異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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二章

86.日常

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「ハルトさん……大丈夫ですか?」
「……あぁ、お前らも大丈夫か……」
「はい……」
「うん……」

 地面にうずくまって泣いていたラムネとハルト。
 しばらくして体を起こしハルトは地面に座ったままどこか遠くを見つめていた。
 後ろで立っていたシノはスタスタとゆっくりハルトの背後から近づきただ静かに包み込むように抱きしめた。
 それをラムネが私も誰にかに包みこまれたいと思っているようで二人の様子をじーっと静かに見つめている。
 ラムネの様子に気づいたハルトは一度無言で状況を確認したあとラムネにこっちに来るように手で合図を出す。
 ラムネは座ったまま足を少し浮かせて合図通りハルトの方に少しだけ近づいた。
 そしてハルトはラムネのことを抱きしめる。
 まさかハルトに優しくされるなんて思っていなかったラムネは一瞬ビクッ! と驚いていたが段々と慣れてきたようでラムネもハルトの事を抱きしめた。
 その時ハルトが小さな声で「どうするべきだったのかな」と呟いた。
 シノとラムネは言葉を選んで答えようとする。

「ハルトは頑張った。私も頑張った。ラムネも頑張った。リルも頑張った。皆頑張ったんだからやることはやりきった」
「そうです。皆頑張ったんです。やりきったんです。だから自分ばかりを責めないでください……」
「……そう言って貰えて、こうして貰えて、少しは次にやるべき事が決まった気がするよ」
「それはよかった」
「……帰ろうか。俺の家に」
「……ハルトさん、私の家ですから」
「そうだったな。完全に忘れてたよ」

 三人はゆっくりと立ち上がる。
 今日起こった出来事、そこで起こった出来事を三人は鮮明に覚えており何度も記憶が頭の中で繰り返し映し出されている。

「今日のご飯どうするか」
「……そうですねぇ」
「隠し飯がここにある」
「今日はそれだな」
「それですね」

 三人はそんな会話をしながら家に向かい出したのだった。


@@

 
 家についたハルト達は相当疲れが溜まっていたようでそれぞれ自分の部屋にそのまま直行し休む事となった。
 ハルトは部屋に入るとコートを脱いで椅子にかけてベッドに倒れ込む。
 うつ伏せになりながら拳を振るい上げ何度かベッドを叩いた。
 少し冷静になったのかうつ伏せの状態から仰向けの状態に体を動かし天井を見つめる。
 手のひらが目を覆うようにしたあとハルトははぁーっと深いため息をつく。

「こっからどうすればいいんだ……」

 そんな事をぼそっ呟いていると部屋の扉を誰かがノックしてきた。
 反応しないでいると何度もノックをしてくるのでハルトが「今は一人にしといてくれ」と言うと扉がガチャっと開く。
 そこに立っていたのはシノだった。
 思わず人の話しを聞いてたのかと言いそうになったハルトだがシノは何かあって来ているのだからそんな事を言うのは違うかと思い黙っておくことにした。

「どうしたんだ?」
「なんでも」

 シノはそう言うと扉を閉めてハルトが寝転んでいるベッドへと近づいていく。
 何をするのかとハルトが様子をずっと見ているとシノはゆっくりハルトの体の上に乗っかった。

「何してるんだ?」
「なんでも」
「シノはずっとそんな調子だな」
「それが私のいいとこ」
「確かにそうかもしれない」
「ご飯たべる?」
「まだ良いかな。ちょっと寝てからにする」
「わかった。今日は私が気合を入れるから」
「そうか。それは楽しみだな」
「乞うご期待して」
「そうする。……悪いけどそろそろ眠たくなってきたから」
「うん」

 シノはハルトの胸に耳を当てながら寝そべる。
 ハルトはその光景を見て思わず可愛いと思いシノの頭に手をのせる。
 頭に手を乗せられた事に気づいたシノはさらにハルトに抱きつく。
 そしてハルトはシノの頭をゆっくりと撫で始めた。
 
 ゆったりと甘い時間が流れシノを撫でる手の動きが少しずつゆっくりになりはじめる。
 ちょっとしてハルトの手は動きを止め眠りについた。
 シノもハルトに撫でられていたことでなんだか安心したようでうとうとし始めて同様に眠りについた。


@@


 あれからハルト達はけっこうな時間一緒に眠っていた。
 外はすっかり真っ暗になっている。
 そして未だに二人は眠っていた。

 自室から出てきたラムネは一階に降り「ハルトさぁん、シノさぁん」と言って名前を呼ぶが返事がなかった。
 あれ~と思いながらもラムネは一階に降りていくがやはり二人の姿はなかった。
 もしかして部屋? と思ったラムネはまた階段を登りハルトの部屋へと向かった。
 扉の前に立つと三回ほどノックをしてみたが全く反応がない。
 寝てるのか!! と思ったラムネはノックを止め普通に扉を開けて中に入った。

 するとそこには二人抱き合いながらで寝ている光景が広がっていた。
 思わずラムネは叫んだ。

「なんで私も混ぜてくれないんですかぁ!!!!!!!!!」

 ラムネの大きな声にハルト達はハッと目を覚ました。
 シノを支えながら上体を起こしたハルトはいきなり大声を出したラムネを見て「……キチガイにでもなったのか?」と言う。
 それに対してラムネは「だからどうしていつもハルトさんはシノさんと寝てるんですかぁ!!!」とキチガイになったのか? という事は否定せず言った。

「知らん。シノがいつも来るから自然にそうなってるだけだからな」
「なら私も行けば寝れるということですか!?」
「いやぁ……寝相悪そうだし無理、かな」
「いやいや私寝相めちゃくちゃいいですよ! シノさんより何倍いや何十倍、何百倍、何兆倍いいですから!!」

「何で張り合ってるんだよ」

 するとシノが目を擦りながら眠たそうな声で「私の方がハルトに気に入られてる」とラムネを挑発するような発言をした。
 やはりラムネは何でもかんでも挑発に乗ってしまうようで「ここ一応私の家ですよ! そこにハルトさん自身の意思で来たんです! これって同棲ですよぉ!!!」と意味不明な抵抗を見せる。
 そんな二人の謎の戦いと止めるためにハルトがシノをおろす。
 そしてハルトもベッドから降りて立ち上がる。

「シノ、お腹空いたんだけど作ってくれるか?」
「うん」
「なっ!? 私も作りますぅ!!」
「別に良いけど」

 ハルトはそう言いながら椅子にかけていたコートを取りそれを羽織る。
 シノはひたすらハルトの横に並んでラムネを見ていた。
「よし、行くか」とハルトが言うとラムネが「行きましょう!」と言い部屋の扉を開ける。
 ハルトとシノは横並びになってその後ろからニコニコなラムネが階段を降りていく。
 一階についたハルトは椅子に座りに向かいラムネとシノは料理場の方へ向かっていった。

「シノ、何作るんだ?」
「もうすぐで出来る」
「いや、早すぎないか?」
「ちょっ! シノさん、それはずるですよぉ!!!!!」

 シノはコートの中に手を突っ込むと既に完成しているように見える料理を取り出した。
 それを台の上に置くやいなや指を向けて火魔法を放ちだした。
 二秒ほどでシノは魔法を止めてそれをお皿の上にてきとうにボトボトと落とし始める。
 そしてただ火で燃やした料理を乗せたお皿を持ってスタスタとハルトのいるところに行きテーブルの上に皿を置いた。
 後ろからついてきていたラムネは「私のやることないじゃないですかぁ!」と文句を言いながら席に座った。

「なぁ、これって冷凍だよな」
「ううん。お手製料理。食べて」
「食べる為のものがないんだが」
「はい」

 シノはハルトの横の椅子に座るとコートの中からスプーンを取り出しそれをハルトに渡す。
 受け取ったハルトは用意された料理をよそい口に近づける。

「いただきます」

 パクっと口にした瞬間、冷凍とは思えない味の良さに虜になりもう一度口の中に入れ込んだ。
 それを横で見ていたシノが口をあーっと開け食べさせてほしそうにしていた。
 ハルトは少しスプーンに料理を乗せシノの口に入れてあげる。
 次にラムネも食べさせて欲しいのか立ち上がりハルトの方に前のめりになっていた。
 もう一度少しスプーンに乗せて口にいれてあげる。
 相当美味しかったようで二人共ニコニコしていた。

「冷凍だけど、結局のところ美味いんだよな」
「私が作ってるから」
「今度は手料理を期待してるぞ」
「だから私が作ってるから」
「うん、頑張れ!!!」
「私が作ってるから」
「シノさん、頑張ってください! 私も手伝いますから!」
「だから私が作ってるから」

 ハルトはシノがちゃんと料理を作れることを願いながら残りの料理を頬張るのだった。
  
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