25年目の真実

yuzu

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真実

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「日下部さん」

 ソノ子は湯呑みに落とした視線をまっすぐ蒼介に戻し、一拍置いて真剣な顔で蒼介を見つめた。

「あの日の事、私からもお話いたします。」

 禅は遠くを見るような表情をして、諦めたように小さく溜息をついた。


◇◇◇


 『あー……参ったな。さっきの所、曲がるの早過ぎた。』

 ナビ音声の示す一本手前を曲がってしまい、街から外れて徐々に山道へ上がっていく。Uターンできる広さも無い道を進みながら申し訳なさそうにする禅に、こう言いました。

『いいじゃない。少しくらい寄り道してもバチは当たらないわ』

申し訳なさそうな表情だった膳の顔が緩んだ。

『母さんは呑気だなぁ。約束の時間に間に合わないって、友達には連絡しておいてよ。』

『ふふっ。大丈夫よ。早めに家を出たし。十分間に合うわ。』
『ならいいけど。』

 膳はカーオーディオから流れる流行りの曲を鼻歌で曖昧に口づさみながら、車窓を流れる景色を眺めていた。

 暫く進んだところで、携帯電話の着信音が鳴り響いた。

着信は千紘から。

『もしもし?』
『あ、母さん?財布を忘れてるって、さっき膳から連絡来たの。今追いかけてるって伝えてくれる?』

鞄を開けてみれば、確かに財布は入っていなかった。

『わるいわね千紘。待ってるわね。』

 話を聞いていた膳はポケットパークに気付き、車のハンドルを切った。車を停車させると、写真と位置情報を千紘に送ってからシートベルトを外した。

『外の空気を吸ってきてもいいかしら。』

禅にそう言うと、返事も聞かずに車を降りた。

『車から離れるなよ。なんかあったら声かけて。』

 座席を後ろに倒し、腕組みをして目を瞑る禅を一瞥し、大きく深呼吸した。

 眼下に広がる景色は絶景で、視力の乏しい私でも思わず深呼吸をして感嘆のため息を溢した。それからスマホで写真を撮り始めた。

 (曇りじゃ無い日に、今度は千紘も連れて3人で……)そんなことを考えていると、黒のミニバンが一台入ってきて停車した。

 乗っていたのは若い男女だった。
口論しながら車を降りると、女性は乱暴に助手席側のドアを閉めた。

「……2人はすごい剣幕で口論を始めました。すぐ横に私が居ることなんて気にも留めてなかった。」

『別れるって言ったじゃない。』

 車から降りてきた女性は、金切り声で怒鳴った。

『それに、既婚者だって事も聞いてない。』

 男性は目を見開き、言い返した。

『聞かれなかったから。』
『酷い……どうして……』
『そもそも、言い寄ってきたのはそっちだろ。好きだとか、本命だとか言った覚えは一度も無い。』
『許せない……どうして。』 

 その女性……美奈子さんは涙を溢し、肩を揺らして泣き始めた。
 
『はぁ~~~あ。メンヘラかよ。』
『どういう意味?』

 男性は、一拍おいて吐き捨てるようなため息をついた。

『セフレだけど。』

 男性は運転席側のドアに手をかけ、美奈子さんが駆け寄るのも無視して車にエンジンをかけた。

『とにかく、なんて言われても終わりだから。』

 そして……彼女を置き去りにしてポケットパークを出て行ってしまった。

当然……残された美奈子さんは、悲鳴をあげるように泣き出した。



 


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