異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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一章

4.ハルト、見捨てられる

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「魔物だってよ。ハルトはどんなやつだと思う?」

「さぁ? ゴブリンとかなんじゃないか?」

「ゴブリンってあのちっこいのだよな」

「うん」

「それなら倒せる気がしてきたぜ」

「あんまり油断しない方がいいぞ」

 走りながら会話をしていると森の近くにいた人々が慌てて走って逃げていた。異世界転移二日目の時ハルトがダリアにここら周辺について少しだけ聞いていたことなのだがこの森は栄養のある果物や実が生えておりよく魔物が果物や実を狙って人間の生活範囲に入ってくるそうだ。恐らく今回の魔物も食物目的なのだろう。

 必死に走りかなり森の奥まで来た頃ハルト達の前に現れたのは巨体のトロールだった。トロールを前にして皆は恐怖がいっぱいになり悲鳴をあげ逃げ出す者も何人かいた。ゴブリンならまだしもトロールなんてどうするんだよとハルトが思っているとトロールは近くの木引っこ抜いた。

 その光景を見た生徒は少しだけ後ろに引き下がる。もちろん能力スキルのないハルトはどうしようもなく非戦闘系能力スキルがいる後ろに下がった。
 一方前では和希の取り巻きの大智たいちが戦闘系能力スキル【拘束】でトロールを拘束していた。その隙に和希が聖剣を持ってスタスタと走っていく。勢いをつけた和希は「おらぁああああ!!」と叫びながらトロールに斬りかかる。

 だがその時大智の拘束が破られ自由になったトロールは持っていた木で和希を弾き飛ばした。

「や、やっぱり無理だ! 僕には無理だァァ!!!」

「嫌だ来ないで!!! 助けてェェ!!!」

「なんでそんなァァァァ!!!!」

 すぐに起き上がった和希だったが最高戦力がその場にいない状態では陣形が保てるはずもなく戦闘系能力スキルのいる前衛は完全に崩壊し逃げ始める。トロールは次々に木で生徒を弾き飛ばしたり押しつぶしたり好き放題に殺していた。
 後衛の非戦闘系能力スキルの者達が戦闘系能力スキルの者達を支援しようとするがもうすでに前衛は存在していなかった。
 
「海斗、前!!!!!!」

 ハルトは海斗に大きな声でそう言い間一髪のところでトロールの攻撃を回避した。しかし前衛の生徒は後ろに下がってきておりもうこれ以上戦えないと判断した和希があっけなく全員で撤退する事を選んだ。だが撤退するからと言ってトロールは敵と見なしたハルト達を逃がすわけがなくどんどん近づいてくる。涙を流しながら悲鳴をあげながら一斉に走る中結華だけが石につまずき転んでしまう。その時すぐ後ろにはトロールが迫ってきていた。

「結華!!!!!」

 ハルトはとっさに結華の元に走る。能力スキルのないハルトは持っているすべての力を振り絞って持っていた剣を思いっきりトロールめがけて投げ飛ばし結華に覆いかぶさる。

「グォォォォ!!!!」

 ハルトの剣は運良くトロールの目に命中した。しかしそれのせいでトロールは暴れ出し持っていた木をどこかに投げ飛ばしさらに凶暴化した。

(このままじゃ結華まで……)

 片目が見えないトロールは手を拳にして地面をてきとうに叩く。その拳は少しずつハルトの方へと迫ってきていた。

「結華逃げろ!!」

 ハルトは結華を自身から突き放した。

「ハルトも早く!」

 突き放された結華が逃げる事を急かすがハルトは動こうとはしなかった。いや動けなかったのである。

「どうしたのハルト!!」

「……ごめん」

 トロールの拳は先程まで結華のいたところに振り下ろされていた。
 突き放したあとどうにか少しでも離れようとしたハルトだったが間に合わなく片足は攻撃に巻き込まれぐちゃぐちゃになり動けなくなっていた。

「ハルト!大丈夫か!!!」

 海斗が叫んでハルトに近づこうとした時トロールは再び大きな叫び声を上げ森の更に奥へと走っていった。

(助かった……)

 ハルトは激しい痛みと安心でそのまま気絶してしまったのだった。
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