25年目の真実

yuzu

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真実

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 その時、階段の上から足音が聞こえた。

「もう、やめなさい。」

 か細い声が、張り詰めた空気を裂いた。
 三人が同時に振り向くと、階段の手すりに手をかけ、腰をさすりながらゆっくりと降りてくる『小料理屋はるの』の女将の姿があった。
 
「母さん……」

 千紘が慌てて女将の前に立ち塞がる。

「階段を降りる時は声をかけてってあれ程……」

 膳が慌てて駆け寄ろうとしたが、女将は手を上げて制した。

「大丈夫……杖があるから。」

 女将は最後の段を降り、杖をついて店の中へ入ってきた。
その足取りは覚束なく、一歩ごとに息を整えている様子だった。

「母さん、無理しないで……」

 膳が立ち上がり、母親の腕を支えた。
 女将は膳の手に自分の手を重ね、優しく微笑んだ。
そして、蒼介の方へ体を向ける。

「日下部さん、でしたね」

 その声は穏やかで、いる気がした。

「はい」

 蒼介は反射的に背筋を正した。

「遠いところを何度も来てくださって」

 女将はゆっくりと椅子に腰を下ろし、大きく息をついた。

 千紘がカウンターの向こうで湯を沸かす音が聞こえ始め、店内に重い沈黙が落ちた。

 やがて、女将がゆっくりと口を開いた。

「私はこの店の女将で、ソノ子と申します。日下部さん。千紘が……この子が、長い間お世話になっていた事、感謝申し上げます。」

 蒼介は声もなく頷き、静かにカウンターの椅子に腰掛けた。

 禅の顔が強張る。

 ソノ子は優しく千紘の手を握った。

「日下部さんが納得できないのは当然です。」

「母さん……」

 膳の声が震えている。

「やめてくれ……」

 ソノ子の声は静かだったが、そこには強い意志があった。
 禅は唇を噛んで俯いた。
 湯気が立ち上る湯呑みには、誰も手をつけようとはしなかった。

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