聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

文字の大きさ
10 / 58

第10話 聖王機エスタシュリオ!!

しおりを挟む
 
「よーし、いいぞ。そのまま、まっすぐ進め」


 イオリの指示に従い、聖王機は元の戦場に戻るべく、大地を疾走していた。

 初めは威風堂々とした聖王機を操っていることに興奮していた。
 
 けれど、それも既に収まっている。
 わずかな時間で何度もこけてしまえば、自分のセンスを疑ってしまうものだ。

 俺にだって、短い時間だけど操縦経験はあるんだ。
 だから大丈夫だろうと、それなりに自信を持っていた。

 ところが、聖王機は想像以上のじゃじゃ馬だった。

 これまでの機人と比べてパワーが段違いなんだ。
 それにレスポンスが良すぎるし、むしろ搭乗経験が邪魔をしていると感じる。

 問題はそれだけじゃない。

 ようやく少し慣れてきたけど、今度はスピードに振り回された。
 聖王機のパワーは圧倒的な加速度を引きだしている。

 今までの機人よりも速いのは想像していたさ。
 そうはいっても、すぐに対応できるわけじゃないってことだ。

 今まで自家用車で一般道をノロノロ走っていたと思ったら、急にレーシングカーに乗せられてコースをぶっ放してる感じだろうか。

 転ばないように走るだけでも大変なのに、地形を把握する必要もある。

 運転慣れしてた奴なら問題ないのかもしれないけど、ペーパードライバーの俺には結構きつい。

 ここら一帯は起伏があるから、気を抜くと上りがすぐに下りになってたりするし。

 それに加えて聖王機のサイズに慣れる必要もある。
 この機人は他と違い、15mくらいはありそうだった。
 一歩一歩が大きいから違和感が半端ない。
 慣れるのには時間がかかりそう。


 でも、ここは既に戦場で、そんな時間すらないのが現状なわけで……


「右から来てるぞ!」
「うおっ」


 いつの間にか敵が目前に迫っていたようだ。
 声に反応して、適当に剣を横に薙ぐ。
 

 ヘロヘロの一撃が敵機の脇腹を抉るように刺さった。


「次が来るぞ、すぐに離れろ」


 剣を引き、逃げるように距離を取る。


「すげぇ、本当に俺がやったのかよ」


 聖王機の能力は凄まじい。
 素人まるだしの俺の剣でも強引に敵の機人を引き裂いてしまう。

 敵機は他の機人同様に人型だけど、脚部を強化してるように見える。
 それでも重装甲の聖王機のスピードに全然ついて来れていない。

 けど、まだまだ油断はできない。
 イオリによると、敵勢力は無人だけど、まだまだいるらしいからな。

 でも、これだけの能力があって、どうしてやられたのか疑問が沸いてくる。

 素人の俺でも倒せるんだから、イオリならもっと戦えるんじゃないか。
 一瞬そんな思考がよぎったけど、すぐに思い出した。
 イオリ一人じゃ駄目だから、俺が乗ることになったということを。

 それでもイオリは、頑丈な聖王機で囮になるべく出撃していたんだろう。

 何故そうまでするのかは分からない。
 俺にはきつく当たってきたけど、悪い奴じゃなさそうだ。


 眼前に二十機以上の敵機が見えてきた。
 アルフィナの想像通りにかなり増えている。
 その振動は、離れていても伝わってくる。

「いち、に、さん、し。全員無事だな。よっしゃあ、今助けてやるぜ」

 四機のラグナリィシールドには細かい傷が見える。
 だけど、互いの死角を補うように連携して決定打を許していない。

 操縦技能だけじゃなく、経験値によるものなのは明らか。
 理解できたとしても俺が一朝一夕に実践できるようなものじゃないだろう。


 一方、意気込んだのも束の間。


 助けにきたはずの聖王機は、逆に腕にガトリングガンを仕込んだ連中に取り囲まれて集中砲火を浴びていた。

 機人の性能が良くても、操者の技術が上がるわけじゃない。


「や、やばいって」
「落ち着け! 聖王機にとってこんな攻撃問題ない。敵の本命を見極めろ」


 んなこと言われたって。


 俺は必死になって背中から盾を取りだし、ガードする。
 必要ないと言われても、怖いもんは仕方ない。


「後ろから来てるぞ!」
「ええい、くそっ」


 聖王機をみっともなく転がしてゴロゴロと回避。


 元々装甲機人にはセンサー類は何もない。


 前面装甲からの映像が脳に送られてくるけど、どこから敵の攻撃が来るかなんてのは、人の身同様、機人を動かして周囲を見渡すくらいしか確認方法がなく、すぐにカバーできる範囲なんて限られてる。


「ちゃんと敵機の位置を確認しておけ」


「後ろなんて見れるはずないだろ!」


「見るんじゃない、感じるんだ!」


「無茶いうな!!」


 聖王機は他の機人よりも視野が広いけど、流石に後ろまではカバーできてない。
 だから後ろからの攻撃なんて見えるはずがないんだ。


 そんな超能力みたいなのがあったら、とっくにやってるわ!


 回避に専念している間にも、僚機が次々と敵を撃破してくれている。
 俺が必死で逃げてるのも、もしかしたら攪乱になってるのかもしれない。

 というか、そうじゃないと、みっともなさすぎる。

 それでも目立つ聖王機が見逃されるはずがない。
 先程の機人が再び距離を詰めてきていた。

 この機人は他とは違い、馬力を感じさせる巨体だ。

 ごつごつした装甲付きの逞しい両腕を持つ。
 間違いなく接近戦を得意としているはず。


「剣星、私はアイツに投げ飛ばされたんだ。捕まらないように気を付けろよ」
「おう」


 体格は互角でも機動力はこっちが上。
 とりあえず、すれ違いざまに前転して最初の突撃を回避する。
 敵機が小回りして反転する間に、こちらも盾から剣に持ちなおした。


「来い!!」


 敵機がどんどん近づいてくる。
 俺は立ち止まって剣を上段に構えた。


「馬鹿、止まるな! それにそれじゃ振りが大きすぎるぞ!」
「ちょっと静かにしてくれ!」


 どうせ細かな動きをしようと思っても、イメージが伝えられないだろう。


 それなら攻撃はできるだけシンプルに。それが俺の作戦だった。


「喰らえっ! 聖王重震剣っ!!」
「奇妙な技をつくるなっ!!」


 イオリの制止を振り切って、聖王機の性能だよりの一撃を繰り出した。


 想定よりも聖王機のスピードが勝っていたのか、敵機は回避せずに防御を選択。
 頭上で両腕を交差してガードしている。

 ところが、俺が繰り出した攻撃は剣の腹が下側になっていた。
 これじゃ切断できるはずない。


 まあ、剣なんて持ったことがないからな。


 敵機の切断はできなかったけど、お構いなしに剣を強引に押し込んでいく。
 すると、敵機は重さに耐えられず、どんどん地中に徐々に埋まっていった。


 俺はそのタイミングで剣を再び構えて振り下ろした。
 敵機の両腕を切断し、そのまま頭部も真っ二つに。


「よっしゃぁぁ!!」


 俺は動かなくなった敵機を見ながら、自分のやったことに満足感を覚えていた。


 
 ――――――――――――――――



 振り向くとイオリが首を左右に振って、周囲を確認している。
 必要ない動作だけど、やっぱりそうなるよなと笑ってしまう。

 どうやら残りの敵も味方が討伐したようだ。
 それまでの張り詰めた声が一変し、イオリは満面の笑みを寄越してきた。

「剣星! よくやったな。お前のおかげで勝てたぞ」

「い、いや俺は夢中にやってただけだから。イオリがいてくれて心強かったし」

「謙遜するな。お前のおかげで仲間たちも、そう、仲間たちも」

 イオリの表情は見る見るうちに青ざめていく。
 いったい何があるのだろうか心配になる。
 俺は何か失敗してしまったのだろうか。

「いや、剣星。お前の責任じゃない」

 イオリは俺の不安が分かったのか、そう告げた。

「お前はアルフィナさまの願いを聞いて聖王機に乗ってくれたに過ぎない。責任が及ぶことはないだろう」
「そ、そうか」

「だが私は……、剣星は先程施設の入口を見たので言うが、実はこの辺りの地下には我々の施設が広がっているんだ。さっき敵を潰したあたりは丁度資源の一時保管庫の真上で、恐らく振動で滅茶苦茶になってしまっただろう」


 やばい、なんだか俺も嫌な予感がしてきた。


「これはきっと始末書だけ済む話じゃない。敵機を破壊する場所は当然注意しなければならないことだからな。なに、お前が気に病む必要はない。嫌味をねちねち言われたり、私の懐が寂しくなるだけのことなのだから」


 すまない、イオリ。どうやら今度は助ける事はできそうにない。
 なにしろここは異世界だからな。


 俺にできるのは、イオリのために幸運を祈ることくらいだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...