25年目の真実

yuzu

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真実

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『千紘……!』

 千尋を助けたい一心だった……。

『千紘! 千紘!』

 膳も血相を変えて叫びながら、横転したトラックの運転席へ必死に駆け寄った。
 
 運転席は――
 
 サイドミラーがひしゃげ、フロントガラスには無数の罅が入っていた。車体からは焦げたような臭気。

『千紘! 千紘ッ!』

 運転席を覗き込んだ膳の絶叫が、山間に響き渡った時、千紘がどんな状態か脳裏に浮かんでしまった。

 濡れた路面で手が滑り、何度も転びそうになった。それでも――千紘の元へ向かおうとした。
 
 必死だった。

 雨が、容赦なく降り続けて路面は完全に水浸し、まるで川のようになっていた。

 膳は首を振り、

「来ないで、母さん」
とだけ言った。

声が震えていた。

そこで――私の意識が途切れた。


◇◇◇
 
 蒼介は眉間に皺を寄せ、腑に落ちない表情を浮かべた。

(なぜ……その場から逃げた?)

 (日下部ソノ子は嘘をついている。
けれど、彼女の証言を覆す証拠は何もない。)

「日下部さん。なぜ通報を匿名にしたのですか? その場に残って警察と話さなかった理由は?」

 ソノ子の表情が一瞬、動揺したように揺れた。

「……先ほども申し上げた通りです。私は意識を失って倒れていた。膳はパニックになって私を車に乗せている最中、通りがかった通行人が通報したんです。」

 ソノ子の言葉を聞いて、膳に視線を向ける蒼介


 俯き加減でソノ子の話を聞いていた膳は、視線を床に落としたまま。

「……気が、動転していたんだよ」

蒼介は怒りとも悲しみともつかない冷たい感情が体を支配していくのを感じながら、膳に問いかけた。

「二人を見捨てて……逃げたのか?」
「違う。そうじゃない!」
「じゃあ……どういうことだ」

 膳が答えない代わりに、ソノ子は静かに口を開いた。

「私は翌日、病院のベットで目を覚ましました。医師からは、精神的ショックが原因で失神したのだろうと……それから葬儀まではあっという間で。考える時間は無かった……というより、考えたくなかったのかもしれません。あの後どうなったのかは全て膳に任せて、私はただ娘が亡くなった喪失感に囚われていた。」


 顔を上げた膳の顔が、涙で濡れていた。


 







 
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