっと姉が欲しかったんです」


 肩から飛び立ったフロストフェアリーが、目の前に飛んでくると、小さな指先をこちらの鼻の先に押し当ててきた。


「いいわ。でも、わたしをアリー姉さんって呼んでいいのはゆいなだけだから。よろしく!」


「は、はい! では、アリー姉さん、これからもわたくしにご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします」


「はいはい、いいわよ。でも、魔法を使う時はちゃんと詠唱を使ってお願いしてね。ゆいなの詠唱がなければ、わたしの力を貸してあげられない」


「はい! 承知しましたー!」


「じゃあ、今日は遅いから寝た方がいいわよ。夜更かしは美容の大敵」


 アリー姉さんが言ったとおり、今日はいろいろとありすぎてかなり疲れた。


 ベッドに降り立ったアリー姉さんを潰さないよう、倒れ込むとそこで意識を失った。
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