聖女の御旗に集え!! ~ こんな世界、俺がぶっ壊してやるよ!!

犬猫パンダマン

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第57話 想いの力で敵を討て!!

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 アルフィナが死んだ?

 確かに病気で苦しそうにしていたけど、今さっき死んだってのかよ……

 俺たちは遅すぎたのか?
 多少距離があったとしても、前回来た時に強引にラヴェルサを封印しておけばよかったのか?

「ケンセー!」
「分かってる」

 今は俺にできることをやるだけだ。

「イオリ!」

 イオリだって、分かってる。
 今は悲しむ時間じゃない。

 マグレイアの狙いは俺だ。
 イオリは動きの鈍い双星機で回り込んだ。

 俺よりショックを受けてるだろうに。
 アルフィナの想いを無駄にしないために必死なんだ。

 マグレイアの攻撃をなんとか回避しつつ、思考を巡らせる。
 全然、いい考えなんて浮かんでこない。
 パワーもスピードも段違い。

 どうやって勝てばいいんだ?
 マグレイアから逃げながら、プラントを破壊しに行くか?

 それだと、本来二人で抑え込むはずだったラヴェルサを、レトが一人で浄化しなくちゃならない。

 レトは赤光晶も固まりみたいなもんだ。
 いくら本人でも、想いの力を失ったら人格を失うかもしれない。

 だからって、そのまま破壊するなんて、みんなの想いを無駄にする最低の行為だ。


「やばい!」


 マグレイアの剣を避けるべく、レディア・ソローを右にずらす。


 けど、左足の動きが鈍い。


 このままじゃ、コックピット直撃コース!!


 俺は咄嗟に左腕を犠牲にして、剣の軌道をずらした。


 マグレイアの剣は、レディア・ソローの首から侵入してくる。
 剣が俺の頭のすぐ上を通り過ぎ、そのまま左腕ごと切断した。

 俺はぐるぐる地面を転がりながら、距離をとった。
 コックピットの左側から、土が跳ねて入ってくる。

「さっき掴まれたときにやられてたのかよ」

 レディア・ソローは満身創痍だ。
 左腕を失い、左足も反応が悪い。


「ケンセー! まだくる!」
「しまったっ!」


 完全に反応が遅れた!
 間に合わない!


 その時、空いたコックピットから双星機の手が見えた。


 イオリが横から押してくれたんだ。
 でもそれは、マグレイアの剣の軌道に双星機がいることを意味している。

 このままじゃ、イオリがやばい。

 俺は即座に右手をついて、大地を蹴った。
 右手を軸に回転して、マグレイアの足を払う。

 バランスを崩したところで、イオリと共に脱出した。

 双星機は右腕が切断され、唇を噛みしめてるイオリの姿が見える。

 俺たちはもうボロボロだ。
 こんなんで勝ち目があるのかよ。

「剣星、アレを見ろ」

 イオリが指さす方向を見る。

 その先には大量の赤光晶がある。
 きっとプラントもあそこにあるんだ。

 けど、何かがおかしい……

「なんで、赤光晶が輝きだしてるんだよ!」

 しかも、輝きはどんどん激しさを増している。

 こんなに強いと俺にも分かる。

 ラヴェルサの怒りとか、マグレイアの執念じゃない。
 心が落ち着いていく。

 この暖かさ、俺は感じたことがある。


 ……もしかして!


「イオリ!!」
「……ああ、間違いない」


アルフィナちびすけだ!!」


 そうか、アルフィナは本当に死んでしまったんだ。
 でも俺は今、アルフィナはここにいるって感じている。

 赤光晶に溶けたアルフィナの想いが、俺たちを包み込んでいく。
 ここが戦場だと忘れてしまうくらいに、暖かくて、穏やかな気持ちになる。

 赤く輝く結晶は、まるで夜空を照らす天の川のようだ。

 流れつく先には、レディア・ソローが……

 いや、そうじゃない。
 アルフィナの想いがむき出しのコックピットの中に入り、レトの中に向かっている。

 それだけじゃない。

 双星機のコックピットにあるアルフィナの体からも、赤光晶がレトに流れてきてる。

 アルフィナが力を貸してくれてるんだ!


 レト!!


「ぎゃー!! 私の中に勝手に入ってくるな~!! アルフィナちびすけに犯される~!!」

 ……オイ、場の空気を読めよ。このヤロウ。

 神々しさが吹っ飛んだじゃねーか。

「(羽虫よ、滅多なことを言うでない!!)」
「(その声……アルフィナか?!)」

 なんで、アルフィナの声が聞こえてくるんだよ。
 しかも、まるでレトと頭の中で話してるみたいだ。

「(剣星、彼奴が来ておるぞ!)」
「うおっ?!」

 マグレイアの攻撃を、横に倒れるように躱して、距離をとる。

「(私から出てけ~!!)」
「(事が終われば、すぐにでも出ていく。今しばらく、大人しくしておれ! 剣星!!)」
「(は、はい!)」

 窮屈なコックピットで思わず姿勢を正してしまう。

「(時間がないゆえ、手短に伝える。妾の力は全て羽虫に返した。お主はプラントの奥に向かい、そこで彼奴を討て! この機人が羽虫の力に耐えられるのは、恐らく一度だけじゃろう。その一撃に全てを賭けるのじゃ!)」

「……おう! 俺に任せろ!!」

「どうした、剣星?!」
 「アルフィナが伝えてきた。俺はこれから奥に向かって、マグレイアを討つ! ついてこい!」

「ちょっと待て。確かにアルフィナ様を感じるが、剣星はその声を聴いたのか?」

「そうだ。アルフィナは死んでるけど、生きてる! レトと同じだ!」

 ちょっとややこしいけど、本当だから仕方ない。

 なんでレトの体にいるのかは分からない。
 もしかしたら、レトのように体を変えることができるのかもしれない。

 レトは三百年以上前に死んだレストライナの想いが赤光晶に宿った姿だ。
 だけど、俺はレトが死んでるなんて考えたことがない。

 だから、アルフィナだって生きてるんだ。

 俺は双星機の剣を拾って、駆け出した。


 不思議だ。


 さっきまで、どうすればいいのかまったく分からなかったのに、今では全然負ける気がしない。

 イオリもついてきてる。
 俺の話を信じてくれたんだ。
 その後ろには、もちろんマグレイアの姿もある。

「もっとだ。もっと奥にいってレストライナ因子を開放して、マグレイアを倒す! ついでに周りのラヴェルサも大人しくなるはずだ!」

「だが、今の機人の状態ではすぐに追いつかれるぞ。私がここで足止めする!」

「いいや、その役目は私たちに任せな!」
「団長?!」

 団長がこっちに来てくれている。
 機人が傷だらけだってのに。

「ルクレツィア、俺に合わせろ!」
「あんたが私に合わせな、浮気ヤロウ!」

 無線で二人が言い合ってる。
 ラヴェルサはさっきので動きが鈍くなってるから、援護に来てくれたんだ。

 速度を出せない俺のために、マグレイアを牽制してくれてるんだ。

 遠くから、リンダたちも追いついてきてる。
 皆、生きていた。

 マグレイアに仕掛けて反撃させることで、僅かだけど時間を稼いでくれている。

 強力な一撃を受けて機人は下がっていくけど、致命傷はうけてない。
 流石だよ、みんな。

「剣星、頼んだぜ!」
「おう、俺に任せろ!」

「剣星さん、お願いします!」
「ああ、ありがとな!」

「みんなが、あんたのことを見てるんだからね!」
「しっかり見ててくれよ!」


 ……分かってるよ、リンダ。


 こんな世界なんだ。
 ひょっとしたら、副長の想いが詰まった赤光晶も、どこかにあるかもしれないな。


 副長、見てますか?


 俺はコイツを倒して、副長から奪った平和な世界を取り戻します。



「(ケンセ~、早くして~。気持ち悪い……)」
「(しっかりせんか、羽虫。ほれ、いつでも操縦桿《クオーツ》に触れられるように準備しておかんか)」


 …………だからっ、それやめろって!


 ったく、感傷的になってるのを邪魔すんなよな。

 アルフィナに促されて、レトがふらふらと飛んできた。
 右腕に着地して、よちよち歩きで右手に登っていく。

 こんな時にマイペースなんて、頼りになる奴だよ、ホントに。

「レト! ここで迎え撃つぞ。俺の相棒なら、しっかりしろ!」
「むむむ……ケンセーのくせになっまいき~! 私の底力を見せてやるんだからね!!」


 レディア・ソローを反転させて、時を待つ。
 双星機を横づけしてきたイオリと目が合った。

「剣星、なにを笑ってるんだ?」

 笑ってる?
 俺が?
 そうか、俺は笑ってるのか。

「それはな、この後のことを考えてるからだ。聞きたいか?」
「言いたいのだろう?」

「ああ、言いたいね。俺は世界を平和にしたら、好きな女とイチャイチャして過ごすんだ。それが楽しみなんだよ」

「こんな時にお前は。……本当に仕方のない男だな。だが戦士にも休息は必要だ。せいぜい物好きな女に逃げられないよう、強く抱きしめておくんだな」

 イオリは視線をそらして、そう言った。

「(おお! イオリめ、中々に甘え上手ではないか)」
「(ホント、この二人には、ヤキモキさせられたんだからね!)」

 この二人、喧嘩するのも困るけど、意気投合しても厄介そうだ。

「さあ、行くぞ!! これが最後の勝負だ!!」

 マグレイアが迫ってきた。
 俺はイオリに続いて駆け出した。


 マグレイアがイオリを攻撃するために剣を振ろうとしている。


 瞬間、イオリは横に弾けた。


 このまま剣を振っても俺には届かない。


 振り直しする暇なんて与えない。
 後の先なんて、俺には似合わねえ。


 先行逃げ切り、やらせてもらうぜ!


「レト!!」
「いっちゃえぇぇ!!」


 振り上げた剣がズシリと重くなる。
 なんて、パワーだ!

 でも機人のパワーもスピードも上がってる。
 避けれるはずがねえ。


 マグレイアが俺の攻撃を防ごうと剣を構えてる。


「(まとめて叩き切るのじゃ!!)」


 その通り!!
 防御ごと、叩き潰す!!


 剣と剣が衝突する。
 マグレイアの奴、なんて執念だ。


 でも悪いな。
 全然、負ける気がしねえんだ。


 ここにはみんなの想いが溢れてる。


 みんなが俺の背中を押してくれてるんだ!!



「これが、俺の、俺たちの、想いの力だぁぁ!!!!」



 聖王機が真っ二つに割れて、崩れ落ちていく。
 輝きを失い、機能が完全に停止したんだ。

「……俺たちは勝ったのか?」

 レディア・ソローから、暖かな光が広がっていく。
 レストライナ因子がラヴェルサを浄化してるんだ。

 プラントの振動が止み、光を失っていく。
 遠くに見えるラヴェルサも、動きが止まって倒れていってる。

「勝ったに決まってるでしょ! 私のおかげでね!!」
「ああ、流石だぜ!」

 レトとハイタッチをしていると、急にレディア・ソローがバランスを崩した。
 負荷に耐えられず、完全に機能を停止してしまったんだな。

「(剣星、まだ気を抜くでないぞ。お主らの役目は残っておろう)」
「役目?」

「(勝鬨じゃ。ほれ、皆が集まってきてるじゃろうに。戦い抜いた戦士のために、そして散っていった者への手向けじゃ)」

 そうだよな。
 この勝利は俺たちだけの力じゃない。
 多くの人たちの助力があってこその勝利だ。

 レディア・ソローは全く動かない。
 無線もイカレちまった。

 でも、そんなの関係ないよな。

 イオリが双星機の左手を差し出してくる。
 俺が乗ったのを確認して、イオリが手のひらを高く掲げようとしている。

 でもここは、元教会騎士のイオリとリグド・テランの服を着ている俺たち二人でやるべきだ。
 

「イオリ、お前も来い!」


 戸惑うイオリの手を掴んで引き上げた。


 皆が俺たちに注目してる。
 こぶしに力が入っていく。


「イオリ」
「ああ」


 俺たちがこぶしを天に向けようとした瞬間、レトがスルスル上に飛んでいくのが見えた。


 おい、まさか……


「私たちの勝利だぁぁ!!!!」


 俺たちの役目じゃなかったんかい!


 それにしても、レトの声は凄い大きさだな。
 小さい体のどこから出してるんだか。
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