聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

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第23話 緊急出動、発進せよ!

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 人生には時折、大きな分かれ道があるという。

 きっと今までも自分で気づいてないだけで、いくつもあったんだろう。
 そうして無意識の選択を繰り返して、今の俺は形作られている。
 
 ただ、あの時ああしておけば、なんて後悔はしたくない。
 だから精一杯考えて、結論を導き出すんだ。
 例えどんなに小さなことだとしても。

「う~ん、どっちにしようかな」

 とれる選択肢は二つ。
 いつもの定食にするか、ちょっと豪華に焼肉にするか……

「おばちゃん、特上焼肉三つね」
「あいよ、じゃあこれで焼肉は売り切れね」
「なにぃ?!」

 声の主の方を振り返ると、ルクレツィア傭兵団の若手三人組が揃っていた。
 俺が迷ってたことを躊躇なく選択しやがった。

「注文しないなら、そこは邪魔だぞ」
「な~に馬鹿みたいに口開けてるんだか」
「お前らには分かるまい。俺のセンチメンタルな心がよ」

 節約してKカスタムの装備の充実を図るか、それとも肉体に投資するかを迷っていたんだよ。金額だけじゃなくて、俺の意志の強さの確認だったんだよ。何が食べたいとかの問題じゃねーんだ。

「ちょっと何言ってるか意味が分かりませ~ん」
「剣星さんも一緒にどうですか?」

 フォルカが空気を読まずに同席を誘ってきた。

 なんか断れよって視線を感じるけど、どうやらこっちの世界で培ってきたコミュ力を見せつける時がきたようだな。

「じゃあ、そうさせてもらおうかな」

 後ろの二人はその返答に驚いているようだ。
 でも、そんなの敢えて無視する。

 ここは屋台通りで、フードコートみたいに勝手にテーブルについて食べる形式だ。
 注文した日替わり定食を持って席を探す。

「あそこ空いてますよ」
「じゃあ、私は飲み物持ってくるから」

 リンダに続いてルシオも席を離れようとする。
 でも、ちょっと待てとばかりに腕を引っ張った。

「話をしようぜ」
「いや、一人で行かすわけにはいかないだろ」
「リンダのことで話があるんだ」

 どうやら、この言葉は効果覿面だったみたいだ。
 ルシオは素直に席に座り直した。

「俺の好みの話をしよう」
「はっ? リンダのことじゃねーのかよ」
「まあそういうな。俺はもっと大人っぽい女性が好きなんだ」
「ふぅん、それで?」

 にぶちんめ! せっかく恥ずかしさに耐えて、自分語りをしているというのに。

「それに今の俺は素人に毛が生えたくらいで、生き残るために必死なんだ。恋愛に現を抜かしてる場合じゃないんだよ」
「で?」
「剣星さんはリンダには興味がないって言いたいんじゃないの?」

 YES! ナイスフォロー、フォルカ。

「リンダって凄いモテるし、任務で一緒にいれば、お前もきっと好きに……」
「ならねーよ!」
「なれよ! かわいいだろうが!!」

 なんて面倒な奴! そして残念な奴。顔は悪くないのに。

「ルシオ、お前の立ち位置はどこなんだよ、ったく」
「いや、俺は……」

 自分の言ってることのアホさに気づいたんだろう。
 でも、俺の口からもはっきりと言っておくべきか。

「俺はリンダのことは特別な目で見ていない。だから変に突っかかってくるのは止めろよな」
「いやでもさあ、一緒のチームにいたら何かあるかもしれないだろ」
「ねえよ!」

 ああ、なんとなくリンダがルシオに惹かれないの分かる気がするわ。コイツはまだまだ全然ガキだ。そりゃ、大人っぽい副長に惹かれるわな。

 でも、もし俺に可愛い幼馴染がいたら、こんな感じになってる気もするんだよなぁ。ひょっとしたらルシオも俺に同族嫌悪してるのかも。
 そう考えたら、なんとなく親近感が沸いてきたぞ。

「俺も偉そうに言える立場じゃねえけどさ。お互い頑張ろぜ、ルシオ」
「ああ、わかったよ。変に突っかかって悪かったな。そうだよな。他人がどうこうより、やっぱり自分が良い男になんなきゃだよな」
「僕もリンダの好みのタイプとかそれとなく探ってみるよ」

 うんうん。これが男の友情ってやつだよ。

「そんなのこそこそしなくても教えてあげるわよ」
「えっ?!」

 振り返るとそこには全員分のドリンクを抱えたリンダが戻ってきていた。
 落ち着き払ったリンダとは対照的にルシオは見るからに動揺している。
 たぶん俺も同じだろう。
 どこから聞かれてた? 
 いや問題はそこじゃねーよな。

「やっぱり気の利く大人の人って素敵だな~思うな。少なくともカヨワイ女の子に飲み物を任せっきりにするような人じゃないかな~」
「いや、それは」

 よせ、ルシオ。ここで言い訳しても男が下がるだけだぞ。
 元はと言えば、引き留めた俺が悪い気もするんだが。
 仕方ないな。

「悪かったよ、今日は俺の奢りにするから許してくれ」

 これで俺が注文を迷った意味はなくなってしまった。
 でもチームワークが乱れるよりは絶対いいはずだ。

「嬉しい、剣星。あんたもいいところあるのね」

 わざとらしい猫なで声を奏でながら、リンダが腕に寄り添ってきた。
 ルシオが睨んでるよ。

 おい、せっかく温めた友情が冷めちゃったじゃねーか。
 リンダは嬉しそうにしてるし、ルシオは逆に不機嫌になった。
 フォルカは我関せずといったところか。
 結局ほとんど会話することもなく、食べ終えてしまった。

 この感じ、大学の食堂を思い出してなんだか懐かしい。
 周りで食べてる人はいても、偶然近くにいただけで仲良しでもなんでもない関係。
 でもあの時とちょっと違うのは、こいつらは俺の命を預ける仲間たちだってことだ。

 地元にも友達はいるけど、そこまで深く付き合っていたかっていうと、そうじゃなかった気がする。もしかしたら俺自身が一線を引いていたのかもしれない。それが大学ボッチに繋がったのかもな。

「お前ら、ここにいたのか」
「どうしたんですか?」

 突然テーブルに副長であるカラルドさんがやってきた。
 なんだか、ややこしい人間関係に拍車がかかる。
 そう思っていたけど、どうやらいつもと様子が違う。
 それを察したのか、リンダもルシオも引き締まった表情だ。

「全員揃っているなら丁度いい。緊急出動だ。各員、格納庫に集合せよ」
「了解です」

 三人はググッと飲み物を飲み干して席を立った。
 きっとこんな状況にも慣れているんだろう。
 ルシオとフォルカは昼にも出撃したのに一言も文句がない。
 俺も負けてられないな。

 そう思っていた所、「ちょっといいか?」と呼び止められた。

「これから出撃する事になる。夜間での活動になるが、訓練は受けているか?」
「はい、一応団長から一通り教わっています」
「よし、だったらついて来い」

 やべえ。一応返事はしたけど、ドキドキしてきた。
 夜間での活動はあれか、鉱山からの逃亡以来だ。
 あの時は真っ暗闇を突き進んでいたっけな。
 今思えば嵐の中でよく生き残れたもんだ。
 騒がしいレトがいてくれたのが良かったのかもな。

 格納庫に急いで戻って、水や食料などの荷物を受け取った。
 もしかしたら、結構長時間の活動になるのかもしれない。

「全員揃ってるね。手短に伝えるよ。先程、緊急の依頼を受け、これを受諾。夜間活動をしていた発掘屋が、敵に襲われて救難信号を出した。これより、我が傭兵団は現地に向かって、発掘屋の安全確保に努める。敵の数など詳しい状況は判明していない。皆、気を付けていくよ。各自、機人に乗り込め!」
「おう!」

 威勢よく返事して、機人に向かう。狭いコックピットに入り、ハッチを閉めて起動開始。それと同時に無線が飛んできた。

「剣星、出発前に照明を確認するのを忘れるんじゃないよ」
「うす、確認します」

 帝都は明るいので付ける必要はないけど、外で故障に気づいても困るからな。
 団長の指示通りにチェックする。
 方法は簡単。

 機人内部にある照明用の人力赤光発動機に繋がるラジウスを操縦桿クオーツまで伸ばして、接触させるだけ。ライトは機人の外側を明るく照らし出してくれる。

「今回は時間がないから、夜間迷彩は無しだ。先制されることを前提に動くよ」

 俺たちの機人は例え照明機器を使わなくても、赤光晶の光によって、暗闇の中でも常に居場所を知らせてしまうんだ。

 光を遮断する夜間装甲もあるらしいんだけど、出撃の目的は救出なので時間が勝負。交換している余裕はない。

 今回の出撃、今までと違うのは絶対に敵がいるということだ。発掘屋の救出が目的だとしても、必ず戦闘は起きると覚悟しておかなければいかない。どんな困難が待ち受けているとも限らない。何が大切なのか、きちんと優先順位を改めて整理しておく必要もあるだろう。
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