6 / 8
今日から第五資料室管理課。
6
しおりを挟む
エレベーターの扉が閉まると、壁にもたれて息を逃すように吐いた。
ガラスに映った自分は、思っていたよりもずっと平然としている。
背筋も伸びているし、表情も仕事用のそれのままだ。
――大丈。うまく、やれている。
自分に言い聞かせた瞬間、エレベーターが上昇を始め、胃の奥がきゅっと掴まれた。
最上階。
普段ならまず降りることのない階で、チン、と無機質な音が鳴る。
扉が開いて正面にある無機質な扉が目に入る。
ここが――第五資料室。
私はダンボールを抱え直し、一歩、足を踏み出した。
コツン。
自分の靴音だけが、やけに大きく響く。
「……第五資料室勤務……か」
思わず小さく呟く。
誰もいない空間では、言葉は簡単に零れてしまう。
資料室の入口に近づく。
『第五資料室 管理課』
管理、という言葉だけが妙に浮いている。
”……仕事なんて、あるわけがない。”
さっき頭をよぎった言葉が、また胸を刺す。
私はダンボールを床に下ろし、深呼吸した。
逃げるみたいに息を吐くのは、もうやめよう。
「――よし」
誰に言うでもなく、声に出す。
ここが窓際部署だったとしても、それでも、私がここで何もしない理由には、ならない。
「失礼します。」
扉を開くと、目の前に広がるのは資料室らしい天井まで届く資料棚。
そこには資料が整然と並べられ、しっかりと管理されている様子がうかがえる。
想像とはまったく真逆な資料室の様子にほっと胸を撫でおろす。
段ボールを抱えて奥へすすんでいくと、カタカタとPCのキーボードをたたく音と、コピー機の稼働音。それに、電話で対応する声も聞こえてきた。
資料棚を抜けた先にある扉から漏れる光に背筋を伸ばし、扉をノックした。
「企画営業から来た、多部由香里です。」
「どうぞ。入って。」
ガラスに映った自分は、思っていたよりもずっと平然としている。
背筋も伸びているし、表情も仕事用のそれのままだ。
――大丈。うまく、やれている。
自分に言い聞かせた瞬間、エレベーターが上昇を始め、胃の奥がきゅっと掴まれた。
最上階。
普段ならまず降りることのない階で、チン、と無機質な音が鳴る。
扉が開いて正面にある無機質な扉が目に入る。
ここが――第五資料室。
私はダンボールを抱え直し、一歩、足を踏み出した。
コツン。
自分の靴音だけが、やけに大きく響く。
「……第五資料室勤務……か」
思わず小さく呟く。
誰もいない空間では、言葉は簡単に零れてしまう。
資料室の入口に近づく。
『第五資料室 管理課』
管理、という言葉だけが妙に浮いている。
”……仕事なんて、あるわけがない。”
さっき頭をよぎった言葉が、また胸を刺す。
私はダンボールを床に下ろし、深呼吸した。
逃げるみたいに息を吐くのは、もうやめよう。
「――よし」
誰に言うでもなく、声に出す。
ここが窓際部署だったとしても、それでも、私がここで何もしない理由には、ならない。
「失礼します。」
扉を開くと、目の前に広がるのは資料室らしい天井まで届く資料棚。
そこには資料が整然と並べられ、しっかりと管理されている様子がうかがえる。
想像とはまったく真逆な資料室の様子にほっと胸を撫でおろす。
段ボールを抱えて奥へすすんでいくと、カタカタとPCのキーボードをたたく音と、コピー機の稼働音。それに、電話で対応する声も聞こえてきた。
資料棚を抜けた先にある扉から漏れる光に背筋を伸ばし、扉をノックした。
「企画営業から来た、多部由香里です。」
「どうぞ。入って。」
10
あなたにおすすめの小説
Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜
yuzu
恋愛
人数合わせで強引に参加させられた合コンに現れたのは、高校生の頃に少しだけ付き合って別れた元カレの佐野充希。適当にその場をやり過ごして帰るつもりだった堀沢真乃は充希に捕まりキスされて……
「オレを好きになるまで離してやんない。」
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
メイウッド家の双子の姉妹
柴咲もも
恋愛
シャノンは双子の姉ヴァイオレットと共にこの春社交界にデビューした。美しい姉と違って地味で目立たないシャノンは結婚するつもりなどなかった。それなのに、ある夜、訪れた夜会で見知らぬ男にキスされてしまって…?
※19世紀英国風の世界が舞台のヒストリカル風ロマンス小説(のつもり)です。
【完結】女当主は義弟の手で花開く
はるみさ
恋愛
シャノンは若干25歳でありながら、プレスコット伯爵家の女当主。男勝りな彼女は、由緒ある伯爵家の当主として男性と互角に渡り合っていた。しかし、そんな彼女には結婚という大きな悩みが。伯爵家の血筋を残すためにも結婚しなくてはと思うが、全く相手が見つからない。途方に暮れていたその時……「義姉さん、それ僕でいいんじゃない?」昔拾ってあげた血の繋がりのない美しく成長した義弟からまさかの提案……!?
恋に臆病な姉と、一途に義姉を想い続けてきた義弟の大人の恋物語。
※他サイトにも掲載しています。
恋は、やさしく
美凪ましろ
恋愛
失恋したばかりの彼女はひょんなことから新橋の街中で上司にお姫様抱っこされ……!? ――俺様な美形上司と彼女とのじんわりとした恋物語。
性描写の入る章には*マークをつけています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる