聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

文字の大きさ
13 / 58

第13話 俺はこの世界で生きて行くんだ!

しおりを挟む
 
 女戦士ルクレツィア率いる傭兵団に入団した俺は、命令通りに毎日基礎体力作りに励んでいた。

 現在傭兵団の操者は俺を含めて六名。
 他の面子とは挨拶だけしたけど、全員俺より若そうだった。
 男二人に女が一人。

 普段、城壁外の任務は三人一組で行うらしい。
 俺が一人前になれば二組が毎日交替で任務に当たることになる。
 他には城壁周辺の警備任務がある。
 けど、機人のメンテナンスを考えれば二日に一度の出撃が良いのかもしれない。

 実際に整備の問題が大きく関わってそうだと思ったのは、整備員の数だ。
 現在の収入では多くの整備員を雇う事ができないのだろうか。
 整備員の数は装甲機人の数にも及ばない。
 操者自らが機人の整備に加わることで、なんとか成り立っているバランス。
 そのため戦闘でダメージを負わないようにすることも重要そうだ。

 俺が早く一人前になれば、それだけ操者の負担を軽減できる。
 つまりは万全の態勢で出撃できるということだ。

 大きな傭兵団は三日に一度の出撃という所もあるらしい。

 一方、我が傭兵団は比較的新しく、人数も揃っていない上、大きな商会とのパイプがあるわけでもないので、体力的に厳しいスケジュールを連日組んでいる。これは他の零細傭兵団も似たようなもんらしいけど。

 とまあ、そんな訳で俺は連日厳しい指導を受けているのだが、機人がまだ完成しておらず、もっぱら基礎体力作りと知識の詰込みが中心だ。

 特に気に掛けてくれるのがルクレツィア団長。
 彼女が見た目通りの脳筋ではないことも、トレーニングを通して分かってきた。
 副長と交代で毎日指導に来てくれている。

 女だてらに団長をしているのは伊達ではない、ということなのだろう。
 どこで知ったのか、俺が聖王機を操ったという情報すら持っていた。
 まあ、たぶん教会に耳の良い人がいるんだろうけど。

 正直どうなるかと思ったけど、むしろ団長は協力的で俺という存在を守ってくれているように感じるし、ばれないように配慮してくれている。

 他の世界から来たことは知らない感じだけど、ど田舎出身で文字も読めない世間知らずな若者だとでも思ったのか、文字や世界のことも丁寧に教えてくれる。

 一時期傭兵を引退していた時期に、孤児院を開業したそうで、傭兵に戻った今でも資金を送っているそうだ。

 最初の怖そうな印象とは反対になりつつある。
 だからといって問題がないわけじゃなくて。

「おい、剣星。晩飯食いに行くぞ。ついてこい」
「うっす」

 こうして毎日のように付き合わされるのだ。
 飯を食うだけならいいけど、酒に付き合わされるのは、かなりきつい。
 それでも断ることもできない理由は単純。
 金がないことに尽きる。

 という訳で、団長の誘いを断る選択肢はない。

 傭兵として命をかけて稼いだ金で食わせてくれるのは有り難いし、申し訳なさもあるけど、トレーニングで疲れ果てた体を回復させるには休息も必要だ。
 毎日遅くまで飲みニケーションして、翌朝も元気に、とは中々いかない。

「団長、ご馳走様でした!」
「おう、明日もしっかりやれよ」

 結局この日も公衆浴場に行くこともなく、自室に戻ることにした。
 狭いし、たいした設備もない部屋だけど、一つだけ利点がある。
 それは朝から向かいの格納庫がうるさくなるので、寝坊の心配がないということ。

 朝からレトが喧しく騒ぐから俺には必要ないけど、体力のない新人がこの長屋に住むのは理に適っているといえる。

 逆に体力のある連中はここに住む理由はないわけで、俺の他には誰も住んでいない。

「とりあえず水だけでも飲むか」

 コップに注いで一杯。正直これ以上腹に入れたくないけど、アルコールを分解するためには仕方ない。

 水を飲んでベッドに腰を掛けると、なんだか小さな寝息が聞こえてきた。
 驚いてその場を離れて電気を付ける。
 この部屋にはそれ以外に水道とベッドしかない。
 碌な設備がないから本来の用途は仮眠用だと思う。

「誰かいるのか?」

 光に照らされ、ベッドの上で何かがごろんと転がっていくのが見えた。
 盗むものなんてないから、泥棒が来るはずない。
 それでも恐る恐るベッドに近づくと、毛布にくるまっている黒髪が見えてきた。
 このサイズで思い当たる人物は一人しかない。

「もしかしてアルフィナか?」
「む~剣星?」

 彼女は寝起きのように体を大きく伸ばして、こっちを見た。

「剣星、遅いのじゃ」

 ぷっくり頬を膨らませ、不満を向けてくる。
 けど団長たちに比べれば可愛いものだ。

 俺は胸の動悸を悟られないよう平静を装った。
 十一歳の少女に発情してるわけじゃないけど、美少女なのは間違いない。
 整った顔立ちと立ち振る舞いは年齢以上に魅惑的。
 将来性は抜群だろう。

 って、俺は小学生くらいの女の子相手に何を考えてんだ。

 それにしても聖女と呼ばれる人物が、こんな夜遅くに一人で出掛けるなんてあり得るのか。ひょっとして周囲に護衛とかいるんじゃないよな?

「こ、こんな時間にどうしたんだ?」
「うむ、先日の礼をと思うてな」

 本当にそれだけで夜中に男の部屋に来るだろうか。
 それにしても随分くだけた話し方になった気がするな。
 俺に合わせてくれてるんだろうか。
 偉そうな感じが残っているけど、それが逆に微笑ましい。

「先日は助かった。お主の働きにより皆が救われたのじゃ」

 アルフィナが深く頭を下げている。自分がやったことを卑下するつもりはないけど、教会の騎士たちがいれば大丈夫だったんじゃないかと思う。

「いや、そんなことは。そういえばアルフィナ、体はもう大丈夫?」
「妾の身体は幼き頃より変わりない、もう慣れたものじゃ」
「そうなんだ」
「うむ」

 こんな時、なんて話せばいいんだろう。
 アルフィナは本当は苦しいんじゃないのか?
 なんで俺はもっと気の利いた事を言えないんだ。
 自分の人生経験の無さが恨めしい。

 アルフィナは俺の手をひいてベッドに座らせると、隣にちょこんと座った。
 この部屋にはベッド以外に座る場所は無いからな。

 最初は緊張したけど、アルフィナが聞き上手だったのか、上手く話せたと思う。
 きっとたくさんの大人の話を聞いてきたのだろう。
 緊張して、すげー早口で話した俺とは対照的だ。
 日本の事をたくさん聞かれたし、俺もアルフィナのことを聞いた。

 彼女とイオリは神聖レグナリア帝国の小さな田舎町で暮らしていたという。

 三歳の頃に聖女の力を得たアルフィナは、聖女を探していたルーベリオ教会に発見されて帝都に行く事になる。イオリは元々聖女の役に立つために、騎士見習いとなっていたが、同じ村出身のアルフィナが聖女となったことで側仕えすることになる。大人たちばかりの教会の中で、アルフィナとの絆は堅くなっていったんだろう。そして鍛錬を重ねて、聖王機の操者として認められるほどになった。

 はっきりいって、なんとなく歳を重ねてきた俺とは全然違う。短い付き合いだけど、アルフィナは幼い頃から聖女として自分の進む覚悟を決めている。イオリは他にも生きる道があったはずなのに、聖女の騎士として信念を持っているように見える。二人に比べれば、俺なんて全然子供だ。

「しかしな、時折不安になることもあるのじゃ。妾が聖女でよいのかと」
「うん」

 アルフィナは悲しげに俯いた。

「空から落ちてくるお主を感じた時、妾は嬉しかったのじゃ。妾と同じような力を持つお主の存在が。お主にとっては、別の世界に来て苦労の連続じゃろうに。すまぬな」

「いや、いいんだよ。アルフィナが悪い訳じゃないんだから」
「謝罪すべきことは、まだあるのじゃ。お主を聖王機に乗せたこと。お主はルーベリオ教会に目を付けられてしまったのじゃ」

 俺が聖王機の能力を発揮させたことは、教会内でも驚きを持って受け止められたという。世間に知られれば、聖女に対する信仰が薄くなって秩序が乱れる恐れがある、なんて意見が出たらしい。

 アルフィナが後ろ盾っぽくなってるから直接危害を加えられる可能性は低いけど、嫌がらせを受けるかも知れないから、俺はルーベリオ教会ではなく傭兵団に入ることになったという訳だ。教会は堅苦しい感じだから、今の状況の方が気が楽ではある。この世界、危険はどこにいてもあるだろうし。

「いや、大丈夫だよ。訓練は厳しいけど、毎日充実してるし」

 不思議と元の世界に帰りたいって気持ちが沸いてこない。
 きっと帰れないんだろうなって諦めもある。
 でも一番は、俺は今、すごく生きてるって実感してるからだと思う。
 まあ、なんつーか充実してるんだろうな。

「そうか。うむ。すまぬな、もう戻らなくてはならぬ」

 別れ際、アルフィナは俺の頬をそっと撫でてきた。

 でも驚きよりも、情けなさの方がずっと大きかった。

 アルフィナと比べて、覚悟に差があり過ぎる。
 立場の問題ではなく、一人の人間として。
 まだ十一歳の子供に気後れしてしまう。

 もっと誇れる自分になりたい。
 そんな気持ちがどんどん強くなっていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...