異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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一章

49.一難去ってまた一難

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 ハルトとラムネは門まで競争した結果、圧倒的な差でラムネが勝利をおさめた。

 ハルトは門に着くとシノを降ろしたあと膝に手を置き息を安定させる。汗がポタポタと地面に垂れていた。しばらくして呼吸が安定するとしっかりと立ち額の汗を拭う。

 そしてラムネが先行して歩き出したのでそれに続いてハルトとシノもついていく。いつも通り歩いているハルトにシノは声をかけた。

「大丈夫?」

「体力には自信あるほうなんだけどなぁ」

「それじゃない。さっきの人達のこと」

「あ、あぁ。シノは気にしなくていいからな」

「でも……」

「ほらゆっくりしてたらラムネに追いて行かれるぞ」

 シノは何か言おうとしていたがハルトはそれをわざと遮って先を行くラムネの方に走っていく。シノは先を行くハルトの後ろ姿を見つめながら小さな声で呟く。

「私だと……だめ?」

 澄んだ空に二羽の鳥が鳴きながら交差しあい自由に飛び回っている。その下では黒い煙がぐんぐんと空に広がっていき汚していく。煙の中には赤い火がチラチラと姿を現している。そして周りでは大勢の人がその様子を眺めている。

「…………」

 ハルト達は止まり目をよく凝らして確認する。何かの見間違いかなと思い目を擦ってもう一度目をがん開きにして確認する。しかし目に映るものは同じだった。むしろ火が強くなっているように感じたハルト。それと同時にハルトは異世界が鬼畜じゃないかもしれないと少しでも思ったことに後悔する。異世界は思うようにはいかないのだ。

 ハルトはある事を言うしかないと感じ深く息を吸った。そして燃える方に向かって大声で叫びだす。

「なんで宿が燃えてんだよォォォォォオオ!!!!」

 それを言えたハルトは何やらスッキリしたような表情をしていたがスッキリしている場合ではない。なんせ宿が燃えているのだ。これはハルト達にとって大問題でしかない。

 これからどうするかとハルトが考えていると隣にいたシノが声をかけてくる。

「野宿、確定」

「やめてくれ。野宿なんて御免だ」

「ならどうするの?」

「ちょっと待っててくれ。あそこに宿の人がいるから聞いてくる」

「うん」

 ハルトはシノとラムネを火の影響を受けない様な安全な場所にいる事を確認したあと少し前にいる宿の人の男性に色々と話しを聞くために近づく。男性はハルトが何やら近づいてきている事に気付き後ろを振り向いた。

 ハルトは男性に一体どうして宿が燃えているのかと初めに聞くと男性は「よくわからないんだ」と言った。その後に続けて男性が言った事を簡単にまとめると火災発生前に酒場では火などは扱っておらず仕込みをしていたとのこと。男性の話しからハルトは火元がキッチンでない事がわかった事から宿泊部屋で何かしらの火トラブルがあったのではないかと考えた。それを男性に伝えるともしかしたら……と言葉を止めた。

 もしかしたら? とハルトが尋ねると男性は「そんな事はないかもしれないけど誰かがわざとやったとかあるんじゃないかと思って」となかなかに衝撃的な発言をした。確かに異世界なら有り得そうな事だなと思ったハルトだが本来の目的は探偵になって宿屋【ヒトヤスミ】火災事件の真相を見つけ出すのではなく他に宿がないかを聞きに来たのだと言うことを思い出し話題をすり替えた。

「ところで近くに宿とかってないんですか?」

「ここら辺にはこの【ヒトヤスミ】しか宿がないんだ」

 返答を聞き野宿確定を確信した時に男性がさらに話し始める。

「君は確か昨日酒場で水色の髪の女の子と一緒にいた人だからここの宿泊者ってことか。ん~、宿ではないけどすぐそこに【ヒトヤスミ】が所有してるけど馬がいない馬小屋があるからそこでもいいなら無料で使ってもかまわないけど」

 男性の提案してくれているものは非常に助かる事だがハルトは場所が馬小屋だという事に少し不満を感じていた。例え馬がいなかったとしてもそれはもう寒い空間で凍え死ぬ可能性すらある気がする思っているハルト。一旦ここはシノとラムネとも要相談する必要があると思ったハルトは二人を緊急招集した。
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