恋が下手な私が新社長に恋をした

yuzu

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運命

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デスクの荷物を段ボールにまとめ、それを抱えたまま秘書課までくると、一呼吸置いて息を整え、ドアをノックした。

「失礼します。」

 秘書課の中は、どこか凛とした空気が漂っていた。

 数人のスタッフがテキパキと動き回る中、ひときわ目を引く女性がいる。
 知的な黒のワンピーススーツを完璧に着こなし、背筋をぴんと伸ばした立ち姿。
 彼女が、社長秘書の道永彩香さんだった。

 私に気づくと、彼女はすっと近づいてきた。

「小鳥遊真那さんね。」

 柔らかな微笑みを浮かべながらも、その瞳は澄んでいて、どこか厳しさを湛えている。

「はい。小鳥遊真那と申します。本日付で秘書課所属になりました。どうぞよろしくお願いいたします」

 私が頭を下げると、道永さんは軽く頷いた。

「よろしくね。限られた時間だけど、できるだけのことを伝えるわ」

 彼女は手元のファイルを私に手渡しながら言った。

「まずは、社長のスケジュール管理。次に来客対応、電話の取り次ぎ……そして」

 言葉を切り、道永さんは私をまっすぐ見つめた。

「社長の“気質”を理解すること。これが、秘書にとって一番大切なことよ」

 私は無意識に息を呑んだ。

 ──社長の気質。

 それは、単なる業務マニュアルでは学べないもの。
 誰よりも近くで、誰よりも細やかに、彼の思考や感情の機微を読むこと。

 その重要性を、道永さんはきっと身をもって知っている。

 私はノートとペンを取り出し、真剣な面持ちでうなずいた。

「よろしくお願いします。精一杯、学ばせていただきます」

 道永さんはそんな私に、どこか優しげな微笑みを返した。

「焦らなくていいよ。最初は誰でも戸惑うもの。でも、少しずつでいいから、社長を理解しようとする気持ちを忘れないで」

 その言葉に、心が少しだけ温かくなるのを感じた。

 引き継ぎは、想像以上に忙しかった。

 社長の一日のスケジュールは分刻みでびっしりと埋まっていて、間違いが許されない。
 来客リスト、応対マナー、重要顧客のプロフィール、緊急時の対応マニュアル──
 覚えなければならないことは山のようにあった。

「あとは、業務時間外になっちゃうんだけど社長の部屋の掃除も。残業代はでるからスケジュール管理に組み込んでおいて。今日は私が一緒にーーーっ痛……。」

 道永さんが急にお腹を抱えて座り込む。
 私はその隣で戸惑い、救急車を呼ぼうとスマホをポケットからとりだした。

「待って……大丈夫。大丈夫なんだけど……ごめんなさい。社長のマンションまで1人で行ってもらえるかしら?」

「勿論です!道永さんは早く病院へ!」

 
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