聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

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第12話 今日から俺は傭兵だ!

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「それじゃあ、後は頼みます」

 イオリは部屋を出て行った。
 彼女と入れ替わるように精悍な顔つきの男が入ってくる。
 でも、全然チャラついた様子はなく、よく見ると首元に傷がある。
 筋肉質な体だし、彼も俺と同じく操者なのかもしれない。

「カラルドだ。部屋に案内する」

 彼はそれだけ言って、パンと水筒を手渡してきた。
 これは今夜と明日の朝の分の食事らしい。
 
 そういや、随分が腹が減った。
 水筒は動物の胃袋でつくったような、砂漠で使うやつだ。
 一体どんなこだわりだよ。

 カラルドさんはすげー無口なのか、質問しても全く反応してくれない。
 
 コツコツと音を立てて階段を上り、外に出て、また歩く。
 そうして到着したのが倉庫のような大きな建物。
 ではなく、その向かいにある小さな住宅だった。

「明日の朝、迎えにいく」

 彼はそれだけ言って、去っていった。

 外は明かりが沢山点いてるけど空は暗い。
 いつの間にか夜になっていたようだ。
 流石に今から、街の探索というわけにはいかないだろう。

 案内された建物は長屋みたいだけど、結構頑丈そうだし壁も厚そうだ。
 このままじっとしてても仕方ない。
 受け取った鍵を使って部屋に入った。

「明かりのスイッチとかないのかな」

 暗い部屋、上から垂れ下がる紐を引くと明かりがついた。

 部屋の中で確認できたのはベッドとトイレと水道。
 マジでそれだけ。風呂も冷蔵庫もない。
 まあ、この世界に風呂の文化があるのかどうかは知らんけど。

 でも鉱山の施設よりかは幾分マシ。
 なにより久々の個室だ。

「それじゃお休み~」

 レトにとってもハードな一日だったのだろう。
 部屋に入るなり、眠ろうとしている。

「お休み、って、ちょっと待て!」
「なによ~、寝不足は駄目なのよ~?」
「レトっていったい何者なんだよ?」

 アルフィナから隠した方がいいみたいに言われたし、色々聞いた方がいいだろう。

「面倒くさいな、も~。何でも答えるから質問して」

「んじゃ、レトって何者?」
「わかんない」

「何歳?」
「わかんない」

「ひょっとして元々人間だった?」
「わかんない」

「レトって何がしたいの?」
「自分探し?」

「……お休み」
「ウン、お休み」

 イミ分かんねぇ。俺も寝よ。



 ――――――――――――――――



「いったい何の音よ!」
「最悪の寝起きだ」

 何やら外から騒々しい音が聞こえてくる。

 カンカンカンと、頭に響く音だ。
 でも目が覚めた直接の原因は音じゃない。
 音に驚いたレトが俺の顔を蹴りまくったせいだ。

 レトは前のように姿を隠して消えてしまった。
 光学迷彩みたいなものなのか? 
 聞いても、碌な答えは返って来そうにないけどな。

 まだ陽は昇りきってないから、寝過ごしたわけじゃなさそうだ。
 けど、この調子じゃ二度寝なんてできるわけがない。
 とりあえず昨夜渡された服に着替えて外に出る。
 音の出どころは向かいの倉庫からだった。

 正面入り口が大きく開いているので覗いてみる。
 そこでは装甲機人の整備が行われていた。

「やっぱすげぇ迫力だ。けど、音もすげぇうるせぇ」

 倉庫には二機の装甲機人の他にもう一機、骨組みだけの機人がある。
 なんとなく俺の為に組み立ててるんじゃないのかと思ってしまう。

 その機人は胴体のコックピットらしきところから、両腕両脚に向けてパーツを伸ばしている状態だ。安全のために車につけるロールケージみたいなものが組んである。

 まだ装甲とか付いてないし、ホントに骨だけなんだけど、凄く感動する。

「(ケンセー、おっさんだよ。難しい顔をしたオッサンだよ!)」
「おい、若いの! 入口で暢気に突っ立ってんじゃねえぞ!」

 俺はいつの間にか身を乗り出しており、作業員が近づいてくるのも気づかないくらいに夢中になっていた。そのせいでレトとおっさん、二人に頭を下げる事になった。

「す、すみません」
「見たことねえ顔だな。どこの奴だ?」

 この白髭のオッサン、筋肉もすげえが、それ以上に威圧感がパねぇ。

「え~と、その、昨日付けでルクレツィア傭兵団の団員になりました剣星っていいます」

 ここらの地域では、ファミリーネームを名乗る習慣はないそうだ。
 というか、それ自体全然聞かない。
 ルーベリオ教会というか聖女がらみとは軽く聞いた。

 オッサンは顎に手を当て、俺を値踏みするように観察している。

「ふ~ん、お前さんがねぇ」

 やがて昨日渡された水筒に目が留まると、確認するように手に取った。
 昨晩は気づかなかったけど、よく見ると猫のような紋章が刻まれている。

「なら、俺たちが朝から忙しいのは、お前さんのおかげってことか」

 ってことは、やっぱり、あの機人は俺のだったのか?!

「なんだか、すみません」
「ちょうどいい、ついて来な。シートを合わせるぞ」
「はい!」

 早起きは三文の徳とはよくいったものだ。
 まさか、こんな幸運が待ってたなんて。

「こいつだ、ちょっと座ってみてくれ」

 案内されたのは、倉庫の一番奥にあるさっきの骨だけの機人。
 公園にあるアスレチックを登るように足を掛けていく。

「へへっ」
「(あ~あ~、嬉しそうに尻尾振っちゃって。ケンセー、お手!)」

 レトがなんか言ってるけど無視だ無視。
 これが俺の専用シートか、たまんねえな、おい。

「どうだ?」
「ああ、いい感じッス。ちょっと隙間がありますけど、にゅるにゅるがあれば大丈夫だと思います」
「馬鹿が。あんな高級品を新人にやるわけねえだろ。合わせてやるから、ちょっと待ってろ」

 オッサンはそういって俺の真横まで、ひょひょいと登ってくる。
 それから念入りにサイズ合わせすることになった。

 このオッサン、見た目は怖いし口も悪いけど、俺みたいな新人相手にもすげえ丁寧にやってくれてる気がする。俺の経歴なんて知らないはずなのに、こだわりがすげぇ。まさにこれぞ職人のこだわりって感じだ。

 サイズ合わせを終えると、今度は起動チェックをやらせてもらえることになった。まあ、手足がついてないから実際に動かないし、ホントにチェックだけなんだけど。

 オッサンが赤光晶の球体をもってきてコックピットに設置した。
 これは起動時に触れる操縦桿みたいなものでクオーツと呼ばれているらしい。

「分かってるとは思うが、一応手順を確認するぞ。左右のクオーツに触れて、お前の意志を送り込んでくれ。成功すれば、操縦席から全身に光が広がっていくから」

 送り込むのは自分の体の中にあるエクトプラズム、いわゆる霊的エネルギーみたいなものだと俺は理解している。実際に存在するのかは確認できないけど、自分のイメージを伝えて機人を起動させているから、たぶんあるんだろう。

「了解っす」
「よし、初めてくれ」

 合図に合わせて起動する。

「こりゃ駄目だな」
「そうっすね」

 感触はあったんだけど、おかしいな。
 絶対成功したと思ったけど、最初だけ光って消えてしまった。

「なんでダメだったんすか?」
「いや、悪い。駄目なのはお前じゃなくてラジウスの方だ。出力に耐えられなくて、焼き切れてやがる」
「そーっすか」

 よくわからない単語が出たけど、なんとなく分かる。
 恐らく回路のようなものだと思う。
 それからオッサンの説明を詳しく聞いた。

 俺が確認したように、一瞬だけ激しく光ってすぐに消えたのを見たという。
 そういえば俺が乗った聖王機も光ったし、他の機人も赤く輝き続けていた。

 戦闘強度を維持するためには、ある程度強い輝き、つまりは強い意志の力がないと駄目らしい。そして強い輝きに耐えるには、より品質の高いラジウスが必要とオッサンはいう。だからといって、なんでもかんでも高品質なラジウスを使えばいいという訳でもないらしい。

 それはラジウスが高価な物であるということと、乗り手に要求されるスペックが高くなるという理由からだ。いくら良い物を使っても、乗り手の能力が低ければラジウスの中に送り込んだイメージが薄く伝わるので、イメージ通りに機人が動かなくなってしまう。それだったら普通のスペックのラジウスの機人に乗った方が良い動きができるということらしい。

 それを考えれば、イオリが一人で聖王機で戦ったのが、いかに無茶だったのか分かる。聖王機のラジウスは恐らく最高品質のはずだから、動かすだけでも大変だったんじゃないだろうか。もしかしたら昨日は味方機の数が少なかったから、聖王機の頑丈さを活かして囮役を買って出たのかもしれない。

「こりゃ、作業のやり直しだな」

 面倒な作業だろうにオッサンの顔はニヤいてるように見える。
 立派な肉体してるけど、ひょっとしてマゾか?

「こらぁ、新人!! 何、遊んでやがるっ!!!!」

 倉庫の入口から怒声が飛んできた。
 視線を向けると、カラルドさんともう一人、女の人が立っている。

「(何よ、あのおばさん! ケンセー、無視よ無視!)」
「(馬鹿いうな! あの人が多分団長だぞ)」

 短い間隔で地面を蹴り、腕を組んでいる。
 その姿は誰が見てもひと目で分かる苛つき具合だ。


 やべえ、いつの間にそんなに時間が経過してたんだよ。

 
 俺はオッサンに頭を下げて、入口にむかった。

「初日からさぼるなんて、いい度胸だな、ああん?」
「申し訳ありませんでしたッ!!」

 悪いのは約束通りに家にいなかった俺だ。
 こんな時は素直に謝るに限る。

 頭を下げて、まず目に付いたのが、でかい靴だ。
 こんなでかい足の女性は見たことがない。

 太腿も立派だし、野球の長距離打者のようにどっしりとした尻。

 へそ出しスタイルはプロポーションに自信のある証拠だろう。

 赤みがかった髪が胸に大きな山を形どり、太い首の先にあるのは怒りに満ちた表情だ。

「どこ見てんだ、ああ?!」

 ドスの利いた声が怖すぎる。

「団長、そろそろ」

 カラルドさんが時計を気にしながら囁いた。
 にしても、団長、ってことは、やっぱりこの人がルクレツィアさんか。

「おやっさん、コイツは連れてくよ」
「ああ、もう用は済んだ。機人を用意するのは、もちっと時間がかかる。精々鍛えてやってくれ」
「あいよ」




 で、団長に引きづられた俺は、現在、往来の真ん中で土下座しているのだが。

「傭兵ってのは仲間同士で協力して戦うんだ。規律を乱すような真似をされちゃ困るんだよ。分かってんのか?!」

「はい、わかりました。もう二度としません」
「ようし、いい返事だ。一回で許してやる」
「ありがとうございます!」

 通じるか分からなかったけど、必死の土下座が実ってくれたか。
 やってみるもんだ。


 いや、ちょっと待て。

 
 許してくれるのは嬉しいけど、一回ってなんのことだ。


 ってチョークスリーパーかよ!!


 団長は俺の後ろに素早く回ると、慣れた手つきで首を締め始めた。

「く、苦しいっす」
「この痛みがお前を成長させるんだ。ちゃんと覚えておきな!」
「う、うす」
「(ケンセー、私、あなたのこと忘れないからね)」
「(不吉なこと言うな!)」

 でも、もう駄目だ。さすがに限界。
 団長の腕を叩いてタップする。

「なにぃ、まだ足りないってのかい? いい根性してるじゃないかい!!」
「ち、ちが――」

 なんか、勘違いしてるし。

 うっ、締め具合がさらにきつくなった。

 苦しすぎて、声も出せねぇ。

 タップが通じないのかよ。

 ギブギブ、ギブアップだって。

 異世界でせっかく言葉を覚えたのに、これじゃ全然意味ねえよ。

 まさか、こうして異文化交流の難しさを味わうことになるとは。

 助げてぐれぇぇ!
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