恋が下手な私が新社長に恋をした

yuzu

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告白の答え

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 アパートの前に車が静かに停車した。
 ドアに手をかけた私は、ミラー越しに八坂さんと視線がぶつかる。

 お礼をしなきゃ…そう思うのに、抱きしめられた余韻が残ったままの空気に戸惑いを隠せない。

「あの……えっと。よかったら上がっていきませんか?送っていただいたお礼にお茶でも……」

 言った後に後悔した。これじゃあ八坂さんを誘ってるみたいだ。

訂正の言葉を探して目が泳ぐ私を見て、八坂さんはほんの一瞬驚いたような顔をした。
それからすぐに、くすっと悪戯っぽく笑った。

「それ、誘ってます?」

 恥ずかしさで一気に体温が上昇する。

 「ち、違います! そ、そんなんじゃなくて……!」

 必死に否定して視線を泳がせれば、八坂さんはそんな私をしばらく眺めて、ふっと柔らかく笑った。

それから真っ直ぐに私を見つめて真剣な眼差しで言った。

やめときます」

 やさしい、けれど絶対に揺るがない声だった。

「小鳥遊さんの事、大事にしたいから」

 心臓が、ぎゅうっと縮んで顔を上げることができなかった。

 胸の奥が、あたたかくて、痛かった。

 「……」

 返答に困って赤面する私を一瞥し、ふわっとやわらかく微笑む。

 「中入り、冷えるし。」

 私はこくんと頷いて、ドアを開けた。

 冷たい空気が肌に触れる。

 振り返ると、八坂さんが手を軽く振っていた。

 「おやすみ、小鳥遊さん」

 その声が、胸の奥にそっと染み込んでくる。

 小さく手を振り返し、八坂さんの車が夜に溶けていくのを見送った。

 玄関のドアを閉め、鍵をかける。

 カチャッと鍵のかかる音が緊張の糸を切った。
膝が折れ、そのまま玄関に座り込む。

 
 顔が熱い。


 心も、体も、ぐちゃぐちゃだった。
 八坂さんの言葉が、何度も胸の奥で反響する。

 

 ――大事にしたいから。

 

 (亮介には、あんなふうに大事にされた事無かったな……)

 

 膝を抱え、そっと瞳を閉じた。

 

 静かな部屋に、自分のかすかな呼吸音だけが響いていた。


 鞄を肩から落とし、玄関ドアの鍵を回す。

 それだけで、この狭いアパートの一室が、世界から切り離されたように思えた。


 


 
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