聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

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第39話 今日で涙とお別れだ!

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 レトとの会話が一段落したところで、フォルカの部屋に向かうことにした。

 キルレイドさんのことを知るのは勿論だけど、一番知りたいのは団長の事だ。

 あの時、団長は副長の攻撃で大怪我を負っていた。
 でも俺自身が倒れてしまったから、その後どうなったのか分からない。

 フォルカの態度から、死んでないということは想像できるけど、それでも不安だ。

 ドアをノックすると、フォルカが「どうぞ」と出迎えてくれた。

「団長のことを教えてくれないか?」
「……そうですね」

 フォルカは俺達を中に入れるとお茶を出してくれた。
 レト用に作ったのか、小さな木製カップもある。
 こういう細かい気遣いでレトと仲良くなったのだろうか。

「母さん……、剣星さんは知ってると思うのでそう言いますが、母さんは生きています」
「そうか」

 まずは一安心だ。

「医療設備がないので今はここにいませんが、手術も成功して意識もあります。後は回復を待つばかりです。ただすぐに傭兵として、という訳にはいかないそうですけどね」

「フォルカは付いてなくていいのか?」
「僕にできることはないですから」

 フォルカは淡々とした口調で言った。
 でもそのおかげで団長が無事だったと感じられる。

「だから僕は母さんの代わりに、見届けようと思うんです。……これじゃ伝わりにくいですね。ちょっと僕の事を聞いてくれませんか?」

 それからフォルカは自分の出生に付いて語り始めた。

 フォルカの母親はルクレツィア団長。
 父親がキルレイドさん。元は別の名前だったらしいけど。
 フォルカは十七年前、恋人だった二人の間に産まれた子供だ。

 だけど、騎士団幹部だったキルレイドさんは、ルーベリオ教会に不信感を持ち始めていたらしい。

「恐らく、父さんはその頃から教会を抜けることを考えていたと思うんです。でも教会の裏事情を知っているであろう人間を野放しにするはずがない。当然家族にも監視がつきます。だから僕が生まれる前に二人は別れたんです」

 そして団長は人知れず出産して、孤児院を開いたのだそうだ。

 フォルカと同年代の子供を集め、自分の子供だと疑われないように過ごしていた。リンダとルシオとはその頃からの仲だとか。

 そしてキルレイドさんは先代聖女を守れなかったことで離脱を決意。
 団長はその少し前から傭兵として出稼ぎに出ていくことがあったらしい。
 孤児院の運営には金が必要だ。
 教会のない地方では、孤児院への寄付など集まらないのだろう。

「僕たちは母さんの背中を見て育ちました。自分たちも傭兵になってお金を稼ごうと思うのは自然な流れです。でも母さんは僕たちを他の人に預けたくなかったって。だからルクレツィア傭兵団を結成したんです」

 フォルカもリンダもルシオもみんな立派だ。
 俺が中学生の頃とは比べ物にならない。
 実家でぶつくさ文句を言いながら、農作業を手伝っていたっけ。
 それすら嫌で東京に逃げてきたんだ。

「結成と同時にカラルドさんが教会からの推薦で加入したんです。今思えば、母さんは警戒されていたんだと思います。十七年以上前のことなのに。それだけ父さんが脅威ということもあるんですけど。それから少しづつ傭兵団は成長していきました。そして剣星さんがやってきたんです」

 なんだか自分がフォルカたちにとっての疫病神になっている気になってきた。

 いや、実際そうなんだ。
 団長は大怪我をしてるし、副長は俺が殺した。
 リンダとルシオは無事なんだろうか。

「イオリさんの流派の人が父さんの知り合いだったことから、母さんに話がきたようです。僕はそれを勘違いしちゃって、母さんの新しい恋人かと思ってたんです」

 フォルカは少し笑いながら言う。
 つまり俺が自分の父親になるかもしれないと思ってたんだな。
 そりゃ、こんな男が父親じゃ不安になるだろう。

「リンダはあんな性格だから褒めることはほとんどなかったですけど、剣星さんのことは認めていたと思います。ルシオも負けないように結構努力してましたよ。そしてあの決戦の日を迎えたんです……」

「……うん」

「母さんは内臓をやられてボロボロになりました。でも母さんは誰も責めずに自分の中の迷いにやられたと言ったんです。母さんは父さんと別れる時に付いて行く事もできたんです。でも本当に父さんの考えが正しいのか分からなくて自分から別れたと」

 あの日、団長はイオリに付いてきてくれと言われた俺の背中を押してくれた。
 
 イオリを助けるってのは、アルフィナがラヴェルサの元にいないってことだ。あの時の戦力じゃ、たとえ教会が協力的だったとしても、ラヴェルサの攻勢は止まらなかっただろう。

 もしかしたら、団長は理解していたのかもしれない。
 その結果、世界中にラヴェルサが現れるということを。
 迷わない方がおかしい。

「僕とカラルドさんが第八エリアではぐれた後、皆と合流してすぐにカラルドさんは剣星さんのことを尋ねてきました。そしてすぐさま飛び出しました。母さんはそれが意味する事をわかってたんでしょう」

 副長は俺を殺すためにやってきた。
 団長はそれを止めようとしてくれてたんだ。

 俺のすることが、間違ってるかもしれないと思いつつも……。
 俺を助けるために。

「剣星さん?」
「……大丈夫。ちょっと待ってて」

 いつの間にか、涙が溢れていた。

 やったことに対する責任は自分でとればいいと思っていた。
 でも俺の為に命を懸けてくれる人がいる。
 それなのに俺は自分の事ばかり考えて……

 嬉しさと情けなさで涙ポロポロだよ。

 でもいつまでも泣いてばかりいられない。

 鼻水をすすって顔をあげる。

「もう大丈夫だから」

「はい。……だから僕は見届けます。剣星さんがこれからどうするのかを。でも本当は、母さんが選んだ選択肢は正しかった、ってところを見てみたいだけなのかもしれませんけどね」

 フォルカは屈託のない笑顔でそういった。
 もう自分がやるべきことを見つけたからだろう。

「そういえばフォルカって、俺が寝ている間にレトと仲良くなってたんだな」
「それはレトさんにとって、僕が唯一の顔見知りだからだと思いますよ」

 敬称付けに思わず口元がにやけてしまう。

「剣星さんはここに来てすぐに倒れてしまいましたからね。レトさんは知らない人に任せるのが嫌だったみたいで、同じ傭兵団の僕のところに来たんですよ」

 レトに顔を向けると両腕を顔の前でブンブン交差している。

「ありがとな、レト」
「ま、まあ相棒だからね」

「それと機人の浄化もレトがやってくれたんだよな。レトがいなかったら、俺はあの時副長にやられてたよ」
「全然そんなつもりなかったんだけどね」

 やっぱり、そうだったのか。

「俺の機人には、傷口にラヴェルサの因子が沢山あったんだけど、どうやらレトが浄化してくれてたみたいなんだ。おかげで制御を奪われずに機人が強化されてたんだ」
「へ~、そうなんだ。やっぱり、私ってば凄いのね!」

「そうだな。って、それならレトと一緒に戦っていれば聖王機に近づけるくらいになるんじゃ……」
「流石にそれはどうでしょうね。一時的に装甲が強化されてもラジウスの方が耐えられないかもしれません」

 確かにフォルカの言ってる事が正しい気がするな。

「そうなると精密動作に影響がでて、動きが鈍くなりますし。それだと、剣星さんの持ち味が出ないように思います」
「俺の持ち味?」

「ええ、敵を倒した後の素早い方向転換なんかはホント凄いですよ。機人の運動性を限界まで活かしてるんじゃないかって皆と話してました」
「それもまあ、レトのおかげなんだけどな」

 なにしろレトレーダーで敵の配置が分かってるからな。

 でも他人の意見ってのは参考になる。
 俺の武器はパワーとか、装甲だと思ってたから意外だったけど。
 もう少し意識してみるか。
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