異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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一章

51.名物犬

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「あ、あのぉ~、まさかとは思いますけどここだったりします?」

「……落ち着いて聞いてくれ。そのまさかだ」

「ナァ~~!! こんなとこに住めませんよぉ!」

「ラムネ、お前の金で馬小屋を買おう」

「いくらすると思ってるんですかぁ!」

 ハルトとラムネのあまりにも酷すぎる状況を目の当たりにして絶望しているとシノが二人に声をかける。

「大丈夫。あのニャンは中でおしっこしてないみたいだから。お利口さん」

「ワンだろ。それに勝手に柱におしっこしてる時点でお利口じゃないけどな」

「良いから行こ」

 シノはハルト達にそう言うと馬小屋の方に歩いていく。ハルトとラムネが歩き出した時にちょうど犬はおしっこを終え座って近づいてくるハルト達の事を見つめていた。犬は口を開けべろを出ししっぽを振りながらへぇへぇと呼吸をしていた。

 犬の元にたどり着いたシノは座り込んで犬を見つめる。シノが犬に触ろうとするとワンっと吠えそれに驚いて触るのをやめた。しかしシノは諦めない。「ニャンころーニャンころー」と言い寄りながら頭を撫でようとする。だがまたしても犬に吠えられてしまう。終いには手をパクっと噛まれてしまった。

 シノは噛まれた事がよほどショックだったようで噛まれた手をもう片方の手で撫でたあと犬に向かって人差し指をさす。近くで見るとさらにボロいことがはっきりし落ち込んでいるハルトだったが隣で犬に向かって指をさして今にも何かをしようとしていたシノに気付き急いで「シノ!」と声をかける。

 それにシノはびっくりしたようで体が一瞬ビクッとしていた。ハルトが何をしていたんだ? と聞くとシノは「犬には制裁を」と愛護団体に目を付けられそうな発言をした。そんなシノをハルトはなだめこっちに来るように言う。シノはハルトの言うことに素直に従い立ち上がり隣に立った。

「こんなとこに住むの?」

「結局嫌だったのかよ」

「これなら野宿でもいいけど」

「さすがに野宿はきついだろ」

「そうです~! 野宿なんて冒険者がやることなんですよぉ!」

「俺達も冒険者みたいになりかけてるとこはあるけどな」

「えッッ!?」

 このボロすぎる馬小屋に泊まるかそれとも野宿をするかどちらが安全かつ地獄を見ないかと考えていたハルトは足を進め一旦馬小屋の中を見てみる。馬小屋の中は思ったより狭くはなく三人くらいなら余裕で入れる様な広さだった。地面には沢山の敷き詰められた藁があった。おまけに謎の布団までも置かれていた。もしかして誰かがここで寝ていたのだろうか。

 軽く見て判断する予定だったがさらに馬小屋の中に入って状況を確認する。外から見た馬小屋は今にも崩壊寸前のボロ馬小屋だったが中はそこまでボロさを感じるというわけでもなければ気になる匂いなどもほとんどなかった。ただやはり隙間があるため風が入ってきてはハルトの髪を揺らす。

 馬小屋の中を一通り見終えたハルトは出てきてシノとラムネに声をかける。

「馬小屋で泊まろう」

「ハ、ハルトさん! 正気ですかぁ!? これ嫌がらせかなにかなんですか。お二人がここに泊まると決めることで必然的に私に拒否権がなくなるという巧妙な策ですかぁ!!?」

「何言ってんだ。中を見てもらえばわかるが外見と犬以外は特に気になる要素はない。中の布団は洗う必要があるかもしれんがな」

「なるほど。ハルトさんがそんなに言うなら大丈夫なんでしょぉ! 早速布団をどっかで洗ってきます~!」

 ラムネは馬小屋に入ると置かれている一枚の布団を持ち上げる。そして馬小屋から出てくるとハルトの前に止まり「これ臭いです~」といらん情報を教えてからどこかへと走っていった。
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