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美咲の彼氏
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数日後、蒼介は昼休憩中、新人の瀬文武尊に声をかけられた。
「日下部課長、隣いいですか?」
蒼介が顔を上げると、武尊は明るく元気に笑いながら、唐揚げ定食の大盛りをトレイに乗せて立っていた。
「ああ、どうぞ」
武尊は蒼介の隣に腰を下ろすと、サラダや味噌汁に目もくれず、カラッと揚がった唐揚げに箸を伸ばした。
その食べっぷりの良さに、蒼介は思わず目を細める。
「凄い量だな。」
「はい、最近特に唐揚げにハマってまして」
武尊は照れくさそうに笑いながら、次々と唐揚げを口に運ぶ。
「つい最近、カレー味の唐揚げを食べたんですけど、これがもう絶品で」
「カレー味か……」
「そうなんですよ。普通の唐揚げも美味しいですけど、スパイスが効いてて、ご飯が進むんです」
武尊は目を輝かせながら語る。
「他にも、きんぴらごぼうとか肉じゃがとか。」
「へえ、若いのに渋い趣味だな」
蒼介は微笑む。
「自炊でもしてるのか?」
「いえ、僕は料理下手で」
武尊は少し照れたように首を振った。
「タッパに入れて持ってきてくれたんです。きんぴらなんて、日持ちするからって小分けにして冷凍した状態でくれて」
「優しいお母さんだな。」
「いえ、彼女です。」
その瞬間、蒼介の脳裏に、ある可能性が過った。
「……その彼女って、もしかして」
「あれ、聞いてなかったですか、日下部課長?」
武尊はきょとんとした顔で箸を止めた。
「美咲さんと付き合って、もう3ヶ月になるんです」
蒼介は思わず箸を取り落としそうになった。
「え……美咲と?」
「はい」
武尊はにこりと笑う。
「美咲さん、料理本当に上手ですよね。この間、カレー味の唐揚げをタッパに入れて持ってきてくれて、これがまた絶品で。」
蒼介はしばらく言葉が出なかった。娘に彼氏がいたこと──それに、千紘が作った料理を自分が作ったかのように振る舞っていた事に衝撃を受けた。
「日下部課長?」
武尊が少し心配そうに声をかける。
「ああ、いや……」
蒼介は咳払いをして、複雑な表情を浮かべた。喜ぶべきなのか、寂しがるべきなのか。
年頃の娘に彼氏がいる。それは親として嬉しいことのはずなのに、胸の奥に小さな棘が刺さったような感覚があった。
「驚きました?」
「ああ……まぁ、驚いた」
蒼介は深く息をついた。
「美咲がそんなに料理ができるとは知らなかったよ。」
「いやぁ、最高の彼女に出会えて僕、幸せです。」
武尊は無邪気に笑う。
「日下部課長も、奥さんの味を受け継いでるって実感します?」
蒼介は気まずそうに頷いた。
それは娘まで近い将来、自分の手から離れていく予兆のようにも思えた。
「日下部課長、隣いいですか?」
蒼介が顔を上げると、武尊は明るく元気に笑いながら、唐揚げ定食の大盛りをトレイに乗せて立っていた。
「ああ、どうぞ」
武尊は蒼介の隣に腰を下ろすと、サラダや味噌汁に目もくれず、カラッと揚がった唐揚げに箸を伸ばした。
その食べっぷりの良さに、蒼介は思わず目を細める。
「凄い量だな。」
「はい、最近特に唐揚げにハマってまして」
武尊は照れくさそうに笑いながら、次々と唐揚げを口に運ぶ。
「つい最近、カレー味の唐揚げを食べたんですけど、これがもう絶品で」
「カレー味か……」
「そうなんですよ。普通の唐揚げも美味しいですけど、スパイスが効いてて、ご飯が進むんです」
武尊は目を輝かせながら語る。
「他にも、きんぴらごぼうとか肉じゃがとか。」
「へえ、若いのに渋い趣味だな」
蒼介は微笑む。
「自炊でもしてるのか?」
「いえ、僕は料理下手で」
武尊は少し照れたように首を振った。
「タッパに入れて持ってきてくれたんです。きんぴらなんて、日持ちするからって小分けにして冷凍した状態でくれて」
「優しいお母さんだな。」
「いえ、彼女です。」
その瞬間、蒼介の脳裏に、ある可能性が過った。
「……その彼女って、もしかして」
「あれ、聞いてなかったですか、日下部課長?」
武尊はきょとんとした顔で箸を止めた。
「美咲さんと付き合って、もう3ヶ月になるんです」
蒼介は思わず箸を取り落としそうになった。
「え……美咲と?」
「はい」
武尊はにこりと笑う。
「美咲さん、料理本当に上手ですよね。この間、カレー味の唐揚げをタッパに入れて持ってきてくれて、これがまた絶品で。」
蒼介はしばらく言葉が出なかった。娘に彼氏がいたこと──それに、千紘が作った料理を自分が作ったかのように振る舞っていた事に衝撃を受けた。
「日下部課長?」
武尊が少し心配そうに声をかける。
「ああ、いや……」
蒼介は咳払いをして、複雑な表情を浮かべた。喜ぶべきなのか、寂しがるべきなのか。
年頃の娘に彼氏がいる。それは親として嬉しいことのはずなのに、胸の奥に小さな棘が刺さったような感覚があった。
「驚きました?」
「ああ……まぁ、驚いた」
蒼介は深く息をついた。
「美咲がそんなに料理ができるとは知らなかったよ。」
「いやぁ、最高の彼女に出会えて僕、幸せです。」
武尊は無邪気に笑う。
「日下部課長も、奥さんの味を受け継いでるって実感します?」
蒼介は気まずそうに頷いた。
それは娘まで近い将来、自分の手から離れていく予兆のようにも思えた。
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