聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

文字の大きさ
45 / 58

第45話 再会!!

しおりを挟む

 森の拠点を出発してから数時間。
 神聖レグナリア帝国領に向かって、俺たちは順調に進んでいた。

「結構早く走ってるけど、皆ちゃんと付いてきてるね。最初の頃のケンセーより上手だよ」
「まあ、素人だった俺とは違って、しっかり訓練をやってきてるからな」

 別に自分と比べる気なんてちっともない。
 これからの戦いを考えれば頼もしいくらいだ。

 俺達がこれから向かうのは辺境の集落だけど、最終的な目的はアルフィナのいるラヴェルサの地下プラント。第八エリアの戦い以上の激しさが待っているに違いないからな。

「隊長! ラ、ラヴェルサの機人です!」
「……ケンセー、呼んでるよ?」
「ん? ああ、敵の数が少ないな。散開して包囲」

 呼ばれ慣れてないから反応が遅れてしまった。
 傭兵団の頃はみんな名前で呼んでたし。

 ラヴェルサの数は三機。戦力的には問題なく倒せるだろう。ところが敵を囲んだ小隊メンバーたちは、どうも距離をとって俺と戦わせようとしているようだ。俺の実力を試してるのか? 

 いや、どっちかっていうとびびってる気がする。
 こういう場合、団長だったらどうするだろうか

 ……よし!

「フォルカ、そっちに一機任せる」
「了解です」

 引き受けた二機のうち、俺は一機に接近して、切断を繰り返して戦闘不能にする。
 そしてすぐさま離脱。

 まずは手本を見せたってわけだ。
 無線から感嘆の声が漏れてくる。
 おいおい、頼むぞ。

「すぐに倒さないで、ラヴェルサの動きを観察しておけよ」
「はい!」

 後は周囲を警戒して任せるだけだ。
 ロジスタルスのメンバーの動きは悪くない。
 ってか、思ったよりかなり動けてる。

 三機はラヴェルサを囲んで無傷で破壊した。
 どうやら初めての実戦に緊張し過ぎただけのようだ。

「よし、いいぞ」

 俺の小隊メンバーは若いメンバーで構成されてるから、ここで実戦経験を積めたのは結構デカい。

 俺たちはこれから理想を追い求めて行動する。
 ベテラン兵士にとっては青臭く見えるだろう。
 だからそういう奴らはロジスタルス防衛に残し、若い奴だけで遠征しているんだ。

 キルレイドさんはロジスタルスを説得するのに苦労したと思う。
 下手をすれば……いや、成功したとしても問題になるのは間違いない。
 ラヴェルサから守るためとはいえ、国境侵犯をするんだから。

 軍人の衣を脱ぎ捨てて、一私人として戦いに赴く。
 そんな彼らを精神的に守るのが聖女の御旗だ。

「よし、行軍を再開するぞ。旗を掲げろ!」

 幸いにもロジスタルスにも聖女の権威は通用した。
 それはこれまで教会勢力が対ラヴェルサを一手に引き受けてきたおかげで、ロジスタルスに被害が及ばなかったからだ。

 それに加えてどうやらロジスタルスは、うら若い聖女たちのことをアイドルのように考えていたらしい。隣接する国とはいえ、他人事ように感じていたからこそだろうな。

 俺達はフォルカの小隊を先頭にして先を急いだ。

 戦力の少ないロジスタルスにしてみれば、分解したラヴェルサをすぐにでも回収して戦力化したいところだろうけど、それは帰り道までとっておくしかない。一番大事なのは集落に住む人々の命を守ることだからな。

 ラヴェルサとの決戦の時、俺はこの世界の人たちを見捨てる選択肢を選んだ。
 被害を与えたわけじゃないけど、俺は短慮で愚かだった。
 今は心から皆を救いたいと思ってる。
 それが結果的に、俺の望みに繋がっている。

 勾配のある道が続いてるから姿は見えないけど、レトレーダーに機人の反応がある。かなりの数だし、間違いなく戦闘が行われている。

「これラヴェルサに囲まれてないか?」
「うん。だけどこの人達強いよ。二機だけなのに上手くお互いをカバーしてるよね」

「剣星さん!」

 先行するフォルカから無線が飛んできた。
 心なし声が弾んでいる気がする。
 丘を登りきると、俺にも理由がすぐに分かった。

「リンクス!」

 リンダとルシオの動きだ。間違えるはずがない。
 慌てて無線を合わせる。
 どうやら二人もこっちに気づいたようだ。

「えっ、団長?! やっぱり生きてたんですね!」
「違うよ、リンダ、僕だよ! 剣星さんもいるよ!」

 興奮するフォルカが少し微笑ましい。
 それだけ嬉しいのだろう。
 でも俺も一緒になって喜んでたら駄目だ。
 小隊メンバーに指示を出す。

「各機、俺の後ろにつけ。一撃離脱して救助に向かう」

 第八エリアで戦った時みたいに一塊になって戦うんだ。あの時とはメンバーも違うし、練度はさらに違う。時間もあまりないから、俺が先頭で危険を引き受けて、さらに経験を積ませる必要がある。

「大丈夫。みんなちゃんと付いてきてるよ」

 丘を下ってるから速度は増してるはずだけど、遅れずに付いてきてるってことは思った以上にやれるようだな。これならイケるはずだ。

 俺達は二人を囲むラヴェルサの群れに向かって突っ込んだ。
 このまま一気に反対側から脱出できるだろう。

「リンダ、ルシオ! 後ろにくっつけ!」
「剣星か! 了解、助かるぜ」

 形勢は一気に逆転だ。

 分断したラヴェルサの群れの片方に対して、フォルカ小隊が襲い掛かる。
 残った方も俺達がUターンして始末した。



 リンダとルシオの操るリンクスを見た時、俺の心は単純に嬉しさで一杯だった。

 でも今は緊張しまくってる。アルフィナの名での活動を広めていく事もそうだけど、何より俺達はこれから情報交換をしなくてはならない。つまりあの決戦の時に何が起きたかを話す必要があるんだ。

 二人にはできれば……いや絶対に俺達と共に来てほしい。
 傭兵としての腕前は勿論のこと、何より信頼できる大切な仲間だから。
 だけど、果たして俺は二人を説得できるんだろうか。

 これから俺は副長を殺したことを言わなければならない。

 フォルカは目の前で団長を殺されかけたから、副長と敵対することは自然の成り行きだったと思う。でもリンダは副長のことを好きだった。俺に対してどんな行動にでるか分からない。

 戦闘が終了して再会を喜び合う幼馴染。
 俺は彼らの間に割って入った。

「二人共、また会えて嬉しいよ。ちょっと落ち着いて話をしないか?」
「そうですね。周辺にラヴェルサはいないようですし……」

 フォルカはなんとなく興奮が冷めたような声になった。
 俺が何を話すのか分かったのかもしれない。

「そうね。それじゃ私たちが契約してる町に行きましょ」

 数分後、俺達は小さな町に到着した。家の数は思ったよりもある。まあ、そうでもなきゃ、傭兵を雇う金なんてないだろうしな。もしかしたらリンダたちがリーズナブルな価格を設定してる可能性もあるけど。

 俺達が話をしてる間、俺の小隊には町周辺の警戒を指示。

 フォルカ小隊は町に入って、俺達がアルフィナの名のもとに救助活動をしてることを広めてもらう。年は若くても聖女様ご一行のつもりだ。礼儀を欠く振る舞いは絶対しないように注意しておく。

 小さな小屋に集まったのは、ロジスタルスのメンバーが気を使ってくれたおかげで、ルクレツィア傭兵団の操者とメカニックのおやっさんだけだ。最初に口を開いたのはルシオだった。

「俺達はあの戦いの後、みんなを待っていた。けど誰も戻ってこなかったから、二人だけで仕事を始めようとしたんだ。そしたらいきなりリグド・テランとの関係が悪化してるって聞いてさ」

「二人だけじゃ碌な仕事を引き受けられないし、他の傭兵団に助っ人することも考えたんだけど、戦争が始まりそうだったからね。信頼できない傭兵にいきなり背中を預けるのは嫌だし、だったら暫く辺境に行こうかってことになったの。ここで二人と会うとは想わなかったけど」

 なんだか二人共随分変わったような気がする。
 離れてからそんなに経っていないはずなのに。

「それで、そっちはどうだったんだ? 団長たちは……その無事なのか?」
「うん。団長は今はロジスタルスの病院にいるよ。副長は――」

 俺はフォルカの言葉を遮った。
 ここから先は俺が話すべきだろう。

「副長はあの時、俺と戦って……俺が殺したんだ」
「殺したってお前! どういうことだよ!」

 俺に食って掛かったのはルシオだ。
 恋敵の副長に対しては思うところもあるだろうに、仲間想いのいい奴だ。
 逆にリンダは下を向いたまま。
 俺はそれが怖い。

「戦場で副長は俺達に追いつくなり、すぐに攻撃してきた。それは俺達が聖女であるアルフィナを助けにいくのを防ぐためだった」
「……意味が分かんねえよ」

 それはそうだろう。
 いきなりこんな話を聞かされれば、誰だってそう思うはずだ。

「違うんです! 副長はいきなり攻撃してきて、母さんも傷ついてそれで仕方なく……」

 ありがとうな、フォルカ。

 俺は世界の平和は聖女という犠牲《いけにえ》によって成り立っていることを話した。できるだけ感情的にならず淡々と話したつもりだ。

「副長は世界の平和を守ろうとした。俺はアルフィナを助けるために副長と戦った。そして俺が生き残った。俺はあの時、自分が正しいと思ったから副長と戦った。いや、違うな。今の世界じゃ笑顔になれない人がいる。だから俺は戦ったんだ」

「それってイオリとかいう女騎士?」
「ああ、そうだ」

 それまで話を聞くだけだったリンダが声を上げた。
 でも怒りとかは感じない。

「私さ……副長が剣星のことを見張ってたの知ってた。というか、私が副長にお願いされてたんだ。それでずっと報告してた。どんなに細かいことでもね。あんたに何があるのって軽く考えてたけど、まさか聖王機に乗ってたなんてね。想像以上」

 リンダはただただ悲しんでいるように見える。

「私たち傭兵だもんね。所属が違えば戦うこともあるよね。副長と剣星は立場が違っただけ。……悲しいけどそれだけのこと」

「何でそんな簡単に納得してんだよ! 悔しいけど、お前は副長のことが好きだったんだ。自分の気持ちを誤魔化してんじゃねーよ!」
「なんでルシオが怒ってるのよ。……でも、もういいの。心のどこかで死んでたんだって納得しちゃってた」

「リンダ。俺が勝手に思ってることだけど、俺は副長の分まで世界の平和を守ろうと思ってるんだ。副長の望んだとおりじゃないけど、世界中の人を救うって。二人にも手を貸してほしい」

「それって、あの騎士のためでしょ?」
「そうだ」
「ふ~ん、剣星ってそういう人だったんだ。意外」
「俺もそう思う」

「いいよ、手伝ってあげる。それでいくら払える?」
「はっ?」
「私たち傭兵だもんね」

 リンダは指で金貨が入りそうな丸を作った。
 でも俺には先立つモノはねえ。
 キルレイドさんから少しだけ貰ってるけど、傭兵の頃より稼ぎは大分少ない。

「出世払いとかで……お願いしたい」
「いいよ、それで。ホントに聖女様が立つんなら、剣星もそれなりの立場になるだろうし。ロジスタルスと繋がりを持つのも悪くないかな。ルシオはどうするの? 私が行くから自分も、なんて止めてよね」

「俺は正直、何が正しいかなんて分からない。話を聞いててもどこか他人ごとのように感じてしまう。でももしリンダが聖女だったら、そう考えたら絶対そんな世界は認めないと思うんだ。だから剣星、俺も一緒に戦わせてくれ」

「……そう、まあいいんじゃない。でも合流はもう少し先ね。こことの契約もあるし。まあ、ちょうどよくラヴェルサのパーツが手に入ったから、それを譲ればすぐに他の傭兵が来るでしょ」

 そうだよな。誘われたから、はい合流とはいかないよな。
 町の住民のことも考える必要がある。
 そうじゃないとアルフィナの名前に傷をつける事になるからな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...