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第11話 俺のウハウハ生活はどこ行ったんだよ!
しおりを挟む二度目の戦闘を終えた俺は、アルフィナたちの本拠地に向かっていた。
周囲に敵影が確認されてない以上戦闘は無い。
よって、アルフィナはイオリと共に聖王機で移動している。
押し出された俺はというと、再びラグナリィシールドの手のひらに乗せてもらっている、わけではなく両手で掴まれて移動中だ。
「勘弁してくれよ」
手のひらに乗せてたら落とさないように動くから、速度は出せない。
アルフィナの体調を考えて、早く帰りたいのは分かるけど。
そりゃねーだろって感じだ。
複座型の聖王機ですら狭いコックピットだったから、一人乗りの機人はさらに窮屈になるのは理解はしてるよ、理解はね。
おかげでラグナリィシールドの指が邪魔で周囲の様子も全く分からない。
さらに俺を悩ませたのがレトの存在だ。
どうやら勝手に離れて行ったくせに一緒に戦えなかったことにお怒りらしい。
移動を開始してから、直通通信で俺の頭の中で文句を言い続けている。
「(何よ何よ、アルフィナって小娘だけじゃなくて、イオリって女にまで浮気しちゃってさ)」
「(なんだそりゃ、そもそも俺のことなんて好きでもないんだろ。だったら別にいいじゃん)」
「(駄目なものは駄目なの。あ~あ、なんでわからないかなぁ。剣星って女の子と付き合ったことないでしょ)」
ウグッ、それを言われるとなんも言えねぇ。
「(だったら、俺の側から離れるな。俺だっていつ戦闘があるかなんてわからないんだ)」
「(仕方ないなぁ、ムフフ)」
結局俺たちは目的地に着くまでの間、心の中で会話を続けていた。
同時に、戦闘時にレトがいなかったことを感謝した。
イオリとレト、同時に話しかけられたら俺は混乱してまともに戦闘できなかったことだろう。
どれだけ真っ暗な世界で時間が経過しただろうか。
ようやく足が地面に触れ、視界が開けた。
「到着しました。あの者に付いていってください」
ラグナリィシールドの操者の指示どおりに、迎えに来た男についていく。
真っ白な服にシンプルなブローチ、なんとなく宗教関係者を思わせる。
この国は神聖レグナリア帝国って国名らしいし。
一人きりになって少し心細いけど、聖王機の女性二人の姿は既にないので、近寄って頭を下げた。
「ようこそ帝都へ」
俺の目の前にあるのが最終防衛ラインである城壁らしい。
所々に撃ち込まれた砲弾痕があり、補修された形跡もある。
通用門を通って中に入ると、雑多な街並みが出迎えてくれた。
表情には出さないようにしたけど、正直がっかりした。
ある程度は想像できたことだけど、装甲機人の存在もあって、どれだけ未来的な建物があるのかと期待しすぎたせいだ。高層ビル群すらなく、目新しいのは機人のスクラップだったり、兵器工場っぽいのが立ち並んでいるくらい。
俺の心境を知ってか知らずか、案内役の男は黙って地下通路に入っていった。
そういえば、イオリが地下施設がどうたら言っていたし。
仮に戦争状態にあるなら、隠してあるのかもしれない。
俺は目的地につくまでの間、今の状況について話を聞くことにした。
レトは話し疲れたのか、黙っているので丁度いい。
まず、到着したこの街は神聖レグナリア帝国の首都で、国民のほとんどがこの街、もしくは東側の地域に住んでいるらしい。城壁の外には先程襲ってきたラヴェルサという敵がいるからで、警備の関係もあるんだろう。
俺が向かっているのは帝国ではなく、ルーベリオ教会の施設ということだ。教会というのは、現聖女であるアルフィナをトップとした組織。その歴史は古く、ラヴェルサと三百年以上も戦い続けているという。
アルフィナが聖女ってのは驚きだけど、納得できる気もする。でも話の腰を折らないように、とりあえずは聞き流しておく。ただの神輿のような気もするけど、彼女がトップならカルト臭い宗教じゃない気がするな。
教会は神聖レグナリア帝国の付近に存在する五つの国家を中心に支部を持ち、戦い続ける武闘派集団。たぶんアルフィナを守っていた四機は近衛騎士団とか親衛隊みたいな精鋭部隊なんだと思う。あれだけの敵機に囲まれながら、機人に致命傷はなかったし。
で、ラヴェルサってのは世界の敵みたいな奴らみたいで、俺が捕えられていたリグド・テランは、何故かそれに味方しているらしい。ちょっと俺のキャパがやばくなってきてる。いきなり世界情勢の話をされても覚えきれねえよ。確かに俺から聞いたんだけどさ。
んで、神聖レグナリア帝国を本拠地とするルーベリオ教会は、教会勢力五か国よりも上に位置づけられ、聖女の存在が国家間の争いに巻き込まれないように配慮されている。でもそれは表向きの話で、世界は決して一枚岩じゃない気がする。
今の俺は外套を着せられて、こっそり別の場所に向かってるんだけど、
「聖王機に乗ったことは決して口外しないように」
なんて注意を何度も受けた。色んな話から推測するに、聖王機の性能を引きだせるのは聖女だけなのは、なんとなく想像できた。実際、イオリだけの時は敵にやられてたし。それなのに、どこの馬の骨かも分からない俺が聖女のような働きをしてしまった。
つまり、俺の正体が知られてしまえば、政治的価値やら軍事的価値のせいで、誰かに狙われる可能性があるってわけ。そう考えると、教会は俺を保護しようとしてくれているとも考えられる。あるいは都合のいいスペアか。
いずれにしても、現時点で俺にできることは、情報を集めることくらいしかない。情報操作されていたら何の意味もないけど、それは考えすぎだろうか。
階段を降り、通路を進んでいると、奥の方からようやく光が見えてきた。随分時間がかかった。たぶん場所が分からないように、かなり遠回りしていると思う。ここまで薄暗いライトだけだったので、少し嬉しい。ついつい早足になって進んでしまう。その先にあったのは巨大なドックだった。いや、船じゃねーけどさ。
秘密の地下格納庫とでもいうべきか、ここでは数十台の装甲機人が整備されており、メカニックたちが所狭しと働いていた。ラグナリィシールドだけでなく数種類の機人があり、同じ種類の機人でも、よく見ると細かな違いがある。恐らく操縦者ごとの戦いの癖が反映されているんだろう。
「見たかったのはこれなんだよ!!」
誰にともなく叫んでしまった。視線が集まってる気がするけどしょうがない。だって興奮するだろ、そりゃ、こんな絶景を目にしたらさ。
「メカニックが仕事中だ。大声を立てるな、剣星」
名前を呼ばれて振り向くと、そこには地味な服に着替えたイオリがいた。彼女に誘導されて個室に入る。そして俺が彼女たちと出会うまでの聞き取りや、持ち物のチェックが行われた。持ち物といっても何もない。こっちの世界に来た時になくなっちゃたし。
アルフィナと最後に会った時にイオリを撒きこめと言われたのは、今の状況を見越してのことだと思う。イオリは言われた当初はキョトンとしていたけど、俺がこの世界に来た経緯を聞いて漸く状況を理解したようだ。彼女はアルフィナの意図を組んで、聞き取り結果を改竄してくれるのだと思う。
イオリは俺の話を聞いて、紙にペンでメモしている。装甲機人みたいなハイテクがあると思えば、変なところでローテクなんだよな、この世界は。パソコンもないし、元の世界の方が発展している感じだけど、妙なところで想像できないことがある。
「なるほど、話は分かった。他に何か気になるようなことはなかったか?」
「う~ん、関係あるか分からないけど、こっちに来る直前に助けを求めるような声が聞こえた気がするんだよな。これひょっとして、俺はこの世界の誰かに魔法で召喚されたんじゃないのか?」
俺の言葉に、イオリは身を乗り出して反応した。
「剣星の世界には、魔法でもあるのか?!」
「いや、そもそも人型の兵器自体ないよ」
イオリは残念そうに椅子に座り直した。
―――― ひょっとして、魔法少女になりたいのか? ――――
口から出そうだったが、なんとか飲みこんだ。
言ったらパンチが飛んできそうだからな。
でもちょっと待て。今の話の流れだと……
「こっちにも魔法はないのか? ほら、あの聖王機とかラグナリィシールドなんて魔法みたいなもんだろ」
この世界には未来的な要素は一切ない。魔法的な存在と言われた方がしっくりくる。いや、確かに機人の中で何かがグルグル回ってたけど。赤光晶なんてマナと言われた方がしっくりくる。
「何を言っている。あれはただの科学だ。それと分かっていると思うが、他の世界から来たとは、絶対に他の者に言わぬ事だ。これ以上厄介な事にしないためにもな。そろそろ本題に入ろう。剣星、お前はこれからもアルフィナ様に協力してくれると考えていいんだな?」
一応俺の意志を尊重しようとは思ってくれてるんだな。
元々聖王機に乗ったのは、若気の至りみたいなものだった。
だけど、ここに来るまでちょっとの時間だけど何度も自問した。
その問いに対する答えは既に決まっている。
答えは勿論YESだ。
理由は色々ある。
第一に、俺の立場が危ういこと。俺には後ろ盾が必要だ。
第二に、人間働かなきゃ飯が食えない。この世界も色々大変そうだけど。
第三に、この世界に随分馴染んできた事。人の死に慣れてしまったから。
第四に、俺のリビドーがそうしろと言ってくるからだ。
俺は四つ目の感情を隠し、決め顔を作って手を差し出した。
「剣星……」
「ああ、よろしく頼む」
イオリが俺の手を包み込み、強く握ってくる。
彼女も喜んでくれてるんだろう。
そしてきっとアルフィナも。
「剣星、お前ならそう言ってくれると信じてたぞ。実はな、もう知り合いに頼んで、お前の配属先についてお願いしてあるんだ」
あれ? なんか流れがおかしいぞ?
聖女様の直属の部下とかに抜擢されるんだよね?
そこでイオリと同僚になって、イチャイチャしながら生活するんだよね?
普通なら、絶対そうなるよね?
「この街には私たち騎士団とは別にいくつか傭兵組織があってな。そのうちの一つに行ってもらおうと思う。命令系統も別の部隊だし厳しい隊長らしいが、なに剣星なら大丈夫だ。しっかり頼むぞ」
イオリは俺を励ますように肩を叩いた。
部隊が別なら、普段の生活も別になるよね、きっと。
異世界で花のハッピーライフじゃないのかよ。
せっかく厳しい冬の時代を乗り越えたのに、結局これかよ。
ちっくしょー!!
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